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51智博の怒り

「…で?何があったの?」



私はトモへと視線をやる。


「マコと由恵が慌ててトイレに駆け込んだ理由だよ。」


トモはそう続けると私の顔を真っ直ぐに見つめた。



先程、マコが席を外した後、由恵もトイレに行くと言って席を立った。


おそらく何か感づいてマコを追い掛けたのだと私は思った。



「…マコへの告白…取り消して貰った…」


私は耐え切れずにトモから視線を反らして答えた。



「…ええ!?…マジで?」


トモが驚いて聞き返してきた。

私は俯いたまま頷いた。



「…うわぁ…ショック…美咲ちゃんはそんな子じゃないと思ってたのに」


トモの言葉に私は何も答えられない



「…だから女は嫌なんだよ。勝手に告白して期待もたせて勝手に取り消してって…それに振り回されたマコの立場は?」


トモは少し苛々した様子で続けた。


「マジで勝手に盛り上がって勝手に悲観的になって…だから女は嫌なんだよ。」


私は何も答えられず俯いたまま。



「…まじショック…美咲ちゃんもその程度かよ…」


トモが冷たく言い放った。


その言葉が私に深く突き刺さる。



…ごめんなさい…



…ごめんなさい…



口に出せないまま私はマコへの謝罪ばかりが頭を過ぎる。



「…とりあえず、美咲ちゃんがそう決めたなら、もうマコを振り回さないで。」 



トモは目の前にあったピザを一切れつまむと続けた。


「…ってか…マコに悪いとか思うならここで俺にキスしてよ…」



…そうだよね…



…マコに対する謝罪を形にしないと…




…って…!



「何でトモにキス!?」



私は思わず顔を上げて叫んでしまった。



「…ぷっ…ぷはははっ!」


途端にトモが笑い出す。


「ツッコミ早いし!俺の事トモって呼んでくれたし!…ははっ!やっぱり美咲ちゃんはそうじゃなきゃ!」



トモの笑いにつられて私も思わず笑ってしまう。


「でもさ、さっきも言ったでしょ?マコは女の子に振り回されてばっかりだって。…だからさ、もうマコの事振り回すのは止めて?」



トモは私と視線を合わせるとそう言った。



「美咲ちゃんがこれからもマコを想うのも諦めるのも自由だけど…マコの気持ちを無視するのはこれっきりにして欲しい。」


トモの言葉に私は頷いた。


「あとさ…さっきは酷い事言ってごめんね?」



トモは少し気まずそうに笑って続けた。



「…ううん。私もトモに言われなかったら気付けなかったかも…。…だから…私もごめんね?」



私の言葉にトモはニカッと笑うと



「じゃあ、キスして!」


とふざけて見せた。


「だから何でよ!」


私も自然に笑顔でトモにツッコミを入れる。



…ありがとう。トモ。



私は心の中でトモにお礼を言った。



「ああっ!タツ発見!」


突然、そう叫んで立ち上がったトモ。

私もトモの視線の先を目で追い掛ける。


…本当だ。赤ビキニ発見!


「元子ー!」


私は隣に立っていた元子を呼びながら手を振った。


元子は私に気付いた様子で小走りでこちらに向かって来た。

竜輝君も私達に気付くと、慌ててお店の人からハンバーガーの乗ったトレイを貰い小走りで向かって来た。


「もー!やっと見付けた!…あれ?二人だけ?由恵とマコは?」


元子は私達の側まで来ると、キョロキョロと見回しながらそう言った。


「なんかマコは腹壊したみたいでトイレに行った。由恵は心配して付いて行った。」


トモがピザに噛り付きながらそう答えると


「腹壊したって…トモ…美咲ちゃんと二人きりになりたいからって変な薬でも飲ませたんじゃねーの?」


と、竜輝君がトレイをテーブルに置きながら笑ってみせた。



「…ばれたか…今もキスしてってせがんでたのに…今度はタツに下剤しこむか」



トモは冗談か本気か解らないような、真面目な顔でそう答えるとピザを手に取り竜輝君の口に入れた。



「っ!何?下剤入りピザなの?」


慌てて口からピザを取り出すとピザの匂いを嗅ぎ始めた竜輝君。



「匂いで解るわけないじゃん!」


そう言って竜輝君の持っていたピザを奪い自分の口に入れた元子。


私はそんな様子が可笑しくてくすくすと笑い出す。


不思議そうに見つめる元子と竜輝君。

トモは、少し穏やかな顔で私を見たあと


「あははっ!!やっぱり美咲ちゃんは笑顔が一番可愛いや!」


と笑い出した。


…私は突然の言葉に少し照れ笑いをしながらも、心の中でもう一度トモにありがとうと呟いた。

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