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50二次災害2

一通り流れるプールで遊んだ後、僕たちは近くのテラスで休んでいた。


「なんか、すっごいお腹空いた!」


由恵がそう言いながらお店の方へと目を向けた。


食べ物を買う事の出来るお店は五軒程並んでおり、どのお店もセルフサービスとなっている。


由恵が


「なんか買ってくるね!」


と席を立つ。

美咲も一緒に行こうと席を立つが、智博がそれを制した。


「運ぶの重たいだろうし俺が付いてくよ。二人の分は適当な物でいい?」


智博の言葉に僕は


「何でもいいよ。」


と答えてお金を渡そうとした。

しかし智博は


「いいよ。昨日の罰ゲームで」


と答えて由恵と歩いて行った。


「…昨日の罰ゲーム!?」


僕が智博に聞き返したが、智博は手をひらひらと振りながら歩いて行った。


「…寿司は…?焼肉は?…智博め…安くあげたな。」



僕が肩を落としながら呟くと美咲はくすくすと笑っていた。


「でもマコちんは自腹って昨日言ってたし、ラッキーじゃん?」


美咲がテーブルに寄り掛かりながら、そう言って笑う。


…まあそれはそうか…



とゆうか…智博、元子の分は?


…やっぱり智博に丸め込まれた気がする…



僕はそんな事を一人で考えながら、買い物をしに行った智博を睨み付けていた。



「…ねえ…マコちん?」



不意に美咲に呼ばれ顔を向ける。


美咲は少し気まずそうに俯いていた。


その様子に僕の胸が締め付けられた。

…多分、さっきの話しだろう…



「ん?どした?」


僕は出来るだけ平然を装って美咲に聞いた。



美咲が少し困った様に眉を寄せた。


そんな些細な表情すらも、今は僕の胸を締め上げる。


…聞きたくない…



何故か直感でそう思っていた。



「…あのね、これからも友達で居て欲しいなって。」




…ドクン…




…美咲の言った言葉の意味を必死で考える僕。



…友達でいて欲しい…



「…だからね、さっきの告白…なかった事にして欲しい。」



美咲は更にそう続けた。



…僕は…言葉が出て来なかった。


美咲が出した答えがそれならば、僕は何も言える訳がない。


僕は先程の告白の返事すらしていないのだから。



…最初から何もなかった…



そう考えるのが一番自然なんだから。



「そっかぁ。」


僕は少し笑って答える。


「…ごめん」


美咲が俯いたまま呟いた。


…僕は美咲に手を延ばそうとしたが…すぐに引っ込めた。


…こんなにも手の届きそうな距離にいるのに…


…僕は美咲へと手を延ばす事すら出来なかった。




「残念だな…藤井美咲に告られたなんて高校時代の友達に自慢したかったけど…なかった事にしといてやるよ。」


僕は、少しでも美咲に笑って欲しくて冗談混じりで言ってみた。


美咲は少し顔をあげ、笑いながら答えた。


「…自慢にもならないよ」



まだ気まずそうに笑うだけだったけど…


僕は少しホッとしていた。


…でも…


僕の胸の中は正直複雑で…



どうにもならない程の脱力感に襲われていた。




「ただいまー!マコ、ピザでもいい?」



僕の胸中とは裏腹な元気な声…智博だ…



「おかえり。何でもいいよ。…でもその前に…トイレ…」



僕は少し笑いながら席を立つ。



「ええー!買ってる時に行けば良かったのにー!」



智博が少しふて腐れて答えたが、僕は笑いながら何も答えず席を立った。



「もー食べてるからね!」



後ろから智博の声が聞こえたが、僕は振り向く事なく足を進めた。



…限界だった…



無理して笑うのも、冗談を飛ばすのも…



…もう限界だった…



そのまま近くのベンチに座り込む




両手で顔を覆って僕は泣いた。




…すげえ格好悪い…



こんなプールサイドのベンチで、水着姿で、男が一人で…

…格好悪いけど…限界だったんだ。


せめて美咲の前だけでは恰好付けたかった。

平気な振りして笑いたかった。




「マコっ!」



急に聞こえた声に顔を上げる。



「…由恵」



「ごめん。マコの様子おかしかったから…ほっとけなくて付いて来ちゃった…」 



由恵は不安げに僕を覗き込むようにして、少し笑ってみせた。

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