48対決2
「由恵?私ね、由恵の方が大事。由恵が嫌ならマコは諦める。」
自然と出た言葉だった。
由恵が私を見つめる。
私は精一杯笑顔を作る。
…これでいいんだよね…
私は由恵から視線を外すと、自分の中のマコへの気持ちを整理しようと決心した。
「…ちがうの…あたし…美咲にそんな事…言わせたかったんじゃないのに…」
隣から聞こえた由恵の涙混じりの声。
私は距離を置いて座っていたベンチを、由恵のすぐ隣へと座り直す。
「由恵ごめんね?由恵に辛い思いをさせちゃったね…」
私がそう言いながら由恵の頭に手を乗せると、由恵の涙は益々溢れ出してきた。
「…美咲…ごめんね…ほっぺ…叩いちゃった…」
その言葉に自然と笑顔が零れる。
「全然痛くないよ?」
そう言って由恵の頭に乗せた手で由恵の髪を撫でた。
「…マコの事…諦めないで…?…マコは美咲が…好きだから…」
「由恵?私の事は心配しなくていいんだよ?」
由恵が泣きながらも私に気を使う姿が、なんだか可愛くて私は少し笑いながら答える。
「…美咲ぃ…違うの…本当はあたし…マコが美咲の事好きなの…ずっと前から…知ってたの…」
…え…?
「…でも…美咲に取られたくなくて…わざと…マコと仲いい振りしてたの…」
…由恵…
「…本当は…私…昨日…振られたの…」
…え?由恵が?…
私は黙って由恵の話に耳を傾けながら頭の中で状況を整理する。
…どうゆう事…?
…昨日、由恵が振られた?
だって…二人は抱き合ってたハズ…
(…マコ…行かないで…)
昨日の由恵の叫びが頭の中を過ぎる。
あの時のマコの表情が再び私の胸を締め付けた。
「…由恵?実はね、昨日たまたまマコちんと由恵が抱き合ってる所を見ちゃったんだ…」
由恵が静かに顔を上げる
「由恵は泣いてて気付かなかったみたいだけど…マコちんの表情、凄く優しかったよ?…そして切なそうだった。」
由恵は黙って私を見てる。
「それを見た時…由恵が凄い羨ましかった。」
私はそっと由恵へ微笑む。
「由恵は大事にされてるんだなぁ…って」
「…違うよ…私は…いっつもわがままばっかり言ってマコを困らせてる…」
由恵はまた俯いて静かに言った。
「…ねえ…美咲?…それでも私…やっぱりマコが好き…諦めたくない…」
由恵の口調は静かに、強くそう言った。
「…だからね、美咲にも諦めてほしくない。…お互いライバルになっちゃうけど…それでもいいよね?」
…由恵…
「…ありがとう。」
私は小さくそう言った。
…でも、私の気持ちは固まっていたんだ。
こんなにもマコを求めている由恵。
…私が勝てる訳ないよ。
だって私はマコが好きだけど…
…同じ位に由恵も大好きだから…
私は由恵に微笑むながら、マコへの気持ちを踏ん切る事を決意していた。
…でも…それでも胸に残る由恵の言葉…
(…マコが美咲の事好きなの知ってたの…)
(…昨日マコに振られたの…)
…由恵が言った言葉は本当なのだろうか…
…でも…私は気持ちを切り替える。
由恵を失う恐怖はもう味わいたくはなかった。