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45美女の間で2

僕と智博が美咲達の所へ戻ると、そこに由恵の姿はなく、美咲が一人で僕らを待っていた。



何故か美咲は、少し浮かない顔を浮かべながら右の頬が紅くなっていた。


僕らが来たのも気付かずに俯いていた。


「美咲ちゃん待った?あれ?由恵は?」


智博が声を掛けると、美咲は顔を上げて笑顔を作った。

…でも、そんな美咲の顔が何故か今にも泣き出しそうな気がして…僕の胸に小さな不安を落とした。


「…あのね…私、由恵にひどい事言っちゃって…」


僕らが美咲の近くまで歩いて行くと、美咲は少し苦笑いで答えた。


「…マコちん…お願い!由恵を探しに行って欲しいの…」


そして、そのままそう言った。


…由恵を探しに…?


僕は黙って美咲を見詰めた。


…正直、僕にとっては由恵よりも今、目の前にいる…頬を腫らした今にも泣き出しそうな美咲を、ほっとく事なんて出来なかった。



でも、美咲は真っ直ぐに僕を見詰めたまま


「…マコちんお願い…」


ともう一度言った。



「俺が行くよ!美咲ちゃんはここでマコと待ってて!」


突然、智博がそう言ってどこかへ向かおうとした。

でも僕はそんな智博の腕を掴んでそれを制すと


「…僕が行く」


と答えた。


…きっと二人の喧嘩の原因は僕だとなんとなく気付いたんだ…


美咲が小さく


「ありがとう」


と答えたのが聞こえたが…


…その前に…


僕は、先程智博と話をしていたベンチへと足を向けた。


…確かあのベンチの脇に自販機があったはず…


僕は首からぶら下げた防水用のケースから小銭を出すとジュースを一本買って、また美咲達の方へ足を向ける。


少し小走りでジュースを買って来た僕を見て、智博と美咲は不思議そうな表情を浮かべていたが、僕はジュースを美咲に渡し


「それ、ほっぺにくっつけときな!」

 

と言うと理解したようで、今度は元気に


「マコちんありがとう。」


と返した。

僕はそんな美咲に申し訳ない気持ちで一杯になる。

…きっと、美咲の頬が腫れてる理由も僕が原因なんだと思う。


僕は美咲の顔を見る事が出来ずに、片手をあげ美咲に手を振るとそのまま踵を返した。



…でも…由恵はどこへ行ったのだろう。

美咲と喧嘩をした事を考えると、プールで遊んでる事はなさそうだし…。


一人で落ち着ける場所を探すのが一番かもしれないな…。


とは言っても…この広い施設の中、探しだすのは大変そうだな…。



僕は先程、美咲と乗った滑り台を見上げた。


…あんなに幸せな瞬間だったのに…


僕は少しため息をついて由恵を探そうと、視線を滑り台から外した。



…っっ!?


そこである姿が目に止まる。


…由恵だ。


…まさかこんなに直ぐに見付かるとは。



由恵は俯いて泣いている様子で立っていた。



…滑り台の長蛇の列に列びながら…。



…ゴムボートを抱えて…。


…周りはカップルだらけなのに…一人俯きながら。


…ちゃんと前の人が進めば由恵も進んで歩きだす。



…何してるの?



僕はその様子に少し笑いが込み上げてきたが…。

それを堪えて由恵の方へと足を向けた。



「由恵っ!」


僕が声を掛けると、由恵は俯いていた顔をあげ僕に気が付いた様子だった。

でも直ぐに視線を外してまた俯いた。


「何してんの?滑り台に乗りたかったの?」


僕が少し笑いながら由恵の隣に並ぶと、由恵は小さく


「…美咲のおせっかい。」


と呟いた。


「美咲と何かあったの?」


由恵に聞いてみる。


「…マコも無理しなくていいし。」


由恵がまたも呟く。


「無理してないよ。心配してたんだよ?」


僕も負けじと答える。


「…美咲に告られたんでしょ?…よかったじゃん…マコも美咲が好きだし。」


由恵は唇をキュッと結んで何かを堪えるかのように、僕に突っ掛かる。


僕はその問いに何て答えるか少し悩んで口を開いた。


「…うん。嬉しいよ。多分、僕は美咲が異性として好きだし。…でも…」


そこで言葉が詰まってしまった。

由恵は俯いて必死で泣くのを堪えてる様子だった。


「…でも…僕は由恵と美咲には仲良くして欲しいんだ。ずるいのかもしれないけど…」


…本当は由恵をほっとく事も出来ないって言おうとした自分が、酷く情けない男に見えて…言葉を変えた。


「…だからさ、美咲を叩いたりしちゃ駄目だろ?」


僕がそう言って由恵の頭に手を乗せると、由恵は堪えきれなくなった涙をボロボロと落とした。


「…だっでぇ…みざぎが…ごくはぐしたら…わたし…かてるわけないじゃん…ずるい…みざぎばっがり…」



由恵は涙と鼻水で言葉にならない言葉を必死に並べていた。


僕はそんな由恵の頭を自分の胸に寄せて


「勝つとか負けるじゃないでしょ?由恵の気持ちはちゃんと解ってるから…」


と声を掛けた。

由恵はそれでも泣き止まず、僕の上半身は涙か鼻水でベトベトになっていた。



「…あの…すいません…前に詰めて貰っていいですか…?」


突如、後ろから掛けられた声に、僕等は長蛇の列に列んでいる最中だった事を思い出し慌てて前に詰める。


…とゆうか…僕等、かなり恥ずかしい気が…


…それよりも…何で僕たち列んでるの…?


…ああ…ビキニパンツの変わりの辱めか…


…全ては智博のせいだ…



と、僕は根拠も無く、智博に恨みを馳せながらこの長蛇の列に列び続けた。


…泣き止まない由恵を宥めながら…

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