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44美女の間で…

…聞き間違いなのだろうか…。

滑り台から滑り落ちた美咲は


「…マコちんだよ…私の好きな人…。」



…確かにそう聞こえた…。

…確かにそう言ったんだ。


…それにこの唇に残る感触は…



「危ないから早く上がって下さい!」


突然掛けられた店員さんの声に現実に戻る。


「行こう?」


美咲は笑いながら僕にそう言うとプールサイドへと足を進めた。


…僕は胸の高鳴りを未だに抑えられずにいた…。



 

「マコっ!」


プールから身体を上げると由恵が駆け寄って来た。

後ろからは智博も着いて来ていた。


「待ってたの?めちゃくちゃ混んでたから時間かかったのに…。」


僕は驚いて由恵と智博を見た。


「うん。元子達は二人で遊びに行っちゃったけど…私はマコと回りたかったし…。」


由恵はそう僕に言うと、僕の手を引き


「行こう?トモがね、シャチの浮輪借りて来てくれたんだよ?」 


と歩き出した。

そう言われて智博を見ると…確かに持ってる…シャチを…


僕は由恵に手を引かれながら美咲の方を振り返る。

美咲は少し寂しそうに笑いながら後を歩いていた。


…また美咲に誤解されたくない…!


「由恵!ごめん!僕、ちょっとトイレに行きたい!」


僕はそう言って由恵の手を振りほどく。

…もちろんトイレなんて嘘だが…

そう言ってトイレへと足を向ける。


「俺も行く!」 


智博も慌てて僕の後をついてきた。


僕は智博を振り返る事なく、足を進めるとトイレの前のベンチに腰を下ろした。


「マコ。由恵さ、マコ達が滑り台行ってからずっと待ってたんだぞ?ずっと落ち着きなく滑り台の方ばっかり見てたし。」


智博が僕の隣に腰を下ろしながら口を開く。


「…れた。」


「…え?何?」


ほぼ、無意識で言葉を探す僕に智博が耳を傾ける。


「…美咲に…告白…された」 

やっとの思いで言葉をだした。


「ええっ?マコ、美咲ちゃんに告白したの!?」


智博が慌てて聞き返す。

僕はそんな智博に視線を合わせると


「違うよ!僕がしたんじゃなくて!…されたんだよ」



と言ってまた視線を外した。

…こうやって口に出して言うと…だんだんと実感が沸いてくる。


…僕…美咲に告白されたんだ…。



じわじわと喜びが沸いてくる。


…美咲の好きな人…僕なんだ…。何だか凄く騒ぎたくなり、勢いよく智博を見た。


智博は…



…僕を見ながら気絶していた…



…バシッ…!


僕が勢いよく智博を叩くと、智博の瞳に黒目が戻ってきた。



…おかえり…智博。


「まーじーでー!?!?美咲ちゃんが!?マコに!?」



…帰って来たと思ったら、一人で騒ぎだす智博。


「嫌だ!許せん!」


…いや…智博の許しが必要なのか?


「俺の美咲がマコなんかにっ!」 


…智博の美咲ではないし…マコなんかって…


「大体、美咲ちゃんがマコを好きなのは見てれば分かったけど!」


…はっ?知ってたの?


…智博のくせに?


「告白しちゃ駄目だよー!藤井美咲…。」


…何で駄目なんだよ…


…しかもフルネームだし…


…と、散々に騒ぎ立てた智博だが…


今の僕にはどんな言葉も効かない!

喜び一杯で無敵状態だ!


「…って事は?マコどうすんの?美咲ちゃんと付き合うの?由恵は?」


…智博の言葉に昨日の由恵とのやり取りを思い出す。


…僕はきっと、由恵にとても冷たく対応しているのだと思う…。


…ここで僕も美咲が好きだと言ったらきっと由恵を傷付けてしまう…。


…でも…



「…智博…やっぱり僕は美咲が好きだし…美咲に誤解されるような行動は取りたくない…」


「…やっぱりー!?いいよ。分かった。由恵は任しといてよ!」



 


智博は僕の言葉を聞くと、わざとらしくガッカリする振りをしながら僕にそう言った。

そしてそのままベンチから腰をあげると



「…じゃあ戻ろうぜ!…大丈夫!上手くやるから!」



と何故か笑顔で言いながら、踵を返した。

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