41滑り台
「ギャー!」
…ドボンっ!
智博の叫び声がここまで聞こえる。
どうやら智博はジェットコースターだけでなく、大きな滑り台も苦手な様子だ。
僕は美咲と落ちてくる智博を見守っていた。
こうゆうアトラクションが大好きな僕と美咲は一番に滑り降り、下で皆を見上げていた。
「…はぁはぁ…もう駄目…」
智博がビショ濡れになりながらプールから上がって来た。
僕等はそれを笑いながら見ていた。
「…キャー!」
同時に聞こえたのは由恵の叫び声。
由恵もやはり苦手な様だ。
「アハハっ!由恵凄い怖がってる!」
それを見ながら楽しそうにはしゃぐ美咲。
僕はそんな美咲に見とれてしまった事に気付き、慌てて視線を逸らす。
…が…
調度、由恵が上がって来るところで、僕の視線は由恵の胸の谷間に釘付けになった…。
「もうーメイク落ちちゃうよ…」
由恵が顔に掛かった水を手で拭きながら困った表情をしていた。
「メイクなんて気にしたら遊べないよ?次は流れるプールだからね!」
美咲が由恵にそう言ったのと同時にプールからは元子が上がって来ようとしていた。
元子はプールサイドに立ち上がると振り返り、竜揮の方を見ている。
それに釣られて僕たちも竜揮へと目を向ける。
…バシャンッ
大きな水しぶきと共に滑り落ちて来た竜揮は、水面から顔を上げ、顔を両手で拭うと楽しそうな表情を見せてこちらへ向かって来た。
「すげえ!超楽しい!」
そう言ってプールから上がろうとしたが…
「竜揮っ!」
慌てて元子が竜揮の前に立ちはだかる。
僕等は何が起こったのか解らないまま二人の様子を見ていた。
元子に何かを言われ慌ててプールの中へ身体を戻す竜揮。
…竜揮は顔を俯けプールの中で何かをしている。それを見ながら元子は笑いが止まらない様子だ。
「何してんの?」
智博が竜揮の方へと向かおうとしたが
「何でもねーよ!」
と改めてプールから上がって来た竜揮。
しかし、顔は真っ赤で少し恥ずかしそうにしている。
何が起きたのか気になり、皆が元子へと視線を移す。
元子は皆からの視線に耐えられなくなったようで、竜揮に気を使いながら口を開いた。
「…竜揮がさ、あんなちっちゃい水着はくから…滑り落ちた拍子に少しズレててさ…」
笑いを堪えた様子で元子が答える。
…ズレてた…?
…どこまで…?
…見えたの…?
僕は少し想像して笑いが止められなくなる。
元子もつられて笑いだす。
美咲と由恵は少し頬を紅くして気まずそうな竜揮の方を見た。
…智博は…
「タツー!」
そう、少し怒った様に竜揮の方へと行くと
グイッと竜揮の首に腕を絡ませ、引きずる様に竜揮をこっちに連れて来た。
そして僕と竜揮にだけ聞こえる位の声で
「タツ、元子ちゃんとどこまで進んでる訳!?」
と竜揮に聞いた。
…確かに。先程の元子の様子。いくら彼氏とはいえ笑い飛ばすとは…
…相当、竜揮のを見慣れているハズだ…
僕も少し興味が湧き、竜揮の方へと目を向ける。
「…どこまでって…トモー何、中学生みたいな事聞いてんだよ?」
竜揮がクスクスと笑いながら智博を見た。
…確かに…高校も卒業した健全な男女が付き合っていて何もない方が逆に可笑しい。
…しかし智博は納得するハズもなかった…
「何だよそれっ!?タツばっかりずるいしっ!俺なんて何ヶ月寂しい日々を送ってると思ってるんだよ!」
と、竜揮の首に巻き付けていた腕を締め上げる。
「知らねーよ!トモだって彼女作ればいいだろ!」
それに竜揮が反発しながら小声で叫ぶ。
僕は、『やれやれ…』と踵を返して美咲達の方へと向かう。
「四人で先行こう!あの阿呆二人は放置して。」
僕は皆の顔を見ながら言った。
それに元子も頷いて、仲良く四人で歩き出す。
「ちょっ…待ってよっ!」
竜揮が気付いて追い掛けて来る。
「…皆無視して。」
僕がボソッと呟くと、皆頷き足を早める。
「マコ!ずるいっ!ハーレムっ!」
後から智博の声も聞こえたが、皆当たり前の様に振り返らずに尚も足を早めた。