39穏やかな空間
朝食を済ませ、部屋に戻り荷物をまとめる僕等。
僕の頭の中は美咲でいっぱいだった…。
何故か、今日の美咲は楽しそうに見える。
竜揮に昨日の美咲の事を聞いたせいもあり、益々美咲の中に僕は居ないと痛感させられた。
僕の胸のモヤモヤは広がるばかりで、寂しさと悔しさも次第に広がっていった。
…バシッ!!
「いてっ!!」
突然、誰かに頭を叩かれて僕は顔を上げた。
そこに居たのは智博。
「マコ、変な妄想してないで行くぞっ!」
…変な妄想って…それは自分だろ…
僕は智博を少し睨んで、散らかっていた荷物を慌ててまとめると、先に部屋を出ようとしている竜揮と智博の後を追った。
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「あー温泉よかったなぁ!また来ようね!」
楽しそうに、そう竜揮に声を掛ける元子。
竜揮はそんな元子を優しく見ながら、見えてきた車にセンサーの鍵をかざす。
『ピピッ』とゆう電子音を確認してからトランクを開け、皆の荷物を詰め込む竜揮。
僕もそれを手伝いながらちらりと由恵へと視線を移した。
しかし、由恵も僕を見ていたのか目が合ってしまった。
僕は少し恥ずかしくなり、慌てて視線をずらした。
「オッケー!皆、車に乗って。」
竜揮がトランクを閉めながらそう言うと、いつもの順番通りに由恵が最初に乗り込む。
僕も慌てて次に続こうとしたが、智博が車に乗り込むのを見て足を止めた。
…?
僕は、それに続きいつもとは違う席へと腰を下ろした。
美咲が僕の隣に座りドアを閉めると車は走り出した。
「由恵?お腹減ってないの?」
後で智博が由恵に聞いている。
「うん。プール行くのにお腹でちゃうし、調度いいや。」
そう言って由恵の笑い声が聞こえた。
でも僕は後ろを振り向く事が出来ずに、目を閉じて窓に頭を寄り掛からせていた。
「マコちん、疲れてるみたいだね。」
隣から聞こえた美咲の声に少し目を開け
「智博が酷い起こし方するから、ゆっくり寝れなかったんだ。」
と答えた。美咲はそれを聞くとクスクスと笑い
「エッチなテレビでも見てたんじゃないの?」
と僕の顔を覗き込む。
…その質問は…
僕は少し笑いながら
「僕は見てないよ」
と答えたと同時に後ろから首を締められた。
…く…苦しい…
「誰か見てたみたいな言い方するなよっ!」
後ろで叫びだす智博。
…わ…わかったから…
…く…苦しい…
僕のジェスチャーが分かったのか、ようやく手を離した智博。
「…ゴホッゴホッ…!」
僕は振り返り智博を睨み付ける。
智博も負けじと僕を睨み付ける。
「…アハハっ!」
その様子を見て笑い出したのは
…由恵。
「トモ図星だったんだぁ!」
そう言いながらまだ笑いの止まらない様子の由恵。
美咲もそれにつられて笑い出す。
それを見てみるみる間に顔が紅くなりはじめる智博。
その様子に僕も笑いが堪えられなくなる。
「…マコ!笑うな!由恵も図星なんかじゃないからなっ!アダルトチャンネルなんて見るかっ!」
…ムキになって否定しはじめる智博。
「「アハハっ!」」
それを見て僕等は大声で笑った。
どう見ても図星意外の何者でもないじゃないか…。
「マコー!マコが変な言い方するからだーっ!」
「…変な言い方される行為をする自分が悪い!」
智博が僕の肩を掴みながら騒ぐ。
僕は智博に激しく揺さぶられながら必死で答えた。
「だからしてないだろっ!」
僕の言葉を必死で否定する智博。
それを皆が笑いながら、車は室内プールのアミューズメントパークへと入っていった。