37涙の後
明けましておめでとうございます。ようやく更新します。皆様の応援のおかげでランキング20位に入らせて頂けた事に感謝しております。今回、またも男性陣の馴れ合いがメインです。苦手な方はご遠慮下さい。
…ドンっ!…
「ぐえっ!」
…僕の目覚めは突然の腹の重みから始まった。
顔を上げるとそこにいたのは頬を膨らませ、僕を睨み付ける智博。
「マコー起きろよ!朝飯食いに行こうぜ!」
「朝飯…?…食いたくない…」
智博の誘いを断りながら布団に潜り込む僕。
…が、智博が僕の布団を剥ぎ取ると、僕に寝技をかけてきた。
「いてて…やめろよ!僕、寝起きだろ?」
「そんな事知らん!大体昨日は、マコのせいで由恵も美咲もどこか行っちゃったし、タツと元子も二人で出掛けるし…!
俺は一人でテレビ見てたんだからなっ!朝飯位、付き合えっ!」
寝技を掛けながら耳元で騒ぐ智博。…煩い…
大体、昨日僕が部屋に戻って来た時の惨劇は智博しか犯人は考えられない…
僕は昨日のいざこざで、最低な気分で部屋へと戻って来た。
すると…
「アダルトチャンネル付けっぱなしで、ティッシュを散らかしてただけだろっっ!」
僕の叫びに智博は一瞬躊躇ったが
「マコに分かるかー!皆、女とイチャイチャしてんのに一人で部屋でAV見る気持ちがっ!マコにその覚悟はアルノカー!!」
と、直ぐに技を更に締め出した。
「そんな覚悟いらん!智博こそ、部屋に戻って散らかっているティッシュを拾える覚悟は有るのかよっ!」
「俺は拾わんっ!」
…ゴスッ…!
「「いてぇー!!」」
「お前らうるせえよ!」
突然の頭の痛みに顔を上げる。そこに居たのは、寝起きで機嫌の悪そうな竜揮。
智博も頭を押さえながら竜揮を睨んでいる。
「…マコ…昨日、タツはずっと元子ちゃんとイチャイチャしてたんだ…」
「…うん。それで、可哀相な智博を殴るのは酷いな。」
僕は智博と目を合わせると、目で合図を送る。智博もそれに頷き、僕等は同時に竜揮を見る。
「「いけー!!」」
智博と声を合わせて叫ぶと、智博は竜揮の両腕を押さえ込み身動きを取れなくする。
それを僕は笑いながら一瞥すると、一気に竜揮に襲い掛かる。
「わははっ!…ギブギブ!…ははっ」
くすぐられて、悶えながら懇願する竜揮。
…しかし、僕はそんなに甘くはないっ!!
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「…マジひでぇ。トモにやられるならまだしも、マコだって由恵ちゃんとイチャついてたんだろ?」
あれから一通り竜揮の仕返しを済ませると、僕等は朝食が準備されている部屋へと向かう。
「…イチャついてた訳じゃないよ。」
竜揮に昨日の話を振り返されたくなくて、少し素っ気なく答える。
「嘘付かなくてもいいよ!美咲ちゃんだって昨日、例の先生といい雰囲気だったみたいだし。」
…えっ…?
驚いて竜揮を見る僕と智博。
竜揮はそんな僕等を一瞥すると
「昨日さ、元子と中庭に散歩しに行ったんだよ。そしたら先客が居てさ。…よく見たら美咲ちゃんだった。
元子が『昨日美咲が話してた先生だよ』って言ってたし!」
…ズキン…
僕の胸の鼓動が上がり始める。
本当はどこかで少し、昨日の事で美咲を傷付けたのではないかと罪悪感を抱いていた自分がいた。
…でも…実際は、美咲にとっては僕と由恵の事なんてどうでもいい事で…
竜揮の話はそれを痛感させた。
「…そんなに落ち込むなよ…トモ…。残念だけど、トモは美咲にこれっぽっちも意識されてないよ…。」
智博の肩を抱きながら智博を励ます竜揮。
…でも…顔は必死で笑いを堪えている…
「…いやー。でも、その先生ってさイケメンなんだよ。金も持ってそうだし、美咲とお似合いだし。
…改めてトモじゃ無理だなって思ったよ!」
…バシッ!!
「痛いっ!何すんだよマコっっ!」
竜揮が大袈裟に頭を抱えながら僕を睨む。
「竜揮は慰めてんのか面白がってるのか分かんねーのっ!」
僕は、竜揮を睨み返してそう言うとちらりと智博を見た。
…竜揮にここまで言われてるのに気にも留めず一人ニヤニヤしている智博…。
…またか…
どうせろくでもない妄想してるんだろ…。
僕はそんな智博を無視して見えてきた朝食場所の襖を開ける。
「おはよー!」
真っ先に飛び込んで来た声は元子だった。
隣では美咲が笑っている。
…由恵の姿がない事に僕は少し胸を撫で下ろした。
正直、まだ由恵の顔を正面から見る事は出来ない。
…そして、そんな僕とは対象的な美咲の笑顔…。
あの後、美咲と先生がどんな時間を過ごしたのかは解らない…。
でも、それを考えると僕の心は張り裂けるように痛みだす。
だから僕は出来るだけ美咲の顔を見ないように食事を始めた。