34妄想男
今回は、コメディータッチになっております。
「…美咲…俺、美咲が大人になるまで待ってるから…だから、高校も卒業したら…もう一度会わないか…」
「…先生…私、早く大人になりたい…だから…先生が私を大人にして…」
……バシッッ!!…
「智博!また変な事妄想してただろっ!」
…不意にマコに頭を叩かれて現実世界に戻る。
マコめ…今からが凄い良い展開になって行くのに…
俺の頭の中は今、最大限にフル回転している。
先生と生徒…そして美咲の浴衣姿…由恵の浴衣姿も捨て難いし…元子もいいな…
「マコ!トモがいやらしい顔で元子を見てる!もっと叩けっ!」
…タツが叫ぶ…もう、煩いなぁ!
こんなに新鮮なネタが揃ってるんだから妄想位させてくれよ…
大体、美咲の浴衣姿なんて貴重過ぎて中々見れるもんじゃないんだぞ!
しかも俺は一度美咲に振られてるんだ!
…妄想位させてくれよ。
俺はマコとタツを睨み付けると、また美咲の方へと目をやる。
…浴衣姿にピンで纏めた髪、薄めの化粧に紅くなった頬…
…マジ可愛い!!
本当に俺と付き合ってくれないかな…美咲と付き合えたらマジ、自慢しまくるのに…
二人で街を歩く…振り返る男性陣の羨望の眼差しを受けながら、俺は美咲の肩に手を回し引き寄せる…
…バシッッ!!
…またマコに叩かれた…
マコを睨みながらビールを煽る。
…何でマコはこんなに俺の感情を読むのが得意なんだろう。
明らかにマコに好意を抱いてる由恵や美咲には鈍感なくせに…。
…由恵の気持ちは、あの遊園地で分かってる。
…美咲のマコへの気持ちだって、悔しいけど俺との対応に比べれば一目瞭然だ。
それなのに何も判らずに涼しい顔をしているマコ。
本当に、どれ程羨ましい事なのかを一晩かけて力説してやりたい位だ。
…しかし…マコは昔から何故かモテる男だと思う…。…顔は俺の方が格好いいのに…
本人は気付いてないが、中学時代からマコは『優しい』とひそかに好意を持つ女子が俺に相談を持ち掛けて来ていた。
…まぁ俺はそうゆう女子をひそかに丸め込み、付き合い始めるのが得意だったんだけど…それはマコには内緒である…。
そもそもマコは昔から俺やタツとは違って、女子に興味を示さなかった。
好きな女は居たのかも知れないが、そうゆう話はしなかったし…。
噂されてたのは、明るくて活発だった森口。二人でよくふざけ合ってた。
マコはどうだったのかは知らないが、森口はマコに貰ったキーホルダーをいつも大事そうに鞄にぶら下げてたっけ。
高校に入ってからは何人か付き合ったりはしてたけど、何故かいつも短い期間で振られてたマコ。
唯一、長く付き合った純子も散々我が儘言って最後は元カレとよりを戻した。
実はマコと純子が付き合ってた頃、純子はよく俺に連絡をよこしていた。
マコは俺やタツとは違い、彼女に対して『好き』だとあまり言わないらしい。
…俺なんかしょっちゅう『結婚しよう』って言ってる程なのに…(勿論、いつでも本気だ。)
だから純子はよく『マコと居ると寂しい』とか『本当に私を好きなのか解らない』とか言っていた。
だからって俺に必要以上に相談を持ち掛けられて、正直面倒臭かった。大体、女子の『相談』は殆どが寂しいから誰かと話す為の口実でしかない。
美咲にそれを持ち掛けられるならまだしも、親友の彼女にそれをされても面倒なだけなのだ。
そもそも、あんなに我が儘を言って『本当に私を好きなのか解らない』って…どんだけマコの気持ちを確かめたかったんだよ。
それで愛されてる実感が沸かないとか…どれだけ求めるつもりなんだよ。
…と、俺は常々思っていた。だから、マコが純子と別れた時はお祝いでもしてやりたい気分だったが、結果的に裏切られた形になったマコを思うと慰める事しか出来なかった。
なので、俺は基本的にはマコの幸せを望んでいる。
マコにお似合いの彼女が出来るなら、凄く応援したい。
…例えば由恵とか。
…美咲は駄目だ。
何故かとゆうと、それは流石に羨ましいから。
大体、マコは『藤井美咲と付き合う』とゆう事がどれ程の事なのか分かっていない。
マコが、美咲をどれ程の美人なのかを認識した上で、交際を求めない限り俺は由恵の味方だ。
寧ろ、美咲は俺と付き合えばいいのだ!
…バシッッ!!
…痛い…
俺は頭を押さえながらマコを睨む
「無駄な打算を立てようとするな!」
マコも俺を睨みながら口を開いた。
…だから、何で俺の頭の中を読んでんだよ…
…マコのバーカ!!
…バシッッ!!
…痛い…
…俺はマコを睨むと、マコの前に並んでいた鮑を一切れ盗み食いしてやった。