21苛立ち
…ドスンっ…
私はベットに倒れ込む
お風呂に入ったばかりで、赤くなってる頬を軽く抓る
手を伸ばし一つの縫いぐるみを取る
そのクマの縫いぐるみと顔を合わせて私は呟く
「…マコちんのバーカ!」
…何だろう凄く苛々する…
原因は解ってる。帰りに由恵が私に言っていた言葉
「観覧車でマコとキスしそうになったの…」
私はその言葉を思い出し、枕に顔を埋める
…マコは由恵が好きなのかな…
由恵は私と違い女の子らしくてとても可愛い
…私と違い背も低いし…
…私と違い胸も大きい…
そんな由恵と観覧車で二人きりになったら…女の私でも欲情するさ…
…でもマコは違うと思ってたのに…
(僕だって男だぞ?)
マコが言った言葉を思い出す
あの時、その一言で胸が高鳴ってしまった自分に後悔が押し寄せてきた
…あれは由恵に向けられて言った言葉なのかもしれない…
…私はマコが好きだ…
それは今まで恋をした時の感覚とは違い、胸が熱くなるものでも、相手を想い苦しくなるものでもない
きっと、恋をしている訳ではないはず…
私はただ、マコと一緒に笑いたいのだ
キスしたい訳でも抱きしめられたい訳でもない
ただ単純にずっと一緒に居たいだけなのだ…
私は枕元で充電器に立てられている携帯に目をやる
そこにぶら下がっているストラップ…
マコと同じウッドビーズで作られていて下には[Misaki]のスペルが列んでいる
…突然、携帯が鳴りだした私は携帯を手に取り画面を開く…
そこにはマコからのメールが届いていた
「お疲れ。今日はストラップありがと。」
絵文字も入っていないそのメールを見て私は直ぐさま返事を送る
「マコちんは絵文字も入れられないのかな?ウサギありがとね」
わざと沢山の絵文字を使ってメールを送った
直ぐにメールの受信音がする
「絵文字ってこうやっていれるの?」
そう書かれたメールには絵文字は入ってなく、下をスクロールしていくと写メが貼付けてあった
…爆睡している智博君に私が必死で化粧している…
…いつの間に撮ったんだよ…
私はそれを見ながら声を出して笑っていた
私はまた直ぐにメールを返信する
「証拠写真撮ったな!マコちんの馬鹿!
…お詫びとして次のデート決行日を決めて!」
少し胸を高鳴らせながらそのメールを送信した
…少したってからの受信音
「じゃあ、再来週の日曜日ね。」
私はそのメールにOKの返信を送り、クマを抱きしめながら寝返りをうった
(…私の事を女として見てください…)
以前、松山先生に言った台詞が頭を過ぎる
…あの時の先生の困った表情とマコが重なる
(…女としてって言う訳じゃなくて…)
初めて会った時のマコの台詞…
(…藤井を女として見る事は出来ない…)
あの時、先生が私に言った台詞…
…二人の台詞が私の中で交互に思い返されて行く…
「…マコちんは由恵の事…女として見てるのかな…」
私はそっと呟いた