12遊園地
「由恵ちゃんは遊園地とか好き?」
遊園地へ向かう車内
僕は極力、由恵に話し掛ける努力をした。
智博が美咲の隣に座る為に僕を由恵の席へと促した事を由恵に悟られないように…
「うーん、ジェットコースターとかは苦手だけど…みんなで遊園地に行くのは楽しみだよ」
由恵がニコニコと微笑みながら話す
由恵は今日も髪をふわふわに巻いていて白いニットにピンクのスカート、ピンヒールの白いブーツを履いている
女の子らしくてとても可愛いのだけれど…遊園地で動き回るには大変そうだな…と僕はひそかに思っていた。
「マコちんはジェットコースターとか大丈夫?」
突然、前の席から美咲が身を乗り出して聞いてくる。
「僕は全然平気だよ。智博は苦手らしいけど」
僕は智博の方へ悪戯気に笑い答える
…まぁさっきの仕返しなんだけど…
「俺だって頑張れば乗れるよ!というより、美咲ちゃん…俺の事もトモって呼んでよ?マコばっかり…」
僕の台詞に答えながらさりげなく美咲に呼び方を変えるように促す智博
その言葉に
「そっかぁ、私ジェットコースター大好きだからさ。じゃあ後で智博君も付き合ってね」
と、笑顔で言う美咲
…話しの後半部分をあっさりと受け流した。
…智博がポカンと口を開いたのを見て僕は大笑いをした
しかしすぐに
「智博君じゃなくてトモね!」
と、食い下がる事なく口を開く智博
それを見ながら僕はまた笑いが止まらなくなった
「…じゃあ、トモとマコね。…って私も呼んでいい?」
と、口を開いたのは隣に座っていた由恵。
その言葉に僕と智博は
「もちろん」と口を合わせた
それを聞いて嬉しそうに笑う由恵が可愛いらしかった。
…美咲はとゆうと…
クスクス笑いながら智博の方を見ていた
智博がちらりと美咲の方を見る
それを見ながら
「じゃあ、トモね」
と、智博ににっこりと笑いかけた
それを見た時の智博の顔が拾われた子犬の様で、僕はまた声を出して笑った
************
遊園地に着き、僕達が最初にやってきたのは飛行機型の乗り物が、柱を中心に円を描く様に並んでいて、発進と同時にグルグル回りながら上下に動く初心者向けのアトラクションだ。
まだ三月とゆう事もあり、遊園地はがらがら。
どのアトラクションでも列ばずにすんなり乗れる
「美咲ちゃん行こう」
この飛行機は二人乗りになっていて、真っ先に智博が美咲を誘った。
それにつられて、竜揮も元子と一緒に智博達の乗り込んだ後ろの飛行機に乗った。
残された僕と由恵は竜揮達の後ろの飛行機に足を向ける
「大丈夫?怖くない?」
僕が由恵を気にして声を掛ける
「この位なら大丈夫そう…」
と返事はしているが由恵の表情は固まったまま動かない。
そんな由恵を見ながら飛行機に乗り由恵に手を差し延べる。
僕の手を取り飛行機に乗った由恵は、安全ベルトを付け両手は前の手摺りを固く握っている。
そして固まった表情のまま
「マコ…危なくなったら助けてね?」
と僕の方を見た
…危なくなったらって…
僕はクスクス笑って由恵に
「わかった」と返事を返した。