へん人No.6 芭逸女々花 その12
更新が遅れてしまい尚且つこんなクオリティで申し訳ありません。
もしかしたら、修正するかも。
以下、本文です。
「珍妙とは失礼な! ちゃんと名前で呼んで下さいよ! 改良型無個性矯正機――『無個性なキャラクターは主役への夢を見るか?』くんって!」
「解った解ったって」
ぷくーっと頬を膨らませる女々ちゃんの頭を軽く撫でて、それに目をやる。
パっと見は、ただ大きくしただけの●S●ta。いったい今回の発明品とはどんな物なんだろう。
「それを使えば……オレは、アイツと……その上手くいくのか?」
「はい、大丈夫ですよ。女々花を信じてください!」
不安気な顔でそれを見つめる八条寺を勇気づけるかのように、女々ちゃんは自信たっぷりに胸を叩いた。
「で、女々ちゃん。これって、使用するとどんな効果が得られるんだ?」
基本的にこの子が作る機械はどこかおかしな物ばかりだ。使う前にキチンと聞いておかないと。
「うーん……説明してもいいですけど、そうなるとこの子のスペックやら何やらも話さないといけなくなるので、昼休憩が終わっちゃいますよ?」
「そんなに長いのか?」
「一から十までコースで三時間、一から五十までコースで一日、一から百コースまでコースで三日って感じですかね?」
「長ぇ! 長ぇよ女々ちゃん!!」
どのコースも滅茶苦茶長い! しかもなんだよ後半の二つ! 一から百だと『千パーセント』になっちゃうじゃないか!
「芭逸……だっけ、確かにお前の言うとおりだ。オレたちには時間がねぇんだ。手っ取り早く要点だけ教えてくれないか?」
「はーい♪ それじゃあここに座ってください」
そんな俺のツッコミを無視して、八条寺は女々ちゃんの指示に従いだした。
まぁ従いだしたとは言っても、ただイスに座らされて青いブレスレットのような物を右手に付けられただけなのだけれど。
「はーい、それじゃあ今からインストールを始めますからねー。体の力を抜いてリラックスしてください」
「……こ、こうか?」
「ですです。そのまま少し待っててくださいねー」
言って、女々ちゃんは機械の下部に付いているボタンを押して起動させると、ポケットからあるものを取り出し、八条寺に向けてゆっくりと振りだした。
「あなたはだんだん眠たくな〜る……」
それは、紐を括り付けられた五円玉であり、今から女々ちゃんがやろうとしていることは間違いなく――
「催み――」
「シーッ! ちょっと黙っててください!」
催眠術じゃねーか! ……ってツッコもうとしたら遮られた。つーか怒られた。
女々ちゃんが出会い頭にタックルしてくるのを俺が予想出来たように、この子も俺がツッコむタイミングを予想したって事なのかな。
何というか、それだけお互いの事を理解出来てるってのは嬉しい事だけど……ツッコみくらい最後まで言わせてほしい。
「あなたは段々眠たくな〜る……。あなたは段々眠たくな〜る……」
「……」
目の前を五円玉が行ったり来たりしているが、八条寺は一向に眠る素振りを見せない。
まぁ、それも当然だろうな。言わば、こんな子供騙しみたいな催眠術に引っかかるヤツなんて、今の時代にそういるわけがない。
「なぁ、女々ちゃん。やっぱりそんな手段じゃあかかるモンもかからな――」
「だ、か、ら! ちょっと静かにしててくださいってば!」
「…………」
再び怒られた。……いくら俺が健全な男子高校生とはいえ、こう何度も年下の女の子から怒られると流石にへこむ。
頭にキノコが生えそうなくらいジメジメとした気持ちで沈んでいると、八条寺の物と思われる寝息が聞こえてきた。
「えー、あれで寝ちゃうんだ……」
「女々花の腕がいいと言ってください♪ と言うかこの人……意外と可愛い寝息を立てるんですね」
それには完全に同意だったので俺は一つ首肯する。
「えーっと、それじゃあ後はここをこうして……それでこっちを……こうっと……」
椅子に座ったまま眠った八条寺を背に、女々ちゃんが再び機械を操作すると腕に付けられたブレスレットが淡く発光しだし、八条寺の体がぴくっと動いた。
「すぅ……すぅ……ん、んんぅ……」
はんなりと頬を薄く染め、子供の寝息のような息遣いが少しずつ艶やかさを帯びてくる。
「め、女々ちゃん? これって今どんな状況なんだ?」
確か『インストール』って言っていたけど、一体女々ちゃんは八条寺に何をインストールしているのだろう。
徐々に悶えだした八条寺を尻目に恐る恐る顔を見ると、女々ちゃんは真剣な表情で八条寺の事を見ていた。
そういえば前にもこんな事があったような……そうだ、あれは確か女々ちゃんが以前、俺の家に来て生卵をレンジでゆで卵に作り変える時の、実験が成功する事を祈っている顔と同じ――
「――よし、終わりました!」
俺の言葉を無視して、不安と好奇心が綯い交ぜになった顔で八条寺の元へと近づき、彼女の肩を女々ちゃんが軽く揺さぶる。
すると、八条寺は眠たそうに目を数回しばしばと瞬かせた後、辺りをキョロキョロと見回しだした。
「だ、大丈夫か……?」
「…………」
八条寺はキョトンとした顔のまま俺を見つめていたが、フッと瞳にハイライトが戻ったかと思うと――
「どうしたの……? 彰くん……?」
「――へッ!?」
「……? もしかして……私の顔に……何か付いてる?」
突然、華菜乃のような喋り方で話し始めた。
「やったー! 成功ですー!」
「ちょ、ちょっと待って女々ちゃん!! え? 何これ!? 一体何が起こってるの!? 女々ちゃんは八条寺に何をしたの!?」
まったく意味が解らない! 俺は今何を見ているんだ!?
「フッフッフ。この、改良型無個性矯正機――『無個性なキャラクターは主役への夢を見るか?』くんはですね、このメメカ部の全てが詰まっていると言っても過言じゃあないんですよ! フッフッフ……フヘッフヘッ」
説明を求める為に疑問をぶつけたのに、全然会話が噛み合わない。
しかもかなり興奮しているのか、今まで聞いたことのないような気持ちの悪い笑い声まで発している……。
「これさえあればメメカ部はあと十年戦えるッ!」
……この子は何と戦うつもりなのだろう。
「……ちょ、ちょっと怖い」
あまりの豹変っぷりに、華菜乃化した――と思われる――八条寺もドン引きしている。
こ、ここは俺がしっかりして一度落ち着かせないと!
「女々ちゃん! 女々ちゃーん! 戻ってこーーい!」
「グヘ……グヘヘ……!」
やばい! 何かグヘグヘ言ってる!
「おい! こっちの世界に戻って来いってば!!」
両手を上げながら、カエルの鳴き声のような笑い声をあげている女々ちゃんの肩を思いっきり揺する。
「この子が量産された暁には地球連邦など……、あれ? どうかしましたか?」
憑き物が落ちたようにすっきりとした顔をする女々ちゃんをジト目で見ながら、豹変した八条寺を指差す。
「……?」
「あぁ、そうだ! 実験は成功したんですよ!」
「じ、実験!?」
「ですです! とは言っても、成功することは解っていましたけどね!」
やけに自信たっぷりだな。
実験という単語にそこはかとない不安を覚えてしまったが、俺は女々ちゃんの説明を聞くためにあえて口を閉じた。
「そもそもこの子はですね、名前からも解るように実は改良型なんですよ!」
「……改良……型……?」
「そうです! これを見て下さい」
女々ちゃんが機械を持ち上げ裏面を見せる。すると、そこには刻印が彫ってあった。
「『Mk−2』……?」
「です! 最初に作ってた初号機ちゃんはちょっとした不具合があったんで、先輩で実験をした後で、開発は凍結することにしたんですよ」
へぇ? 俺で実験ねぇ、ん? 俺で実験?
「女々ちゃん」
「はい?」
「もしかして今、俺で実験したって言った?」
「言いましたね」
「具体的にはどんな?」
「女々花の家から、初号機ちゃんの電波を先輩の脳内に飛ばして、色々な夢をみてもらいました♪」
「待てぃ! ちょっと待てぃ!」
もしかして、昨日俺が八条寺によって気絶させられた時に見ていたあの奇想天外な夢は――
「どうでしたか? なかなかに楽しい夢を見れたでしょう?」
小悪魔っぽく笑いながら首を傾げる女々ちゃん。
そんな悪女を睨みつけながら俺は叫んだ。
「悪夢以外の何物でもなかったわ!!」
続く




