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友だちはへん人ばかり  作者: せい
第五話 八条寺茹美の荒ぶる接近
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へん人No.7 八条寺茹美 その3

前回のあらすじ



ついに立ち上がった汎用人型機動兵器MOMO-TAROU!

果たして、MOMO-TAROUは鬼に打ち勝ち人類を救うことができるのかッ!?


女々花「何ですかこれ↑」

千 羽「アックンの悪夢ナイトメアだね」

華菜乃「深夜のテンションほど……恐ろしいものってないよね……」

荒 木「ホントそれな」


 深 夜 症 候 群ミッドナイトシンドローム恐るべしっ!


以下、本編です。




「ほら、これでも飲めよ」


 冷蔵庫からキンキンに冷えた麦茶入りペットボトルと、それを注ぐ為の同じくキンキンに冷やしたグラスを取り出して、テーブルの前に座っているじょうへと渡す。


「お、サンキュー。ちょうど喉が渇いてたんだよ」


 八条寺はそれを一気に飲み干し、ドヤ顔でグラスを俺へと向けてくる。……飲むの早くね?


「おかわりっ!」


「ハイハイ」


 グラスを受け取り、もう一度注いでやってから渡す。そして八条寺はグラスを口に付け一気に傾け――


「おかわりっ!!」


 三秒も経たない内に飲み干した。


「少しは遠慮しろや!」


 いくら市販されてるパックの麦茶とはいえ――意外と重宝してるので――そんなにハイペースで飲まれたらたまったもんじゃない!


「いいじゃねーかよー、オレが脱水症状で倒れたら困るのは荒木だぞー?」


「今はもう九月だぞ……」


 口を尖らせ、半眼で見つめてくる八条寺の対面に座り、俺は自分用の麦茶を一口啜った。


「で? 一体、お前は誰に惚れてるんだ?」


「……麦茶を注いでくれたら教えてやるよ」


 何様のつもりだコイツ。


「…………。……しょうがないから注いでやるけど、ちゃんと、ゆっくり、味わって、飲めよ?」


「うーい」


 両手でグラスを持ちながら頭を下げる八条寺に向けてたび麦茶を注ぐと、流石に今回は一口啜っただけで、グラスから唇を離した。 


「オレが好きな奴はよ、同じクラスにいるんだ」


「そうなのか!? え、誰だれだれ?」


「それは……恥ずかしいから言わない」


 頬を赤らめ、八条寺はグラスの縁を指でモジモジといじらしくなぞる。まるでうぶな乙女みたいだ。

 しかし誰なんだろう? 別名“野獣寺”とも呼ばれている八条寺をここまでしおらしくさせるなんて。……めっちゃ気になる! 何とかして聞き出さないと!


「おいおい、そこで黙るのは反則だろ! 誰が好きなんだよー? 教えろよ八条寺ぃー?」


 対面から八条寺の右手側へ移動し、顔を覗き込んでみると、八条寺は更に顔を真っ赤にさせながら麦茶を飲み干した。


「だ、ダメだダメだ! やっぱり教えられないし、やっぱり相談とかいいや! 遠慮しとくよ!! それより茶だ! 早くおかわりをくれっ!!」


「はぁ!? そこまで言って教えないとか無いだろ! 教えろって! 誰にも言わないからさ!」


 半ば、麦茶汲み専用ロボと化している両腕を動かしつつ、空になったペットボトルを床に置き、真っ直ぐ瞳を見据える。


「……本当に誰にも言わないか?」


「言わないって言ってるだろ?」


「……本当の本当に?」


「あぁ、本当の本当に、だ」


「じゃあ…………ヒント出すから、荒木が推理してくれよ」


 ……ヒントって! コイツ、どんだけ教えたくないんだよ!! …………まぁいいか。さっき同じクラスにいるって言ってたし、直ぐに解るだろう。それに、いざとなれば消去法で一人ずつ除外していけばいいだけの話だ。


「ヒントその一。ソイツはオレより出席番号が若い」


「…………」


 言うまでもなく、八条寺の出席番号は五十音順の三十六番目である『や』だ。

 俺のクラスには『ゆ』で始まる奴も『よ』で始まる奴も『ら、り、る、れ、ろ』で始まる奴もいない。

 つまり、出席番号三十五番の八条寺(ゆで)より後の奴なんて存在しないわけで。


「……次のヒント」


 俺は、内心呆れながらも腕を組み「考えてますよー?」という態度をとりながらヒントを要求した。

 すると、八条寺はそんな俺の思惑に気づかない様子で――


「そ、ソイツは……いっつもお前の席の近くにいる」


「マジでか!!」


 顔を着ているジャージと同じ真っ赤にしながら答えた。

 ほっほーう! これは大きなヒントだ! 俺の席の近くにいるって事は、どう考えても俺の関係者であるに違いない!

 と、なると……八条寺のハートを射止めたのは一体誰だ?

 あし……はまぁ、論外として。アイツを除外して残るのは、しか居ないわけだけど……。

 あれ、そういえば俺ってこんなに友達少なかったっけ? あれっ?


「……うーん」


「……わ、解ったか?」


「現在進行形で迷宮に突入してる」


「そ、そうか……」


「ラスボス前のボスラッシュってところだ」


「なんだそりゃ?」


 比喩が解らなかったのか首を捻る八条寺。

 まぁ、とりあえず八条寺は放っておくとして。

 それと、俺に友達が少ないという顕然たる事実にも、ひとまず目を瞑っておくとして。

 問題なのは、八条寺のヒントを当てはめていった場合、最終的な候補が華菜乃と千羽に絞られるって事だ。

 そして、千羽は隣のクラスだから、第二ヒントの「いっつも俺の席の近くにいる」も除外されるんじゃないだろうか。

 と、なると。必然的に八条寺が好きなヤツってのは――


「解った! 華菜ヘヴンッッ!?」


 言い掛けた瞬間。左頬に鈍い衝撃が走り、俺はそのまま側頭部から床へと倒れ込んだ。


「痛ってぇぇぇぇ!」


 頬をさすりながら起き上がり、さっきまで俺が座っていた場所を見ると、そこには突き出された八条寺の拳があった。


「な、殴ったね!?」


「荒木が変な事を言うからだろうがよ」


 それだけでどうして殴られないといけないんだ!? 俺はただ消去法で残ったヤツを言っただけなのに!!

 ――ハッ、わかった! 答えが違ったから殴られたのか! だとすると、コイツぁなかなかにスリリングなクイズだ……!

 俺は一人で納得しながら、再びジト目で睨んでいる八条寺の右側に座り咳払いをする。


「……オーケィ、華菜乃は違うんだな」


「当たり前だろ。どんな思考してたら答えがどうに行き着くんだよ」


 言って、突きだした腕を戻し半分ほど残った麦茶を飲み干す。

 ……ふむ。だとしたら、もうアイツしかいないじゃあないか。


「八条寺、お前が好きなヤツって千うがァァァァッ!!」


 再び繰り出される右ストレート。それは的確に同じ位置を捕らえ、某少年誌で連載している美食家の釘に例えた必殺技の如く、俺の頬を穿った。

 しかも座った状態からの殴打にも関わらず、かなりの威力だ。こんなパンチを食らっちゃあ、流石に「二度もった!」とか「親父にも打たれた事ないのに!」とか言う余裕すらない。


「だーかーらー! どーして女の名前ばっかり出すんだよ! オレはレズじゃねぇぞ!!」


「い……いや、だって……」


「だってもクソもないだろーが! いいか!? オレが好きなのは芦屋なんだよ!」


「――!?」


 い、今……八条寺はなんて言った……!? 芦屋だって……!?


「八条寺って、芦屋の事が好きなのか……?」


「…………あっ」


「……芦屋ってあの芦屋だよな? 俺の前に座ってる芦屋(しゅん)だよな?」


「…………」


 自分が失言してしまった事に気がついたのか、全身を茹で蛸のように真っ赤に染め上げながら押し黙る。


「芦屋……お前にも春が来たんだな……」


「うう…………」


 恥ずかしがる八条寺を尻目に、俺はズキズキと痛む頬をさすりながら微笑んだ。


 続く


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