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友だちはへん人ばかり  作者: せい
第四話 俺たちの満ち足りたる夏休み
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へん人No.2 栖桐華菜乃 その20

 彰  「ところで、どうして最終問題が円周率なんですか?」

天野寺「それなら【天野寺薬 その1】の序盤を見てもらえりゃあわかるよ♪」

芦 屋「マジすか! だったらこれを気に見直すしかないてますね!」

天野寺「じゃろ~? じゃけん皆見直してみてね~♪」

女々花「……馬鹿ばっか」

千 羽「……本当にね」

以下、本編です。


が、ちょっとしたミスで半分が消えてました。直しました。

今度こそ、本当に本編です。

「 え、円周率!? それも百桁目!?」


 困惑する俺達をよそに、あまでらさんはいやらしい笑みを浮かべた。


「そ、円周率♪ それも百桁目!」


 百桁目って! 俺も一端の高校二年生だから『3.14159265』くらいまでなら暗唱できるけど、この約十倍ってことだろ? そんなの覚えてないし、覚える気もなかったから解んねぇよ。


「そうか……だから、ボク達にその棒を引かせようって言うんだね」


「そゆこと~♪ 流石はちゃんじゃね。さ、それじゃあ時間も押しとる事じゃしちゃちゃっと引いてもらうとしよーかねぇ」


 天野寺さんが指をくいっと動かすと、呼応するようにさんが歩きだし手に持った筒を、()ちゃんの前へと差し出した。


「あのー、その前に一つ質問してもいいですか?」


「ん? 何か気になる事でもあるん?」


「この中にはちゃんと、正解の答えってあるんですよね?」


「そりゃーもちろん、あるに決まっとるじゃん。どしたん? 何の確認?」


「……いえ、ちょっと気になっただけです」


 女々ちゃんが一つ棒を抜き取ると、天野寺さんは「一応、周りに見えんよーに持っといてね」と口に指を当て、三毛さんと一緒に千羽の前へと移動する。


「それじゃあボクは…………よし、これにしようかな」


 特に気にすることなく棒を取った女々ちゃんとは違い、千羽は五秒ほど悩んでからそれを抜き取る。


「お、やけに悩んだねぇ」


「そうかい? まぁ、いくら何でも円周率の百桁目なんて解らないからね。アックンがさっき言ってたようにボクも運否天賦に身を任せることにしたんだよ。それに――」


 何故かそこで千羽は俺を一瞥すると「ボクの強運は貴女も知ってるだろう?」と言った。


「まぁねぇ……。あん時はホンマにビックリしたわぁ」


 以前、俺達と天野寺さんが行ったギャンブル『小富豪』。俺が天野寺さんと勝負した時はこっぴどくやられたが、千羽はそんな彼女を持ち前の強運で圧倒し、圧勝している。

 思えば、勝負と名の付くもので千羽が負けている所って見たことが無い。――まぁ、夏休み初日に俺の家で行われた料理勝負は、かなり危うかったと思うけど。

 だから、俺はこの最終問題が完全に運否天賦によるものだと解った瞬間から、千羽が勝つ事を確信していた。


「……………………どうぞ」


 気づけば、三毛さんが俺の前に立ち、筒を向けている。

 ……何というか、非常に暑苦しい。学校で必要以上に顔を近づけてくるあし以上に暑苦しい。

 上から俺達を照らす、スポットライトに勝るとも劣らない熱量を感じながら――彼の筋肉から発せられる圧力による錯覚かもしれないけど――ゆっくりと棒を引き抜き、左右の達に見えないように数字を確認すると、棒の先端部には赤く小さな字で『9』と書かれてあった。


「正解しとるとえぇねぇ〜。はい、じゃー次は華菜乃ちゃん!」


「は……はい……! 正解が引けますように正解が引けますように……」


 何かを念じるように、華菜乃は目をぎゅっと瞑りながら棒に手を伸ばす。


「正解でありますように……正解でありますように……!」


 棒を握りしめながら、うわごとの用にブツブツと呟いている。そんなに混浴がしたいのだろうか。まぁ、華菜乃がどれだけ祈ろうが、この勝負の結果は千羽の勝利で幕を閉じるんだ。

 俺は諭すような気持ちで、華菜乃に話しかけようと肩に手を伸ばし――


「正解来い正解来い正解来い正解来い正解来い」


 かけて止めた。何というか……今の華菜乃からは狂気と言うか、底が知れない恐怖を感じる。


「……ふふっ、彰君の体を合法的に色々出来るんだもん。……こんなチャンスを逃すわけにはいかないよね……? それに私だったらきっと大丈夫……。正解を引き当ててるに決まってる……。……どこから洗ってあげようかな? ……やっぱり背中から洗って、恥じらう彰君に萌えつつも前を洗ってあげるのが王道だよね……」


「……………………」


 俺は何も聞いていない。華菜乃の様子が何だかおかしい気もするけれど、きっと海で女々ちゃん達とハシャぎ過ぎたせいでテンションが高いままなんだろうな! うんうん、それならしょうがない! 気にしたら負けだ! それに今の華菜乃に話しかけたら収集がつかなくなりそうだし!

 必殺『あえてのスルー』を使い、華菜乃の独り言を流していると、空気を読む事が出来ない残念イケメンの声が聞こえてきた。


「ちょっとくすりさん! もう一本しか残ってないじゃありませんか!!」


「じゃね〜」


「じゃね〜。じゃないですよ! 俺にはどうしても混浴したい人がいるんです!」


「混浴したい人? あ、もしかしてそれってアタシ?」


「それはそれで……。って、そうじゃなくて! くちさんですよ! 朽葉さん!!」 


 芦屋が身を乗り出しながら、指を天野寺さんに突きつける。何というか、凄まじいほどの迫力だ。こいつを動かしているリビドーは一体何なのだろう。千羽への恋心なのか、単なるなのか……。まぁ、平然と公言している時点で、千羽から芦屋へと向けられている嫌悪感ベクトルがそう簡単にひっくり返るとは思えないんだけどな。


「おーい芦屋ー。お前の抗議シーンは十分撮れたからそろそろ棒を引いてくれよ。じゃないと話が進まないんだ」


「荒木はまだ選べたから、そんな余裕あるセリフが言えるんだよぉ! 俺の気持ちにもなって考えてみてくれよぉ!!」


 だからもうこの下りは撮れてるっつーのに……。はぁ、しょうがない。少々荒っぽいけど――


「ん? どうした荒木?」


 席を立ちそっと芦屋の背後へと移動する。そして、優しく包み込むように首に手を回し――


「えいっ」


「じぇじぇッ!?」


 一足早く寝かせてあげることにした。

 ちなみに、()()た芦屋の手を使い引き抜いた棒には何故か『ハ・ズ・レ☆』と書いてあった。どうやら、勝利の女神は最初から芦屋の事を見放していたらしい。ドンマイ芦屋っ!


「さぁー、ようやく皆に答えが行き渡ったようじゃね! 果たしてこの中の誰が正解するのかッ! それは誰にも解りません!」


『ワァァァァッ!!』


 芦屋が沈黙したのを見計らって、天野寺さんがギャラリーに向けて最後の煽りを入れる。


「それでは! 正解を発表します!!」


 部屋が暗転すると同時に、荘厳なドラムロールが鳴り響き、スポットライトがぐるぐると回転しながら俺達を照らしていく。

 まぁ、何にせよこれで、千羽の勝ちでこのクイズ大会は終わるんだ。手に入れた混浴券を千羽がどうするのか気になる所ではあったけど、それをどうするのかも含めて千羽の勝手な訳だし、俺が詮索したところでどうこうなる訳でもないしな。


「正解したのは〜〜」


 回転していたライトが消え、完全に闇が訪れる。しかしそれも束の間で、次の瞬間には正解者へと当てられる光が点灯したいた。




 ――俺の頭上で。




「…………えっ?」


「秋茄子君で〜す!! はーい皆拍手〜!!」


『ワァァァァァァァッ!!』


 大量の紙吹雪が舞い散り、ファンファーレが響きわたり、大量の拍手が全て俺一人へと浴びせられる。


「正解した……? 俺が……?」


 おかしい。そんなはずはない。千羽がいる限り俺が正解を引き当てるなんてあり得ないはずなのに。

 本来なら喜んだ方がいいのかもしれない。でもどうしても俺は手放しで今の状況を喜ぶ事が出来なかった。


「流……だね、アッ……」


「……?」


 大音量で鳴り続けるファンファーレのせいで、千羽が何と言ったのか聞こえない。

 今、千羽は俺に向かって何を言ったんだ?


「えー、では一応正解発表と行こうかねぇ〜♪ あっ、秋茄子君は席を立っといてね!」


「え、ってうわっ!」


 天野寺さんが、胸を押しつけながら俺の手を引き隣に立たせる。そして「それじゃあ行くよ〜」と言い、大きく深呼吸すると――


「ってことで、正解は9でした♪」


 一言も噛むことなく、ものの見事に百桁の円周率を一発で言ってのけた。……すげぇな。


「……………………では、こちらをどうぞ」


「あっ、はい。ありがとうございます」


 汗をかいてるからか、全身に紙吹雪を引っ付けた三毛さんから、豪勢な額縁に入れられた例のブツを手渡された。

 本当に……俺が勝ったのか。でも、何だか信じれない。どうして俺が千羽に勝てたんだ? 千羽は土壇場であり得ないような好手を引き当てるようなヤツだってのに。

 人間は自分が経験した以上の事を体験すると、思考が止まってしまうというが、今の俺が正にそんな感じだった。

 あまりの展開に、思考を止めぼーっと客席を眺めていると、背後から全身に絡みつく蛇のような視線を感じた。


「彰君……優勝おめでとう……! それで、一つ聞きたいんだけど……それ、誰に使うつもりなの……?」


 微笑のような冷笑を浮かべる華菜乃。『誰に使うつもりなの?』と言ってはいるが、暗に『私を選んで』と言っているような気がしてならない。


「先輩は……誰と混浴したいんですか……?」


 モジモジしながら女々ちゃんが顔を赤らめている。ううむ、そうは言われてもなぁ……。


「早く決めなよアックン。多分コレは、アックンがここで誰かを指名しない限り終わんないからさ」


 負けたというのに、千羽の顔はどこか満足気だ。何と言うか……さも、()()()()()()()()()()()()()()ような……?


「さっ、秋茄子君! そろそろアタシもゆっくりとお風呂に入りたいけぇ、誰か一人選んでや♪ 華菜乃ちゃんでも、千羽ちゃんでも、()ちゃんでも、アタシでもえぇよ?」


「ぜ、絶対に選ばないとダメなんです……よね?」


 冷や汗を浮かべながら質問してみると、天野寺さんは口角を上げながら首肯した。

 ……どうしよう!? 誰を選べばいいんだ!? 華菜乃? 千羽? 女々ちゃん? それとも天野寺さん?


「――ダメだ!! こんなの選べっこない!!」


「……………………そうは言われましても、選んで頂かなければみなが進めませぬ。あなた方は海帰りで早く風呂に入りたいでしょうし、ここに居る従業員達もこれ以上は仕事に穴を空けられません」


 それは俺のせいじゃないよね!? 仕事しないコイツらが悪いよね!?


「……………………お願いです。早く選んで下さい。私もそろそろこのにエサをあげたいのです。だから、荒木さん。なにとぞ、勇気あるご決断を……」


 そう言って、頭を下げる三毛さん。肩に乗せた愛三毛猫のミケランジェロも、心なしか辛そうな顔で俺の顔を見つめているような気がする。


「……解りました! 俺だって一人の漢ですし、もうウジウジと悩むのは止めます!」


 俺は息を深く深く吸い込み――溜まりに溜まった息を一気に吐き出した。

 そして、天野寺さんからマイクを受け取り、ハウリングしない程度の大声で思いっきり叫んだ。


「俺が……この混浴券を使って一緒に風呂に入りたいのは――――ミケランジェロだぁぁぁぁぁぁっ!!」


 三毛猫は遺伝子の関係上ほとんどが雌猫だ! だから混浴も適用されるはず!


「あー……それ言っちゃう?」


「……? 何か問題でもありますか?」


「まぁ、問題というか君の身の安全というか……」


 ん? 俺の身の安全? 天野寺さんは一体何を言っているんだ?  


「彰君……私は猫以下なの……?」


「え!? あーいや、そういうつもりじゃあ」


「そういうつもりだよ……!!」


 目……目が据わっている……!


「…………後で私の部屋に来て」


「え、えーーっと……」


「私の部屋に来て!!」


「ハイッ!!」


 混浴は何とか逃れる事が出来たが、その後三時間ほどかけて、俺は華菜乃に説教され続けたのであった。


 続く


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