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友だちはへん人ばかり  作者: せい
第四話 俺たちの満ち足りたる夏休み
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へん人No.5 天野寺薬 その7

「そ、それじゃあ第二問ーーッ! 次はちょっと問題のパターンを変えてみるよーーッ!」


『オ、オーーッ』


 あしが投下した爆弾発言により凍りついたギャリーに向かって、引きつった笑みを浮かべながらあまでらさんがブイサインを作ると『デ、デ、デン』と効果音が鳴った。続けて手元の画面に光が戻り、先ほどウケ狙いで記入した答えが表示される。どうやら答えの記入が出来るようになったみたいだ。


「パ、パンはパンでも――」


 って、またパンかよ! 次こそは普通に『食べられないパンはなーんだ?』って問題で『答えはフライパンでしたー♪』とでもなるのかな? まぁ、さっきは問題をキチンと聞き終わらない内にウケ狙いであんな答えを書いちゃったから、同じ轍は踏まないよう、今度は最後までちゃんと聞いてから答えを書くとしよう。

 いつの間にか掴んでいたペンを戻し、一言一句問題を漏らさないよう聞き耳を立てる。


「『デーモンの全て』という意味のギリシア語に由来する、悪魔達が住む都市の名前ってなーんだ?」


「――ハイッ!?」


 な、何じゃそりゃ!? 確かに一問目とは違ってナゾナゾ形式からちゃんとしたクイズにはなっているけど、そんな『パン』なんて聞いたことねぇよ!


「さー、書いた書いた!」


 ペンが止まっている俺に向かって、天野寺さんが急かすように笑顔を向けてくる。……そんな顔されても解らないっての。

 十七年分の知識が詰まった引き出しを手当たり次第ひっくり返してはみるものの、それらしい単語は一向に見つからない。完全に手詰まりだった。


「……すいません、ヒントとかって無いんですか?」


 手を挙げ、光明を見いだす為に天野寺さんに視線を投げかける。俺達を頭上から照らすライトが、彼女の痛々しい色をしたスーツに反射し俺の角膜にダメージを与えてきたが、それに屈せず一層(がん)りきを強くしてみる。


「うーん、ノーヒントでっ♪」


「そ、そんなっ!?」


 悪戯っぽく笑い、頬に手を当る天野寺さん。何というか、俺の努力を返してほしい。

 ……しかし困ったな。……とりあえず考えてはいるけど、さっぱり解らん。と言うか、そもそもデーモンの様なおどろおどろしい存在が、名前に『パン』が入る可愛い気のある建物と関わるなよな! もっとそれっぽい名前に名を改めてほしい!


「それじゃあ、皆書けたよーじゃし今度は一斉に見て見よーか!」


「ちょ、ちょっと待って下さいよ! まだ一問目の答えが――」


「はい、オーープン!!」


 マイクを持っていない方の手を俺達に向けると、五人分の答えが表示されたのか客席から『オォーーッ!!』と声が上がる。


「はい、それじゃあ先ずは正解発表と行こうかね! えー、正解は……」


 何故か聞こえてくるドラムロールをBGMに、天野寺さんは溜めに溜めて答えを発表した。


「パンデモニウムでしたー!! 秋茄子君以外全員せいかーい!」


「知らんが――――なッ!?」


 ちょっと待て、今彼女は何て言った? ……俺以外が正解……?


「荒木……」


「彰君……知らなかったんだ……」


「ま、まぁしょうがないですよ。だって先輩はパンドラの箱すら知りませんでしたし……」


「アックン……」


 揃いも揃って何故か可哀相な目を向けてくる芦屋達。どうしてこんな目で見られないといけないんだ。


「……荒木。一般常識くらい身につけておかないと……これから大変だぞ……? 何なら俺が教えてやろうか……?」


「そんな常識聞いた事ねぇよ! 何だよパンデモニウムって! 何だよ万魔殿って! 絶対役に立たんわ!!」


「先輩……これからの時代、魔検持ってないと厳しいですよ?」


 魔検!? それってもしかして悪魔検定の略称!? つーかそれが就職にどう関係があるっていうのだろう。……後で調べておこう、念の為に。


「はーい、それじゃあ正解した四人にはそれぞれ一点ずつが加算されまーす! おっ、どうやら同点じゃね〜。勝負の行方が解らんくなってきたけど、優勝して混浴の権利を得るのは誰なんかね〜?」


『ウオォォォッ!!』


 天野寺さんの煽りにテンションが上昇したのか、客席のボルテージは数メートル先の俺達まで届いた。空調が効いているにも関わらず、こめかみからは汗が垂れてくる。浴衣の袖で汗を拭うと、不意にが口を開いた。


「ねぇ、質問があるんだけど」


 これから最終問題を読み上げようとしていた天野寺さんが、露骨に顔をしかめ「せっかく良いところだったのに」と言いながら千羽に向けて目を細める。


「いやさ、最終問題に入る前にハッキリさせておかなきゃいけない事があるよね?」


「……ハッキリ? 何かあったっけ……」


 が首を傾げると、千羽は人差し指と親指を立てながら語り出した。


「忘れたのかい? 混浴の権利を貰えるのは、彼女曰くたったの一人だけなんだよ?」


「……あっ! そうか、そういう事ですか!!」


「な、何がそういう事なんだ女々ちゃん!?」


「混浴できる権利は一人だけなのに、()達の保有している点数は皆一点です。と、言うことはですよ? 最終問題次第では、同点のまま終わる事も十分に考えられるって事ですよ!」


「そっか……! もしかしたら同率一位が現れるかもしれない……って事だね……? チーチャン……」


「うん、その通りだよスドー」


 ……確か、クイズが始まる前に天野寺さんは『混浴の権利は一人にしかあげんつもりじゃけん』と言っていた。


「って事は、つまり――」


「うん、もし一位が二人以上出た場合は混浴の権利事態が消失するよ? だって、『男子二人&女子一人』もしくは『男子一人&女子二人』、『またはそれ以上』なーんて、破廉恥な行為を高校生にさせるわけにはいかんじゃん!」


 いや、そもそも付き合ってもいない年頃の男女を混浴させるなんて横暴を、がさせるってのも可笑しな話だと思う。


「俺はどっちでも構わねーぜ!!」


「芦屋君は本当、自分の欲望に忠実じゃねぇ〜」


「ふっ……これが俺の魅力ですからね」


 そんな魅力に牽かれるヤツの顔がみてみたい。いないだろうけど。


「まぁ、ともかく混浴の権利は最初に言ったとおり一人にしか渡さんし、同点者が多数のまま最終問題にもつれるケースもちゃーんと想定しとるけん、安心してや千羽ちゃん♪」


「そうなんだ。それじゃあボクの取り越し苦労だったってわけだね。ごめんなさい、中断させちゃって」


「ううん、アタシの方こそごめんね。ちゃんと説明してなかったけん、余計な心配をさせてしもーたね」


 お互いに頭を下げ謝りあうと、天野寺さんはその場で半回転しポーズをとりながら喋り出した。


「はい、とーわけでね! アタシの伝達ミスで流れが止まってしもーたけど、改めて最終問題に移りたいと思いまーす!」


『ワアァァァァッ!!』


「先ほど出題者の一人である千羽ちゃんが言ーたよーに、現在回答者の皆が持っとる点数は一点! 問題次第では同率一位が出てしまう可能性があります! そこでアタシは考えました! だったら、一緒の解答を選べないようにすればいいんじゃない? と!」


 ん? 一緒の解答を()()()()()()()だって?


さーん! あれを持ってきてー!」


 天野寺さんがステージの袖に向けて叫ぶと、肩に愛猫の三毛猫である『ミケランジェロ』を乗せたタンクトップ姿の三毛さんが、胸筋を見せびらかすかのようにピクピクと動かしながら出てきた。手には、数本の細長い木製の棒が入った筒を持っている。


「はーい、ありがとー。えー、ゴホン。ここには一から九までの数字が書かれた棒が入っており、この内のどれかが最終問題の答えになっています」


「じゃあ……最終問題は数学……?」


「選択問題じゃあ?」


「いや、これは恐らく――」


うんてん……か」


 割って入った俺の言葉に、華菜乃と女々ちゃんが揃って首を傾げる。


「人の運命は天の定めによるって事だ」


「……つまりどういう事なんだ、荒木?」


「まぁ、とどのつまり博打みたいなモンだよ。運任せってヤツ」


「なるほどな! 出たとこ勝負ってヤツか!」


 それとこれとはまた違うんだけど……まぁいっか。どこがどう違うのかは、また後で教えてやる事にしよう。


「えぇかね? ――うん、えぇみたいじゃね! はーいそれじゃあ皆さんお待ちかね! ドッキドキワクワクの最終問題は〜〜〜〜?」


 最終問題だからか、先の問題の時よりかなり長いドラムロールが流れ――それが止んだ瞬間、天野寺さんは笑みを浮かべながらマイクに向かって叫んだ。


「円周率の百桁目の数字〜〜!!」


 続く


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