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友だちはへん人ばかり  作者: せい
第四話 俺たちの満ち足りたる夏休み
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へん人No.1 芦屋春日 その8

 夏休みが始まってから二週間が経過し、暦が七から八に変わったある日の事。

 俺はリビングでゴロゴロと雑魚寝をしながら夕方のニュースを見ていた。

 数年前までは最新式だったプラズマテレビの中からは、夕方の顔とも呼ぶべき見慣れた男女のアナウンサーが様々な事柄を俺たち視聴者へと届けている。


『――れでは、次のニュースです。昨夜未明、大手ゲーム会社のサニーが新しいゲーム機をこの秋に販売すると発表しました』


『やや高めの料金設定になっていますが、どうやらこれまでの物とは一線を画しているようですね。発売が非常に楽しみでたまりま――』


 ……新しいハードか。噂によると、『これぞ次世代機!』って感じのゲームばかり開発中なんだっけ。ちょっと楽しみだなぁ。

 と、この秋に発売されるであろうハードの事をボケっと考えていると、机の上に置いていたスマホから明るい感じのメロディが鳴り出した。


「……ん? 電話か。この着信音は――あしだな」


 実を言うと、俺は電話をよくかけてくる相手に合わせて、それぞれ着信音を変えている。

 からだった場合は、人気女性シンガーのバラードな曲。

 からだった場合は、人気アイドルユニットのポップな曲。

 ナマ先生からだった場合は、某ターミネート的なロボットのテーマ曲。

 全て俺の独断と偏見により決めているわけだが、まぁ特にこれといって深い意味はない。…………いや、本当に。

 そんな事を考えつつ立ち上がりスマホを手に取る。そして、画面を確認。


 【着信中:芦屋(しゅん)


 うん、やっぱり芦屋だ。――やっぱり。とか言ってみたけど、この曲は言わば芦屋専用曲のようなものだからやっぱりもクソもないんだけど――『通話』と書かれた緑のボタンと『拒否』と書かれた赤いボタンを一瞬だけ見比べて、通話ボタンを右へとスライドさせ、耳へと当てる。


「ウッス、どうし――」


『だーれだ?』


 ブツッ、ツーツーツー。


 やれやれ、どうやら間違い電話だったみたいだ。まったく、どうして夏になるとおかしなヤツが出てくるのかね?

 電源ボタンを軽く押し、机の上に置こう――とした瞬間、再びスマホから芦屋の専用着信音が鳴り出した。

 はぁ……。コイツはそんなに俺と話したいってのか。だったらしゃーないな。どれ、正直ニュースを見てるのにも飽きた事だし、たまには芦屋との雑談に華を咲かせてもいいかもな。

 通話ボタンを右へスライドさせ、耳へと当てる。


「もしも――」


『だーれだっ?』


 ブツッ、ツーツーツー。


 えーっと、着信拒否の仕方はっと……って、うわっ! また芦屋からの着信だ!! えぇい、面倒なヤツめ!

 たび通話ボタンを右へスライドさせ、耳へと当てる。


「一体なんだってんだ――」


『おーれだっ♪』


「知ってるよッ!! 最初っから画面に出てたわ!!」


「なんだとッ!? 俺の知らない間に携帯電話はそこまで進化していたというのかッ!?」


「お前はいつの時代の人間だよ!!」


 芦屋のくだらないボケに対して、電話越しにマジツッコミを入れると芦屋はからからと笑いながら『わりぃ悪ぃ』と言った。悪いって思うのなら最初からしないでほしい。ツッコむのって意外と疲れるんだよ。


「……で? どうしたんだよ電話なんてしてきて。くだらない事だったらただじゃおかないぞ?」


こえぇ事言うなって荒木よー』


 間延びした芦屋の声が聞こえてくる。つーか、こんなテンションにしたのはお前だろうに。


『それは置いといて。時に荒木、お前明日とかって暇か?』


「明日? そうだな……。うん、特にこれといった予定は入ってないけど」


『だと思った! だったら俺達と遊ばねぇ?』


「ちょっと待て! お前、『だと思った』って何だよ! 俺だってこう見えて結構忙しかったんだぞ!?」


 主に華菜乃達の相手でだけど! あれからキッチンの片付けや、入浴騒動とかあって色々と大変だったってのに!


「それに、遊ぶったって何するんだよ? ただ集まって、ダラダラとダベるなんて俺は嫌だぞ」


『バッキャロォォォォオッッ!!』


 つんざくような芦屋の怒号が左耳から右耳へと突き抜ける……。ど、どうしてこんなに怒ってるんだ?


『せっかくの夏休みだぞ!? 十七の夏だぞ!? 人生で今が一番楽しい時期の俺達が、一番輝いていると言っても過言じゃあないくらいの夏休みだぞ!? 一分一秒と無駄に出来ないってのに、誰がそんなくだらん用事で呼ぶかよッ!! 俺達には立ち止まってる暇なんてないんだぞ! 荒木ッ!!』


「だったら『だーれだ?』なんてやるんじゃねぇよ」


『それはそれっ! これはこれだ!』


「お前は無い物ねだりを窘める母親かよ」


 よそはよそっ! うちは家っ! みたいな。

 ……しかしまぁ、凄い熱気だなぁ。気のせいかスマホの温度が上昇しているとさえ思えてくるくらいの熱さ――いや、暑苦しさだ。


「オーケー。お前の言いたいことは分かったし、俺もお前の意見には賛同する。けどさ、結局なにをするってんだよ?」


 十七の夏にやけに拘るくらいだ。それはもう、きっと素晴らしいプランを用意しているに違いない。――おっと、プランって言っちゃうと、まるで俺と芦屋が付き合ってるような印象を与えてしまうじゃあないか。訂正訂正。

 十七の夏にやけに拘るくらいだ。それはもう、きっと素晴らしい遊びを用意しているに違いない!


『そんなの決まってるだろ? 泳ぎにいくんだよ!』


「…………」


 ツッコんでいいのか分かんねぇ! 何というギリギリのラインなんだ! そんな境界線ギリギリを攻めてくるんじゃなくて、もっとこう……極端なボケをくれよ!


「お、泳ぎに、か……。まぁアリっちゃあアリ…………なのか?」


 男二人で海。…………それって楽しくないよな? もしかしてナンパでもするのだろうか。ナンパ……。したこともなけりゃされた事もないからなぁ。芦屋は大丈夫かもしれないけど、俺ナンパなんてしたことないし……。うっ、ナンパに失敗して夕暮れに染まる砂浜で二人して黄昏てる光景が容易に想像出来てしまう……。


「……それは嫌だなぁ」


『ん? 何が嫌だって?』


 電話の向こうから芦屋の怪訝そうな声が聞こえる。とりあえず、せっかく誘ってくれた芦屋には申し訳ないけど、今回は遠慮させて貰うことにしよう。悪いな、芦屋。


「せっかく誘ってくれたってのに申し訳ないんだけどさ、やっぱり今回は遠慮しようかと思ってるんだけど……」


『えぇっ!? 何でだよ!? どーしてだよ!?』


「いや、だってほら、男二人で泳ぎに行くなんて……ねぇ?」


 言葉に詰まりながら説明すると、芦屋は不思議そうに『何言ってんだ?』と言葉を投げかけてきた。


『誰が俺達二人だけって言ったよ? 明日泳ぎに行くメンバーは俺と、お前とあまでらさんだぞ?』


「な、何だってぇぇぇッ!?」


 天野寺さんと言えば、千羽とトランプで勝負した広島弁――と、そのふくよかなボディ――が魅力的なあの人か! 彼女の水着姿が見れるだと!? そんなの……。そんなの行くしかねぇじゃねーかよぉぉぉぉっ!


「…………芦屋」


『おう』


「四十秒で支度するわ」


『……フッ、荒木ならそう言うと思ってたぜ。流石は俺の親友だ。それじゃあ明日の予定を伝える。朝の八時にばちなかみね公園に集合な。水着と着替えはもちろん必須。おやつは三千円までオッケーとのことらしいから、よーく考えてこいってよ』


「何か遠足みたいだが――まぁいい。わかった了解だ」


『……よし。それじゃあまた明日な!』


 電話が切れ、画面には通話相手の名前と通話時間だけが表示される。

 俺はスマホをズボンのポケットに入れ、最寄りのスーパーへと走った。



 続く



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