へん人No.EX ナマ先生 その1
「……と、言うわけだったそうなんです」
「んあー。なるほどなー」
放課後の誰もいない教室で、ダルそうに机に突っ伏しているナマ先生に向けて今回の顛末を話すも、先生からは生返事しか返ってこなかった。
ナマ先生だけに生返事……。何てくだらない事を考えてる場合じゃない。つーか報告を聞く時くらいしゃんとしてくれよ。
「先生……ちゃんと聞いてくれてますか? 今回も俺結構頑張ったんですよ?」
「聞ーてる聞ーてる。よーし、私が頭を撫でてやろうー」
先生がすべすべの手で俺の手を掴んで引き寄せてくる。
「ちょ、いいですってば! 恥ずかしいじゃないですか!」
「んー? ノリが悪いなー。たまには可愛い生徒の頭を思いっきり愛でたって罰は当たらんと思うんだがなー」
「……勘弁してくださいよ」
こちとら早く帰りたいってのに。
「あーーダルい。ダルいわー」
先生がさらにダラける。……ん? そういえば最近ドタバタしてたから気がつかなかったけど、放課後だってのに先生のテンションが低くないか? いつもならウザいくらいハイテンションなはずなのに、今日の先生はなんだか様子が変だ。
「荒木ー、お前の出席日数に色を付けてやるから私の為にアレを取ってきてくれないかー?」
「ア、アレって何ですか?」
「アレって言ったらアレだろー? アレだよアレ、あのドリンク」
……もしかしてアレって『Re:ボビタンDA』の事を言ってるのか? それならポケットにまだ飲みかけが残ってるけど……。
恐る恐る温くなったドリンクを取り出すと――
「お! それだよそれー!!」
「のわっ!」
凄まじい速度で奪い取られた。
「んぐ……んぐ…………プハー! よーし、これで元気ハツラ――あれ?」
「あぁ、何かそのドリンクって冷やしておかないと元気ハツラツにはならないそうですよ」
冷やせば肉体強化+テンションアップ、温めれば精神強化……だっけ。女々ちゃん、よくそんな物作れたよなぁ。
「なんだよー、元気ハツラツ出来ないのかよー。なんとかしてくれよ荒木ぃー」
「そ、そんな事言われても……。って言うか先生? もしかして先生っていつもあのドリンク飲んでたんですか!?」
「当たり前だろー? 飲まなきゃ教師なんてやってらんないっつーのー。年頃の子供の面倒なんて見てられないっつーのー」
何て事を言うんだ。絶対この人教師じゃねぇだろ。
「ちなみになー、この前間違ってお前ん家のドアノブ壊したの私なんだー。いやー、済まんかったなー」
「え、えぇぇぇぇっ!? あれって先生が壊したんですか!? 何してくれてんですか! つーかどうして壊したんですか!!」
「んー、いや、何と言うか――」
「何と言うか?」
「酔った勢い?」
「張っ倒すぞ」
右手で思いっきりビンタしてやりてぇ。
「お? 私にそんな口聞いてもいいのか?」
「――ゴメンナサイ」
「解ればよし」
俺は先生に頭が上がらない。悲しいけどコレ、性なのよね。
つーか、先生が生徒を脅迫するってどうなんだよ!
「……で、本当にその場の勢いだけでやっちゃったんですか?」
「んー、まぁなー。一人で酒飲みながらモザイクアートのパズルを作ってたんだが、あまりにも完成しなくてなー。ついついお前ん家まで片道三十分かけて向かったんだけど、鍵が開いてなかったからひたすらガチャガチャしてたんだよ。そしたらな?」
片目を閉じ意味深な笑みを浮かべながら、唇に人差し指を当てるナマ先生。
どうしたんだろう? やけにもったいぶるなぁ。早く教えてほしいのに。
「そしたら?」
「なんと――取れたんだよ!!」
「…………あぁ、そうですか」
期待した俺が馬鹿だった。
「それじゃあ結局、俺の家のドアノブを壊した理由ってのは突発的な衝動……って事でいいんですか?」
「許してくれるかなー?」
「先生、許すも何も」
「許してくれるかなぁー?」
「いや、だから」
「許してくれるかなぁぁーー!?」
「……いいともー」
「よし、じゃあなー荒木ー! 戸締まりと変質者には十分に気をつけるんだぞー!」
俺の相槌を聞くと、ナマ先生は満足気な顔をしながら教室を出ていった。
「はぁ、疲れたし先生の言った通りさっさと帰るか」
先生の言っていたことに少し引っかかるものがあったが、あまりにもクタクタだったので深く考えないようにし、俺はそのまま学校を後にした。
続く




