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友だちはへん人ばかり  作者: せい
第三話 芭逸女々花の独善たる好奇心
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へん人No.6 芭逸女々花 その7

「準備……?」


 準備って一体何の準備をしてたんだ? いや、今は真相を突き止める方が先だ。


「ここ、座るぞ」


「どーぞどーぞ♪」


 後ろ手に戸を閉め、いつもは寝ているはずの女々ちゃんの対面にの椅子に腰を下ろす。


「……で、どうしてこんな事をしたんだ?」


「こんな事? と、言いますと?」


「しらばっくれなくていいから。こっちはもう分かってるんだぞ? 今回の騒動を引き起こした犯人が女々ちゃんだって事に」


「…………」


「今朝、俺は学校に行く前に昨日チラシに書いてあった例の店に行ってきたんだ。そして、そこで三木岡に会ったんだよ」


「三木岡君に?」


「あぁ。そして全部聞いたんだよ。『いつが作った、珍妙キテレツなモノの実験を手伝わされてる』って」


 どうやらアイツの話によると、女々ちゃんはお手製の『簡易脳波コントロール装置』なるものを作ったらしく、それを昼の校内放送で音楽と共に流し、どれほどの影響があるのか日々データを取っていたらしい。

 しかも、日によって脳波の強度を変えていたそうで、三木岡はその放送を聞いて、影響を受けた女子生徒がどれだけいたのかを毎朝、二丁目の本店で調べさせられていたのだそうだ。


「……先生にはもう言ってるんですか?」


「いや、まだ言ってない。……俺が密告す(チ  ク)るより、自分から言った方がいくらか罪も軽くなるだろうしな。それに俺もできる限り女々ちゃんの事を庇うつもりだよ」


「ふふっ……先輩って優しいんですね。女々花を庇ってくれるなんて……。でも……っ!」


「――っ!?」


いつ()はつめいなんですっ! 完成間近の()を放ったままなんて嫌です!」


 突然、女々ちゃんが声を荒げたかと思うと、そのまま部室を飛び出していき、ほぼ同じタイミングで学校中に設置された校内放送用のスピーカーから例の音楽が流れ出した。


「ヤバいっ!」


 イントロの部分が聞こえてきたところで素早く耳を塞ぐ。指の隙間から微かに音が伝わってくるが、今まで直接聞かされた時のようなあの感覚に陥らないという事は何とか防げたって事なのかもしれない。

 両耳を押さえながらなんとか戸を開け、辺りを見回してみるも既に女々ちゃんの姿はどこにも見当たらず……放送が切れた頃にはいつも通りの昼休憩の風景が戻っていた。


「くそっ、どこに行ったんだよ……!」


 四階の廊下から下を見下ろしてみるがそれらしい影は無く、見えたのはサッカーボールを脇に挟んだ眼鏡の男子生徒二人組が部室棟に入っていくところだけだった。

 音楽が流れていた時間はおそらく一分程だ。部室棟こ こから本校舎までは走っても三分はかかる。


「……と言うことは、女々ちゃんはまだここにいる?」


 いや、多分いるはずだ。

 もしかすると、一階に逃げたと見せかけて実はまだ四階に居るかも。

 そう思い、四階の各部室を覗いてみたが……女々ちゃんの姿は見当たらなかった。

 こうなったら、一階ずつしらみ潰しに探してやる!

 素早く階段を下り、そうっと三階の様子を確認――しようとしたところで、目の前を右から左へと何かが高速で通りすぎた。


「…………へっ?」


 ゆっくりと顔を右に向けると――


「チィッ、ミスったか!」「バーロー! 今ので完全に気づかれたじゃねぇか!」「いや、まだ気がついていない可能性も微粒レベルで存在して……?」「ねぇよ! バーロー!」


 大きな眼鏡をかけ、赤い蝶ネクタイを付けた男子生徒達が言い争いをしていた。


「あ、危ないじゃないか! 当たったらどうするつもりだったんだよっ!?」


「いいんだよ! 俺たちはお前を足止めする為にここに居るんだからな!」「そうだぞバーロー!」


 そう言うが否や、狂ったようにボールを蹴り続けてくるバーロー達。


「こ、これじゃあまともに捜索なんて出来ない! どうする? このまま三階はスルーすべきなのか!? 何か、何かポケットに…………。――!」


「どうした! 怖じ気づいたのか!!」「俺たちにビビってんのかバーロー!」


「……はっ、そんなわけないだろ?」


「な、何おぅ!?」「いいからやるぞ! LaaaaaaaaN!!」


 余裕を持って階段の影から現れた俺に向かって、二人がほぼ同時に強力なシュートを放ってくる。が、それを同時に両手でキャッチしてみせると、バーロー二人組は「「はっ?」」と揃って素っ頓狂な声を上げていた。


「これはぁ……おかえしだぁぁぁっ!!」


 二人組目掛けて思いっきりボールを投げると、見事に顔面にクリーンヒットし、そのまま二人組は力無くその場に倒れ込んだ。

 完全に沈黙したのを見計らって、開いている部室が無いかドアノブを回しながら確認してみるも、三階の部室は全て鍵が掛かっていた。


「……ここにはいない、か」


 一息吐き、ポケットから油性マジックでラベルが書かれた茶色の小瓶――Re:ボビタンDA――を取り出した。

 ずっとポケットに入れておいたせいですっかり温くなってしまっていたが、飲んだ瞬間、アイツ等が放ったボールがスローモーションビデオを見ているようにゆっくりと迫ってくるのが見えた。

 不思議と気分も落ち着いている……。この前飲んだ時はバカみたいにテンションが高くなったというのにどうしてだろう。


「……いや、考えるのは後だ! 今は二階へ急ごう!」


 俺は中身が三分の二程残っている瓶をもう一度ポケットの中に入れ、階段を下りた。


 続く




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