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友だちはへん人ばかり  作者: せい
第三話 芭逸女々花の独善たる好奇心
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へん人No.6 芭逸女々花 その5

後半を少し加筆しました。

 部室棟の三階へと上がり、くだんの部室の前へ到着した。ドアに目をやると、部活名が書いてあるはずのネームプレートは、文字通り真っ白なままだった。

 元ラクロス部の部室……。

 ラクロス部がどうして廃部になったのかはわからないけれど、ここは今もちゃんと使われている。


「……よし、開けるぞ」


「先輩……! 慎重に、慎重に……ですよ……!」


 ()ちゃんはドアを開けようとする俺を、五メートルほど離れたところから見守っている。

 いや、むしろこれは……避難? どうして避難する必要があるんだろう。もしかしてトラップでも仕掛けてあるのだろうか。

 脳裏をいちまつの不安が過ぎったが、意を決してドアノブを握り、右方向へ回転させる為に力を込めた。


「…………あれ、開かない?」


 建て付けが悪いのか? でも、前に達と来たときにはすんなり開いたと思ったんだけど……。


「あー、これはものの見事に鍵を掛けられちゃってますね。しかも……これ、見てくださいよ」


 女々ちゃんがドアノブの中央にある鍵穴を指さす。


「…………? それがどうかしたのか? どこからどう見ても紛うことなきドアノブじゃないか」


「――に見えますけど、これ学校が取り付けたドアノブじゃありませんよ。おそらく最新式のドアノブです、学校のマスターキーでも開かないでしょうね」


 改めて視線を落とすと、確かに他の部室のとは違ってここのドアノブはやたらと銀色の光沢が眩しかった。


「これじゃあ開きませんね……。どうします? 諦めますか?」


「…………いや、まだ方法はある!」


「えっ?」


 俺はポケットからスマホを取り出し、電話の受信履歴からアイツの名前を探し、そしてタップした。

 数秒の沈黙のあと、プルルルル……とコール音が鳴り、『もしもーし、どうしたんだいアックン?』と、声が聞こえてきた。


「ちょっとに聞きたいことっつーか、頼みたい事があるんだけど……今どこ?」


『んんっ? 何やら訳ありっぽい声のトーンだね、でも今ボクはお風呂に入ろうと思っててね。ちょうどバスタオル一枚なんだよ』


「よし、今すぐ写メを――って違う違う!」


『あれ、いらないのかい? 自分で言うのもあれだけど、お風呂上がりの女の子って、魅力が八割増しだと思うんだけど』


 バスタオル一枚の千羽か……。


「…………ゴクリ」


 思わず生唾を飲み込んでしまう。バスタオルという名の物理障壁を突破すれば、そこにはきっとがある。あぁ! 出来ることなら今すぐにでも旅立ちたい! 世界の中心にあるという理想世界にっ!


『ま、嘘なんだけどね♪』


「ちくしょおおおおおおお!!」


 俺の絶叫を聞いた千羽の『アハハハハッ♪』という笑い声が聞こえてくる。くそっ、流石は千羽だ。中々思い切った嘘をついてくれるじゃないか。絶対いつか仕返しをしてやる!


「先輩先輩、話が脱線してますよ」


「わ、わかってるよっ! 今から軌道修正するからっ!」


 ジト目を向けてくる女々ちゃんの顔を見ないよう「ゴホン!」と、わざとらしく咳をする。俺が千羽に電話したのは話したかったからじゃない。アレを貸してもらう為だ。


「は、話を戻すけどさ。この前、何でも開けれるっていう『ナントカ君』って鍵を持ってただろ? 実はアレを貸して欲しいんだよ」


『別にいいけど……一体、何に悪用するつもりなんだい? 先に言っておくけど、法を犯すつもりなんだったら貸さないよ?』


「んなわけあるかっての!」


『それじゃあ何に使うつもりなんだい? やましい事をするつもりじゃあないのなら、ボクに説明出来るよね?』


「それは…………そうなんだけどな。ゴメン。今は言えないんだ」


『……………………』


 ……沈黙。やっぱり明確な理由を言わないといけないのだろうか……。そりゃあ、俺だって楽になりたい。『ナマ先生から頼まれたんだ』って、言って楽になりたい。でも、先生が『他言無用で』と言ったからには、それを守らないといけない。

 女々ちゃんの同行は許してもらえたみたいだけど、これ以上人数を増やすと、先生に何を言われるかわからない。

 単位など諸々の融通を利かせてもらう為には、先生の言う事を聞くしかないんだ……。


『……はぁ、わかったよ。貸してあげるから、全部片づいたらちゃんと説明してね?』


「ほ、本当か!? ありがとうな千羽!」


『でも、どうしよっか……。ボクはもう帰っちゃってるし、鍵を渡すのはどれだけ早くても明日になっちゃうけど……』


「う……まぁ、それはしょうがないか。それじゃあ明日学校で渡してくれ」


『ん、りょーかーい』


「……あと、くれぐれも忘れないでくれよ?」


『忘れるだって? いやいや、ボクが忘れるわけないじゃないか。だっていつも制服の内ポケットに入れてるんだ――――』


 と、何故かそこで千羽の声が途切れた。


「どうした?」


『無い!? あれっ!? 無い!? 無い無い無い!?』


「…………もしかして」


『……うん、学校に忘れちゃったみたい♪』


 何処かの空でカラスが鳴いた。





「……すぅ……すぅ……」


 千羽の机から【スグ・アケール君】を回収し、もう一度部室棟の三階――元ラクロス部の部室前――に到着すると、ドアにもたれ掛かった状態で女々ちゃんが眠っていた。

 ここから本校舎まではだいたい片道三分くらいで、鍵を回収したさいに掛かった時間を合わせても、十分と経っていないってのにまさか寝ているとは……。


「女々ちゃーん、起きろー」


 頭をぺしぺしと叩き、半覚醒状態の女々ちゃんを後ろに立たせる。そして、俺は千羽から借りた鍵をドアノブに差し込み、ゆっくりと回すと、ガチャっと音がした。


「おぉぉぉ……」


 凄いなこれ……本当にドアが開いてしまった。

 鍵の性能に驚きつつも部室に入ると、ひんやりとした空気が体を包んだ。

 しかし、部屋の中には誰もいない。まぁ、鍵が掛かっていたから当然と言えば当然なのだろうけど、それにしても違和感だ。


「ふぁー、やっぱり冷たくて気持ちいーですー」


 女々ちゃんはカウンターの上でだらけている。どうやら探す気は皆無のようだ。


「……いいよ一人で探すから」


 辺りを見渡してみるが、パッと見た感じ部屋の内装は前に来た時とほとんど変わってないみたいだ。

 色々と物色してみるが、ここにはリボンの『リ』の字も見あたらなかった。

 やっぱり、こことリボンは関係ない……?


「あー、こうすればもっと気持ちいいですー」


 女々ちゃんは冷蔵庫の扉を開けて、更なる冷気を顔に浴びて――


「って、冷蔵庫?」


「はいー、先輩もどうですかぁー? こうやって頭を中に突っ込むと気持ちいーですよー」


 寒いだけじゃないのか!? よく出来るな女々ちゃん。というか、この前来た時は冷蔵庫があったなんて気がつかなかった。

 冷蔵庫前に陣取る女々ちゃんを引っ剥がし、中を確認するとそこには茶色の小瓶「Re:ボビタンDa」が大量に保存されていた。


「でも、これってリボンの事とは関係ないんだよな。……一応先生に報告だけでもしておくか」


 冷蔵庫から数本取り出しポケットに入れる。


「あ、と、は――うーん、特に怪しいモノは無いみたいだな」


「怪しいのは女々花達ぐらいじゃないですか? 不法侵入に窃盗もしてますし、それに先輩に至っては冴えない顔をしてますしね♪」


「さらりと毒を吐くなよ! 傷つくだろっ!?」


「え、でも事実ですよね?」


「そうだけどさ……」


 それにしても、もう少し言い方ってヤツがあると思うんだけど。


「あれ? 先輩、何か踏んでますよ」


「え? あ、本当だ」


 足をどかし踏んでいた紙を拾い上げ見てみると、そこには『リボンはばちなかみね二丁目にある本店にて売っております! 販売時間は朝の八時から三十分間! 先着二十名様限定です!』と書いてあった。


「行くんですか?」


「……行くしかないだろ。ようやく進展しそうだしな」



 続く


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