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友だちはへん人ばかり  作者: せい
第三話 芭逸女々花の独善たる好奇心
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へん人No.6 芭逸女々花 その2

 オレンジ色の夕日が差し込む校内を抜け、俺がいつさんに連れてこられた場所は四階立ての部室棟の――尚且つ四階にある――一室だった。


「はぁ……はぁ……、芭逸さん……意外と体力あるな……」


「もー! せんぱーい! ()の事は()って呼んでくださいって言ったじゃないですかー!」


 俺よりかなり小柄だというのに、彼女のいったいどこにこんな力があるんだろう。

 ぷりぷりと怒る彼女を尻目に、そんな事を思いながらドアの上部にある部室名が書かれたプレートを見ると、そこには『メメントモリ・カルマ部』と書いてあった。


「……なに、ここ?」


「と、言われましても見ての通りですよ? ここは『メメントモリ・カルマ部』略して『メメカ部』ですっ!」


「それこそ『と、言われましても』だよ、その、()……ちゃん」


 はぁ、初対面の人を苗字でなく名前で呼ぶなんて中々に緊張するな。


「それもそうですね。確かに、名前だけ言っても初見で意味が分かる方なんてそうそういませんし♪」


 女々ちゃんは舌を出してお茶目に笑うとポケットから鍵を取り出し「ささっ、先輩、こちらへどうぞどうぞ♪」ドアを開け、『メメントモリ・カルマ部』略して『メメカ部』とやらに迎え入れてくれた。


「へぇー、結構綺麗にしてるんだね」


 メメカ部とやらが何をする部活なのかは分からないが、部屋の中にこれと言った特別そうな機材や道具が見当たらない事から推測するに、ここは部室とは名ばかりのお遊び倶楽部なのかもしれない。


「そりゃーそうですよ。なんてったって、女々花はここの部長ですからね!」


「メメちゃんって一年生なのに部長なんだ。と、言うことは他の部員も皆一年生だったりするの?」


「もちろん一年生ですよー。ま、そうは言っても女々花以外の部員は幽霊部員なんですけどね。あ、淋しいとかは全然思ってませんよ? 三木岡君とみのほし君はたまーにですけど顔出してくれますし、ういちゃんとおうちゃんとはクラスでもよく話しますし……あ、寂しいとか思ってませんからね?」


「ふーん」


 そうは言いながらも、女々ちゃんは何処か寂しそうな笑顔を浮かべていた。


「さ、先輩♪」


 女々ちゃんが部屋の中央にある長机に突っ込まれていた椅子を引き出し、背もたれを持ったまま無言で俺を見つめてくる。

 おそらく「ここに座れ」ってことなのだろう。

 机と椅子の間に入ると、女々ちゃんが軽く椅子を押したのが分かったので俺はゆっくりと腰を下ろす。

 女々ちゃんは俺の対面に座ると、胸ポケットからスマホを取り出し音楽を流しだした。

 どこかで聞いたことのある不思議なメロディーが鼓膜を通じて脳へと伝わってくる。


「あれ、この音楽……どこかで聞いたことがあるような……」


 そう遠くない日に聞いた気がするんだけど…………ダメだ、思い出せない。


「で、先輩がさっき言ってた野暮用の事なんですけど――先輩はいったい何を探していたんですか?」


「ん、いやーその、なんと言うか……モノと言うかものと言うか……」


「もしかして、リボンの事だったりするんじゃないですか?」


「――へっ!?」


 な、何でわかるんだ!? もしかして顔に出てたのか!? マズい! 知られたらいけないんだ! と、とりあえず誤魔化さないと!


「い、いやぁ〜? ナマ先生にリボン事件の真相、もしくは真犯人を探せなんて密命は受けてないけどぉ〜? 俺が探してるのは運命の出会いだよぉ〜?」


「ふふふっ♪ リボンの事なんですね? 非常に分かりやすい説明をありがとうございます、先輩っ♪」


「し、しまったぁぁぁぁ!!」


 完全に墓穴を掘ってしまった!? …………あぁ、ナマ先生に顔向け出来ない。


「先輩って分かりやすいですね♪」


「……よく言われる」


 俺は両手を上げ、潔く白旗をあげる事にした。


「それで先輩、調査はどこまで進んでるんですか?」


「教室とかトイレとか、まぁ校舎内の入れるところはほとんど探してみたんだけど……特にこれと言った収穫はなかったよ。あと、探してないところって言えば……まぁ、部室棟と職員室くらいかな」


 ただでさえだだっ広い学校なのだ。いくら放課後とはいえ、部活や居残りなどで校内に残っている生徒の数もそれなりに多い。そんな彼らの目を盗みながらの潜入スニーキング任務ミッションはなかなかに難しかった。


「先輩、流石にトイレにはないと思いますけど」


「いやいや、こういうのはしらみ潰しにいかないとな」


 よくRPGのダンジョンでも、思わぬ場所に重要なアイテムや武器が落ちているものだ。俺は宝箱は全部回収したい人間なのだ。


「それじゃあ女子トイレにも入ったんですか……ドン引きです」


「んなわけないだろうがっ! 俺だって一人の男子である前に一人前の紳士なんだ! そんな真似が出来るわけないだろうが!」


「そ、そうですよね……いくらなんでもそこまで変態じゃあ――」


「入り口から中を覗くだけにとどめたよ!」


「ギリアウトじゃないですか!」


「ふっ、グレーゾーンと言ってほしいな」


 メメちゃんが犯罪者を見るようなジト目を向けてくる。


「はぁ……。それじゃあ、探せてないところがやっぱり怪しいですね。職員室は――まぁ最後にするとして、部室棟コ コから探索しましょうか」


「だな。俺も最初からココが怪しいと思ってたし」


「……それなら初めからココを探せばよかったんじゃないですか?」


「だって鍵かかってるじゃん」


「先生に借りればいいんじゃないですか?」


 俺が溜息混じりに答えると、メメちゃんは頬に指を当てキョトンとしながら答えた。


「あ、その手があった」





「まったく……マスターキー貸してやるから、早めに返せよー」


 職員室に入り、話しかけようとした瞬間。ナマ先生は「やれやれ……」といった感じで鍵置き場の上段に掛けられていたマスターキーを貸してくれた。


「え……いいんですか? その、まだ何も説明してませんけど」


「んー? あぁ、お前が一年生の女子を引き連れてここに来た時点でだいたい把握したから」


 洞察力が鋭すぎる。他の可能性も考えられそうなものだけど……。まぁ、ひとまず今は自分に与えられた仕事をこなそう。

 俺は先生に向けて一つお辞儀をし、何故か入り口で立ち止まっていた女々ちゃんと職員室を出た。





 ――それから一時間後。


「なぁ、ここってトランプとか花札とか置いてないの? 暇で暇でしょうがないんだけど」


「んー、元素記号が書かれたポスターならありますけど……そうだ! これを使って記号の名前当てクイズしましょうよ! 楽しいですよー♪」


「んー、パスさせてもらおうかな♪」


 俺と女々ちゃんは、他の生徒達が完全に下校するのをメメカ部の中で待っていた。

 時刻はもうすぐ夜の七時を回ろうとしている。六月も終盤に差し掛かってくると、なかなかに日が落ちない。先月までなら、暗く黒くなっていた空も今はまだ深い青のままだ。

 廊下に出て、窓から頭だけを出し下の階を覗いてみると、四階ココとは違って運動部達が使用している一階の廊下からは光が漏れていた。


「アイツら早く帰んねぇかなー」


「もう少しの辛抱ですよ、先輩。そろそろ完全下校時刻になりますから、見回りの先生が来るはずですし」 


「それもそうだな、でも完全下校時刻になっても残ってたら怒られるんだよなー」


「大丈夫ですよ! 見つかる前に事を済ませればいいだけの話です! それに()()人も言ってたじゃありませんか、『見つからなければ、どうと言う事はない!』って♪」


「『当たらなければ』、な」


 軽くツッコミを入れ、そのまま二人で一階の様子を見ていると一分も経たない内に廊下の電気は消え、スポーツ少年達が「疲れたー」「あちーー」「ジュース飲みてー」などの言葉を吐きながら部室棟から出て行く姿が見えた。


「よし、行こうか」


「はいっ、了解であります♪」


 小さく敬礼をする女々ちゃんと一緒に、俺たちは一階の部室

から調べる事にした。



 続く



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