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友だちはへん人ばかり  作者: せい
第三話 芭逸女々花の独善たる好奇心
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へん人No.6 芭逸女々花 その1

 ナマ先生から『リボン騒動の原因を探れ』と命令されてから四日が過ぎた。


「はぁ……今日も進展なし、かぁ」


 オレンジ色の夕日が射す放課後の屋上でたそがれながら、俺は自販機で買ったジュースを片手に頭を悩ませていた。


「イチ、ニ、サン、シー」「オラァ! レフト行くぞぉー!」「バッチコーイ!」「よーし、次は短距離ダッシュ二十本なー!」「ウーーッス!!」


 眼下に広がる広大なグラウンドでは、野球部やサッカー部が部活動という名の青春に明け暮れている。


「アイツら、よく動けるよなー」


 今日も体育があったっていうのに、ああやって右から左へとぴょんぴょん跳ね回れるのはやっぱり日頃から運動しているからなのか? そんな事を考えつつ、俺はもう一度ため息をついた。

 先生は俺に対して『他言無用でな』と言った。

 とはいえ、流石にこの無駄に広い校内を一人で探すのにも限界がある。あと、何よりも淋しい。

 しかし、ナマ先生がそう言うのならしょうがない。

 俺が不真面目な学校生活を送れているのも、裏で色々とナマ先生が手を回してくれているからなのだ。だから、俺は先生に対して愚痴をこぼす事はあっても、決して悪態をつくことはしない――いや、出来ないのだ。


「……とは言ってもなぁ……。他のクラスや教室を調べてみたけど、怪しいヤツはいなかったし、入れる所はだいたい調べてみたけど、コレと言ってめぼしいモノも無かったし…………あー、もうどうしろって言うんだよーー!!」


 飲み干したジュースの容器をくしゃっと丸め、近くのゴミ箱に向けて思いっきり投げてみた。

 が、勢いが足りなかったからかはゴミ箱の数メートル手前で力なく落ちた。


「……ま、いっか」


 ここで拾って入れるのが社会の一般常識なんだろうけど、あいにく、いまはそんな気分になれなかった。

 容器とゴミ箱を一瞥し、もう一度グラウンドで青春しているスポーツ少年達を見てみる。


「本当……よくやるよなぁ」


「早まっちゃダメーーーーっ!!」


「――へっ?」


 突然、後ろからも悲鳴にも似た大声が聞こえてきたので慌てて振り返ると、頭にメガネをかけダボダボの制服を来たサイドアップの小柄な子が、俺の腹にめがけて突進してきた。


「ぐふぅぅっ!!」


 身長差も相まってか、女の子の頭が的確に俺の鳩尾を捉える。


「は、早まっちゃダメです! いくらそんなに冴えない顔しているからって、人生に絶望するにはまだ早すぎますよ!」


「い、いや……まだ絶望なんてしてないし、そもそも死ぬつもりなんてこれっぽっちも無いから……」


「本当!? 本当ですか!?」


 ぶつかった衝撃でマウントポジションを取った女の子が俺の襟を持って揺さぶってくる。


「ほ、本当! 本当、だ、から、その手を、離し、て!!」


「そっかぁ……よかったぁ……」


「いっってぇ!!」


 すると女の子は安心したようにため息をつき、急に手を離した。そのせいで頭を打ってしまったが、まぁ、ひとまずそれは置いておこう。それよりもこの子には色々と聞かないといけないことがある。


「君……名前は?」


「名前?」


 きょろきょろと辺りを見回したあとで、自分を指差し首を傾げるので俺は「君しかいないでしょ」と苦笑いした。


()ですが……何か問題でも?」


「問題があるとしたらその思考回路だな」


 普通は名字もセットで名乗るだろうに。それともこの子は名字が女々花と言うのだろうか? ヤバい、だとしたら失礼なのは俺の方じゃないか。いや、そもそも名乗る時は自分から名乗らないとダメだよな。よし、ここは華麗に自己紹介を決めてやろうじゃないか。


「あぁ、ごめんごめん。人に名前を聞くときは自分から名乗るのが常識だよな。俺の名前は荒木――」


「女々花のフルネームは、いつ()です! 一年生です! ごめんなさい、女々花としたことがうっかりしてました!」


「…………あぁ、うん。こちらこそ」


 完璧にタイミングを被らされた。しかも変な所で区切っちゃったから、変な誤解をされていないといけど――


「それで、荒木…………あぁ、うん。こちらこそさんは何年生なんですか?」


「俺の名前は荒木彰だ! …………(さんてんリーダ)の後ろから全部は忘れてくれっ! つーか普通は分かるだろうが?」


「ごめんなさい……つい興味が沸いたもので」


「興味?」


「はい、好奇心ってヤツです。いや、女々花も確かに『そんな馬鹿みたいな名前の人なんていないだろー』とは思ったんですけど、万が一って事もあるじゃないですか?」


「そんな名前の人間なんて億が一にも存在しねーよ」


 むしろ、そんな名前のひとが居るのならば是非ともお知り合いになってみたいものだ。


「まぁ、いいや。それで、芭逸さん……だっけ? 君はこんな所で何してるの?」


「女々花は野暮用で居残りしてたんですが、部屋から屋上で黄昏ている人を見つけたんで、来ちゃいました♪」


「野暮用……?」


「はい、野暮用です♪ 先輩こそ、こんな所で何をしてたんですか?」


「俺の方こそ野暮用だよ。芭逸さんと一緒のね」


「野暮用……ですか?」


 すると、芭逸さんは何故か腕を組んで悩みだした。


「何の野暮用なんですか?」


「んー、それはちょっと言えないんだよなぁ……」


 先生からは『他言無用で』と言われている。華菜乃達に言うならまだしも、出会ったばかりの芭逸さんに喋るわけにはいかない。ここはしらばっくれるのが一番だよな。


「……わかりました。それじゃあ女々花もその野暮用とやらが早く解決するように協力致します!」


「……えっ?」


 この子はいったい何を言っているんだろう。

 あまりにも突発的な展開に思考が追いつかない。

 しかし、芭逸さんは俺の手を握ると、


「それじゃあ作戦会議をしましょうか! あ、それと女々花の事は『()』って呼んで下さいね? せ・ん・ぱ・い♪」


「はぃぃぃぃぃぃ!?」


 そんな事はお構いなし、と言わんばかりに脇目もふらずに走り出した。


 続く

  


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