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友だちはへん人ばかり  作者: せい
第三話 芭逸女々花の独善たる好奇心
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へん人No.2&3 栖桐&朽葉 その6

藤吉「あー暇ねー」

荒木「委員長の仕事があるだろ?」

藤吉「なーんかやる気が起きないのよ」

荒木「おいおい、頼むからちゃんとクラスの連中を先導してくれよ?」

藤吉「そうは言われてもモチベーションが沸かないのよねぇ……」

藤吉「そうだ!荒木、私のモチベ向上の為に芦屋と絡んで――ってあれ?」

藤吉「ちょっと!どこに行ったのよー!」

藤吉「……しょうがないわね。妄想しよっと」



以下、本編です。

「それでさ、二人に聞きたいことがあるんだけど」


 オムライス、スクランブルエッグ、ハムエッグの順に食べ、が注いでくれた味噌汁をズズッと一口啜ってから、俺は二人に疑問を投げかけた。

 華菜乃とが同時に顔を見合わせ首を傾げるので、俺は箸を卓袱台に置き、疑念――と少しばかりの恐怖――を孕んではいたが、恐る恐る口を開いた。


「なんで俺の部屋に二人とも()()()てるの!?」


「まぁまぁ、そんな些細な事はどうでもいいんじゃないかい。アックン」


 華菜乃から手渡された味噌汁を啜りながら、さもどうでも良さそうに千羽が応える。よくねぇよ。


「そもそもどうして君は俺の布団の上で寝てたんだよ!」


 華菜乃が毎朝侵入するようになってから、戸締まりはしっかりしているというのに!

 ――ハッ! まさか華菜乃みたいに窓をぶち破ってきたのか!?

 何故か目を合わせようとしない華菜乃の顔を一瞥し、前回の侵入経路にされてしまったリビングの窓を確認する……よかった。どうやら見渡す限りじゃあ割られている窓は無いみたいだ。


「説明しないとダメかい?」


「あぁ。二〇字以内で簡潔に頼む」


「えー。めんどくさいなぁ」


 千羽が不服そうに唇を尖らせる。


「そうだよチーちゃん……! どこから入ったのかちゃんと説明して……!」


「華菜乃。そう言ってくれるのはありがたいけど、お前も同じ穴のムジナだからな?」


 三時間前さっきは状況が状況だっただけに思わず流されちまったけど、不自然極まりないからな?


「家の鍵を無くしたから、ピッキングしました」


 うん、ジャスト二〇字。流石ですね千羽さん。――って、そうじゃなくて!


「え、なに? 千羽さんピッキング出来るの?」


「出来るもなにも、これくらい朝飯前だよ。ね、スドー?」


「うん……彰君、これくらい乙女の嗜みだよ……?」


 「ねー?」と二人が同時に首をこてっと曲げる。いやいや、そんな嗜み聞いたことがないわ。どこの世界の常識だよ。


「つーか、ピッキング出来るんなら自分の家の鍵を開けろよ……」


 わざわざ俺んところに来なくたっていいだろうに。


「ごめんごめん。昨日買った()()を試したかったっていうのもあってさ。つい――ね?」


 そう言うと、千羽はパジャマのポケットから小さな折りたたみナイフのような物を取り出した。

 頭にはてなマークを浮かべながら、華菜乃と二人でそれを見つめていると「これをこうやって、それからここのボタンを……」ぶつぶつと呟きながら千羽が弄りだした。

 パッと見は、ただの折りたたみナイフ……だったのだが、それは弄っていく内にみるみる姿を変えていき――


「ハイ、完成♪ これが超形状記憶合金Zで出来た、万能侵入ツール【スグ・アケール君】だよ」


 【スグ・アケール君】とやらになった。

 それは先端が丸みを帯びた出来損ないのナイフのような形をしてはいたが、その形状故、刺すことや切ることには向いていなさそうだ。


「……で、これはどうやって使うんだ?」


「そんなの簡単だよ。ここのボタンを押しながら、開けたい鍵穴に突っ込んで回すだけさ」


「お手軽過ぎて犯罪がはかどるな……」


 世の中の泥棒は喉から手が出るくらい欲しい一品だろう。


「ちなみに、それって千羽が自分で作ったのか? それとも買ったのか?」


「んーん。一品物オーダーメイドだよ。世界でここにしかない特別品さ」


 そう言うと、千羽は腕を組み自慢気にえっへん! と頷いた。


「なるほど。なぁ千羽?」


「あげないよ」


 まだ何も言ってないっつの。


「それって、作るのにどれくらいかかったんだ?」


 超形状記憶合金Z……だっけ? 聞いたことないし、なにより一品物だっていうんなら、かなりの高額品に違いない。

 そんな俺の思考を読んだのか、千羽はドヤ顔をしながら右手の指を三本立てた。


「さ、三十万んん!?」


「……そんな大金を一介の女子高校生であるこのボクが持ってると思うのかい?」


 ですよねー。


「んーーそれじゃあ……三万……とか?」


「三千円だよ」


 安ーーーーーーーーいっ!! 安い、安すぎる! 物売るってレベルじゃなさすぎる!


「三千円かぁ……いーなぁ。私も作ってもらいたいなぁ……」


「よかったら、ボクから言っといてあげようか?」


「……うん! お願い……!」


 よし、これからはチェーンもかけておこう。


「……はぁ。千羽がどうやって入ったのかは、まぁ理解できた。問題はお前だ、華菜乃。今日はどこから入ってきた?」


「ま、窓は割ってないよ……! このまえ彰君に怒られたばっかだし、割ったガラスを弁償するお金も無いし……」


「おぉ! やれば出来るじゃないか! それで? 結局どこから入ってきたんだ?」


「きょ、今日はね……?」


 褒められて嬉しかったのか、かぁっと顔が赤くなった華菜乃が指を差したのは玄関だった。

 ……ん? 玄関? 玄関は千羽が開けてたはずだろ。――あぁ、もしかして鍵を閉めたのか?

 そんなことを思いながら、立ち上がり玄関へ向かうとそこにはドアノブが『抜け落ちた戸』と、ドアノブ『だった物』が足下に落ちていた。


「またこのパターンかよ!!」


 乱暴にドアノブを拾い、華菜乃達が待つリビングへと足早に戻り、怒りに任せてリビングの戸を開けながら俺は叫んだ。


「華菜乃ぉぉ!!」


「ど……どうしたの?」


「どうしたもこうしたもないわ! ピッキングどころの騒ぎじゃないだろ、コレぇぇっ!!」


「え、えぇぇ? ダメ……だった……?」


「当たり前だぁぁぁぁ!!」


 窓ガラスより高い事は無いだろうけど、それでも結構な値段するんだぞ!!


「ちょっとアックン! 何もスドーも悪気があってやったわけじゃないんだから、そんなに声を荒げなくてもいいんじゃないかい!?」


「どっからどう見ても悪意の塊だろーが!! それともあれか!? 『ドアノブを握ったら勝手に取れた』とでも言いたいのか!?」


「な、なんで分かったの……!?」


「んなわけあるかぁぁぁぁ!!」


 ドアノブを握った瞬間に壊す人間なんて、数えるほどしか知らねぇよ!


「わ……わたし……」


「ど、どうしたのスドー?」


 華菜乃の顔が見る見る内に強張っていく。だけどそんな事は関係ない。今はそれよりもドアノブ(こっち)の方が重要だ!


「……こわ……て……ん」


「あぁん? なんだってぇ? 聞こえないぞー?」


 華菜乃が何か言っているがよく聞こえない。何だよ『こわてん』って。弁明があるならハッキリと、大きな声で言いなさい!


「だから……し……! わし……な……!」


「聞ーこーえーまーせーんー!!」


「私……壊してない……もん……!! ぐすっ……」


 ――――ぐすっ?


「やってない……! 私……やってないよぉ……!」


「ちょ、え? えぇぇっ!?」


 な、泣き出した!? 泣くってことは……本当にやってないのか?


「ぐすっ……ぐすっ……ひっく……」


 華菜乃の瞳から大粒の涙が次々と流れ落ち、卓袱台の上に小さな水たまりが出来ていく。


「大丈夫かい、スドー? ……アックン! 謝ってあげなよ! やってないって言ってるんだからちゃんと信じてあげないとダメじゃないか!」


 華菜乃の背中をさすり、慰めながら千羽が俺を見つめてくる。


「そ、そうは言っても……、華菜乃には数え切れないくらいの前科があってだな……」


「アックン!!」


 あぁ、もう!


「か、華菜乃! 疑ってごめん! ドアノブを壊したの、お前じゃなかったんだな! 本当にごめん! 許してくれ!」


「…………信じて……くれるの……?」


「あぁ! 信じてやるとも! だから泣きやんでくれ? なっ?」


「…………うん」


 華菜乃は泣きじゃくりながらも頷いてくれた。

 が、何故だろう。罪悪感が半端ない。


「あはは、涙でせっかくの可愛い顔が台無しだ。とりあえず、これで顔を拭きなよ」


「ごめんね……。ありがとう……チーちゃん」


 千羽が差し出したティッシュで華菜乃が涙を拭っていると、不意に誰かの着信音が鳴り出した。

 『デーンデーンデーン』と鳴る、このメロディーには聞き覚えがある。


「華菜乃……? もしかしてお前のスマホ、鳴ってないか?」


「……えっ? あっ本当だ……」


 エプロンのポケットからスマホを取り出し、何やら操作をした――かと思うといきなり立ち上がり、キラキラと光る涙をその目に残しながらも芯の通った声で、


「彰君……! 学校にドアノブあるって……!」


 と言った。


「――ドアノブあるの!?」


 続く




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