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友だちはへん人ばかり  作者: せい
第二話 朽葉千羽の華麗なる勝負
34/92

へん人No.3 朽葉千羽 その9

おはようごぜぇます!

長くなってしまいました……

 やれやれ、やっと普通のギャンブルらしいゲームに決まったか。『数当てゲーム』や『30ゲーム』なんて全然ギャンブルっぽくないゲームばっかだったから、最後も奇想天外なヤツかと思ってたからちょっと安心したぜ。


「じゃ、行ってくるよ」


「勝ってこいよ」


「ボクを誰だと思ってるんだい?」


 振り向きざまに可愛くウインクをし、が席に座る。

 その姿は、ただただかっこよかった。


「はァ……正直、俺が出るまでもないと思ってたんだがなァ。こうなったらしョうがねェ、いッちョ揉んでやるとすッかァ……!」


 既に席に座っていたリーゼントが、口角を上げながらニヤリと笑った。

 なんなんだこの余裕は?

 リーゼントの全身から不気味なオーラが漂っている――気がした。


「はいは~い♪ それじゃあルールの説明をするよ~。そうは言ってもほとんど変わらんけどね~。役はわかる――よね? 一番弱い役はハイカードで、一番強い役はもちろんロイヤル・ストレート・フラッシュね。それで、交換は一回まで。トランプは不正防止の為に新品をこっちで用意してあげるけん、それを使つこーてね。まぁ、使うって言ったけどシャッフルは三毛さんに頼むけん、あんまり関係ないんじゃけどね♪」


「あのー、もしかして三毛さんって……」


「うん♪ もしかしてもしかせんでも、あっこに立っとるオジサンのことよ」


「……………………」


 チラリと戸の前に立っている人に目をやると、店長さん(仮)じゃなくて三毛さんは照れくさそうに下を向いた。

 その姿は、ただただ変なオッサンだった。


「なぁ栖桐。これってツッコむべきだと思うか? 正直ツッコミたくてたまらないんだけど」


「ツッコンだら……負けじゃないかな」


「……ですよね」


 反応したら負けかなって思ってる。


「ん~? そんなに秋葉原くんはツッコミたいん~? えぇよ? 今日あったばっかりじゃけど、キミの顔結構好みじゃし……一夜の過ちを犯してもえぇよ?」


 両頬を押さえながら、首を左右に振る天野寺さん。栖桐が見せてくれたバージョンとは違って何か新鮮だ。ふむ、これはこれで――


「荒木くん……?」


「ギクッ!!」


 栖桐に睨まれた。あまりにもナイスタイミングだったから、思わず身構えてしまう。

 しかし、栖桐は相も変わらずジト目をこちらに向けていた。


「ちょ、ちょっと待った!! 今のは不可抗力以外の何物でもないだろ!?」


「それは分かってるけど……今、余計なことも考えてなかった?」


 ギクギクッ! な、なんで分かるんだよ!? エスパーですか? あなたはエスパーですか!?


「ジー……」


「ほ、ほら! 早く千羽の応援してやろうぜ?」


「ジー……」


 まだ見てるし。 


「盛りあがっとるところわるいけど――」


「いや、誰のせいだと――」


「そろそろ始めるとしよーかね♪」


 とりあえず、元凶である天野寺さんには謝罪と賠償を要求したかったが、食い気味に俺の言葉は遮られたので、黙って溜飲を飲むことにした。


「最終戦『普通のポーカー』! はっじめ~♪」


 ――そして、決勝戦の火蓋は切って落とされた。


 店長さん(仮)――じゃなくて、三毛さんか。三毛さんは棚に置かれていたトランプの箱を机の上に置き「…………確認してください」と言った。

 それは、どこにでもあるありきたりな箱だったが、未開封であることを証明するシールが貼ってあった。シールが貼られているということは誰もこの箱を開けていない。ってわけだ。

 三毛さんがベリっとシールを剥がし、軽快に十数回シャッフルする。そして、山を二つに分け、トランプの端を押さえながら、親指で弾き出した。

 見事なショットガンシャッフルだ。素人がやると、トランプに折り目がついたり、変な癖がついてしまうものだが、シャッフルし終えた山をみると、折り目どころか、僅かな癖すらもついてはいなかった。いい仕事しますねぇ~。


「や、やべえぇぇぇ! やべぇぇぇッスね、閃斗くん!! もう勝ったも同然じゃないッスか!!」


 リーゼントに配られたトランプを見てスキンヘッドが興奮していた。そんなにいい手札なのか? 初手で勝ちを確信する役……マークが全部一緒の『フラッシュ』? いや、それとも同じ数字を四枚集めた『フォーカード』か?


「黙ってろやすきとうォ」


「いやいや、いり君! これはもう勝ったって!」


 覗き込むようにリーゼントの手札を見たパンチも、かなり興奮している。この盛り上がりようは――まさか……『フルハウス』!?

 ふと、不安が胸をよぎった。

 千羽の手札を後ろから覗いて確認してみる。


「――ッ!」


 某麻雀漫画では、後ろに立っている観客達が主人公達の手牌を見て顔色を変えていたが、うん、今なら彼らの気持ちが分かる。あれは驚かずにはいられないよな。

 だって現にいま、千羽の手札には『ダイヤの4、ハートの5、ダイヤの6、スペードの7、クローバーの8』、つまり『ストレート』の役が初手で揃ってんだぜ?

 そりゃあ顔色変わるよ! ざわざわするわけだよ!

 だけど、アイツらの盛り上がりっぷりを見るに、ただのストレートじゃあ心細いよな。

 ポーカーは運も重要だけど、やっぱり勝負の明暗を分けるのは虚勢ブラフだ。相手がいかに強力な役を持っているとしても、勝負をさせなければ何も問題はないんだ。後は――アレを聞いておかないと。


「すみません、ちょっといいですか天野寺さん。質問なんですが、これって降りることは出来るんですか?」


「出来るけど、降りた時点で負けになるよ?」


 くそっ、それじゃあダメじゃないか。降りることができないんならやっぱり今の手札(ストレート)で勝負するしかない。千羽はどうするつもりなんだ?


「先攻は貰うぜェ、一枚だけ交換だァ」


 一枚だけ……? ってことはやっぱりいい手札なのか?

 固唾を呑んで見ていると、トランプを一枚裏向きのまま山の横に置き、三毛さんが渡したトランプを見て、再びリーゼントの口が歪んだ。


「さッきの手札じャあ、少しばかりこころもとなかッたがァ……いーいもんを引いたぜェ……!」


「へー、何を引いたんだい? よかったらボクに教えてくれないかい?」


 千羽が笑いながら聞いていたが、目は笑っていなかった。おそらく虚勢かどうかを確かめているんだろう。


「フッ、誰が教えるかッてんだよ。つーかよォ、お前、俺の彼女になる気はねェか?」


「はぁ?」


「……荒木君、あの人なに言ってるの?」


「いや、俺も何がなんだか……」


 言ってる事はわかるんだけど、思考が追いつかない。なんだ? コイツは何を言ってるんだ?


「まァ聞けや。つまんで言わせてもらうけどよ、俺はお前に惚れたんだ」


「はぁ!?」


 千羽が呆れたような顔でリーゼントを睨みつけた。が、リーゼントは意に介していないようだ。


「だからよ、この勝負で俺が勝ったら、そこにボケーっと馬鹿みたいに突っ立ってるでくの坊なんかほっといてよ……俺と来いや」


「――イヤだって言ったら?」


「実力行使しかねェよなァ、そりャあよォ。手の内を明かすのは面白くねェかもしれねェが、俺の初手は『ツーペア』だッた」


「ツーペア!?」


 後ろのあいつらは『ツーペア』であんなに喜んでたのか!? 脳内がハッピーすぎるだろ……。つーか、そんなヤツに負けた俺もよっぽどだよな……。


「それが、今の一枚で更に強化された――って言えば、お前や、頭の悪いでくの坊でも分かんだろ?」


「……けかい」


「あァ? なんか言ったか?」


「言いたいことはそれだけかい、って言ったんだよ! この時代錯誤野郎ッ!!」


「――んなッ!?」


 リーゼントは、鳩が豆鉄砲を食らったような顔で千羽を見ていた。


「全部だ」


「全部だァ!?」


「全部……交換してもえぇん?」


「そ、そうだよくちさん……! 全部交換しちゃったら……全部バラバラになっちゃうかもしれないんだよ……!?」


 千羽の発言に部屋中の誰もが驚いていた。もちろんそこには俺も含まれている。

 天野寺さんが三毛さんに目配せをし、三毛さんが慣れた手つきで、山から一枚ずつ裏向きに千羽の元へと渡した。

 しかし――


「千羽……? どうして見ないんだ?」


 千羽は配られたトランプを見ようとはしなかった。腕を組んだまま、目を瞑っている。


「これでいい」


「これでいいって、お前――手札すら確認しないなんて、ポーカーにおいては自殺行為に等しいぞ!? いや、そんなことは俺なんかより十二分に分かっているんだろうけどさ」


 俺は千羽が何を考えているのかさっぱりわからなかった。いったいどうしたいんだ?


「じゃあショー・ダウンと行こうかねぇ? 入井くんから手札を見せてもらおーかぁ♪」


「ほらよォ――俺の手札はこれだァ」


 リーゼントが放り投げるようにテーブルの上にトランプを置いたので手札を確認する。

 『ハートの8、ダイヤの8、ハートの(キング)、クラブの(キング)、スペードの8』……って、フルハウスだと!? フルハウスはストレートより二つも強い役だ。もし、あのまま勝負していたら――負けてたのは俺達だった。

 思わず「ふぅ……」と溜息をついてしまった。ひとまず胸を撫で下ろすも、危機はまだ去っちゃいない。千羽……お前、どうするつもりなんだ?


「じゃあ、朽葉さんの手札も見せてもらおーか♪」


 三毛さんが千羽の前に置かれた裏向きのままのトランプを一枚ずつめくっていく。

 そして――手札を見て、最初に声を発したのはリーゼントだった。


「あ……ありえねェ!? なんでだ!? ど、どうして……!」


「すごい……」


「あ、あぁ、俺も『ロイヤル・ストレート・フラッシュ』なんて初めて見た」


 千羽の前に置かれたトランプは『スペードの10、スペードの(ジャック)、スペードの(クイーン)、スペードの(キング)、スペードの(エース)』の五枚――R・S・Fだった。


「い、イカサマ――そうだ……イカサマだァ! こんなのイカサマに決まってやがる!!」


「イカサマ……? 寝言はその珍妙奇天烈で、サザエさんみたいな頭を直してから言いたまえ。キミも見てただろ? ボクはトランプに触れてすらいないよ。それでもキミは、ボクがイカサマをしたって言い張るのかい?」


「あ、当たり前だろォがァ!! い、イカサマでもしねェ限り……そんな役が完成するわけねェだろォがァ!!」


「ふーっ。キミは二つやっちゃいけないことをした」


 酷く狼狽しているリーゼントに向かって千羽が淡々と話し出した。


「一つ、ボクの実力を見誤ったこと。そして二つ、アックンを馬鹿にしたこと」


「ふ――ふざけんじャねェよ! しかもお前いま、実力つッたよなァ? イカサマしたんだろ? 教えろよ! 吐けよ!」


 机を叩きながら、リーゼントが身を乗り出しメンチを切った。

 下手をすれば、そのまま千羽に殴りかかりそうだった勢いだったので、いざとなったら身を挺してでも守るために、一歩前に出た。


「だからそんなこと(イカサマ)してないって言ってるだろ? さっきのアレもただの運任せさ。そんな馬鹿丸出しの頭でも聞いたことくらいはあるだろ? 『運も実力の内』ってね」


「ぐッ……! こんのアマァァァァ!!」


「やらせるかよぉぉぉぉ!!」


 苦虫を噛み潰したような顔をしたリーゼントが、千羽に向かって飛び掛ろうとしたのを寸前のところで腹部に向かってタックルし、食い止める。


「……天野寺サン、こういう人がいた場合はどうしてたんだい?」


「い~質問じゃねぇ朽葉さん♪ 三毛さ~ん?」


「…………了解しました」


 三毛さんが指を鳴らしながら、ズイっと一歩リーゼントに近づく。

 ただならぬ雰囲気を察して、ズイっと一歩下がるリーゼント。


「な……なんだよ、こ、こッちに来るんじャねェ!! お、おい! お前らもなんとか言えよ!」


 だが、スキンヘッドとパンチはすでに部屋の中にいなかった。

 どうやらリーゼントを置き去りにして逃げ出したらしい。


「あァァァァいィィィィつゥゥゥゥらァァァァ!!」


「じゃあ、ちゃちゃっとやっちゃて~♪」


「うわァァァァァァァァ!!」


 そして、リーゼントも部屋から消えた。


「決着じゃね~。勝者、ハーレムチーム代表の~朽葉さ~ん♪」


 パンっとひとつ柏を打ち、これでようやく俺達の予選が終わった。

 長い間戦っていたような気がするが、時計を確認するとまだ大会が始まってから三十分も経っていなかった。


「これが相対性理論ってヤツか……」


「アインシュタインに文句のひとつでも言いたくなったのかい、アックン?」


「まぁ……な」


 出来ればロマンチックな状況で使いたかったけれど、どう見てもそんなシチュエーションじゃないよな。


「はいは~い、予選も終わったことじゃし、そろそろ本番と行こ~かねぇ」


 よし、ここからが本当の戦いだ! 芦屋……お前の仇は絶対とってやるからな!



 続く

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