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友だちはへん人ばかり  作者: せい
第二話 朽葉千羽の華麗なる勝負
32/92

へん人No.5 天野寺薬 その2

先に謝っておきます。


ごめんなさーーーい!!

 自らのことを『主催者であり景品である』と言ったあまでらさんが、提示した勝負方法とは『数当てゲーム』というモノだった。

 彼女の雰囲気から察するに即興で作られたゲームのようだけど……問題はそこじゃない。『数える』対象に選ばれたモノが問題だった。


 ――――乳首。


 そう、それは乳首だ。(別名は乳頭とも言うらしいが……まぁ、ようするにビーチクです)

 こともあろうに、彼女は乳首を指定しやきやがったんだ。

 畜生! いったいどうやって数えればいいっていうんだ!

 脱がすか……!? いや、ダメだ。リスクがでかすぎる!

 だったらどうする? 触るか……? いや、それもダメだ。服の上からじゃ防壁が邪魔で触れることすらままならない!!

 考えろ……! 考えろ……!!


「はい、じゃあ答えが分かったら、このボードに書いてね〜」


 悩んでいると、天野寺さんが横からスケッチブックと油性ペンを机の上に置いてくれた。


「―――――ッ!?」


 そして、俺は『見て』しまった。

 その豊満な二つの丘によって生み出された『秘境』と呼ぶに相応しい谷を……いや、谷間シャングリラをッ!

 こいつは……『グレート』だぜ……!


「谷間は乳首にカウントされますか?」


 思わず馬鹿なことを聞いてしまった。いや、でも確認は大事なことだ。


「谷間……? ふふっ秋葉原くんったら中々面白いことを言うねぇ♪」


 悪戯っぽく微笑む天野寺さんに、思わず見惚れてしまいそうになった。やべぇ、大人の色気やべぇ。


「そりゃあそれだけ見事なモノを前にしたら、感想の一つでも言っちゃうわらばッッ!!」


 ――いきなり後頭部を殴られた。


「……いたた……ちょっと! 二人ともいきなり何するんだよ!」


「…………」


「…………」


 返事がない。え、なんで二人とも怒ってるの?


 拗ねている二人を見ると、どちらもカバンを装備していた。もしかしてさっきはカバンで殴られたのか? それにしてはかなりの衝撃だったような……


「ねぇ、もしかしてそのカバンに何か入れてる?」


「何も……入ってないよ……?」


「本当に?」


「うん……たまたま入ってた広辞苑と大辞林以外は何も入ってないよ……?」


「それーーー!!」


 通りで鈍い衝撃が後頭部を襲ったはずだよ! 痛いはずだよ!


「ち、さんは……何も入れてはございませんのことよね?」


 やべぇ、あまりのショックで言語が狂ってる。

 

「ボク? やだなーアックン。ボクのカバンには教科書と筆記用具しか入ってないに決まってるじゃないか」


「で、ですよね! いやー……ハハハ……」


「その代わり、そこに置いてあった麻雀セットで殴ったけどね」


「痛いはずだよ!!」


「……」


「ふんっ」


「えーー、また無視ですかーー?」


「……」


「……」


「…………さいですか」


 それにしてもよく耐えたな俺の頭蓋骨。普段からカルシウム摂っててよかった。やっぱり牛乳って大事だな。うん牛乳大事、ちょー大事。


「おい、まだゴチャゴチャやッてんのかァ? こちとらもうとっくに書いたぞォ」


 反対側の壁際に立っているリーゼントが片足を小刻みに揺らしながらメンチをきってきた。

 だからいつの時代の不良だよ! ……あ、でもこいつ等って負けたからコスプレをさせられてるんだっけ。

 だとしたら全部キャラ付けなのかもしれないな。

 そう思うと、途端に目の前にいる三人が滑稽に見えてきた。むしろ「可哀想に……」という同情の念さえ沸いてくる。


「あーごめんごめん、いま書くから」


 リーゼント達を手で制し、スケッチブックに向き合った。

 天野寺さん、なんて言ってたっけ……? 確かこの部屋にある乳首の数を数えろって言ってたよな?

 もう一度部屋をぐるりと見回す……。いま、部屋の中に居るのは俺を含めて八人だ。男が五人で女が三人。


「なんだ……考えるまでもないじゃないか」


 俺はスケッチブックに油性ペンで『16』と書きこみペンを置いた。

 だってそうだろう?

 男にも女にも平等に乳首はあるんだ。

 さっきは頭に血が登ってて気がつかなかったけど、答えは火を見るより明らかだったな。答えは『16』それ以外はありえないね。

 「ふぅ……」とため息をつき、天野寺さんを見ると目があったので、「オッケーです」という意味を込めてひとつ頷く。


「どうやらお互い書けたみたいじゃね〜。それじゃあ一斉にオープンしてみようか♪」


 天野寺さんが両手を前に突き出したのを合図に、俺とスキンヘッドがお互いのスケッチブックを見せ合う。


「な、なんだって!?」


「フッフッフッ……」


 お互いの回答を見て、驚愕したのは…………俺の方だった。


「『24』……だと?」


 スキンヘッドは、『16』と書いた俺を大きく上回った数字である『24』と書いていた。

 何で? どうして『24』なんだ!? この場にいるのは俺、栖桐、千羽、天野寺さん、店長さん(仮)、リーゼント三人組の八人のはずだろ!? 『8×2=16』だろ!? なのにどうして!?


「それじゃあ正解発表といこーかぁ。正解はぁ〜〜?」


 店長さん(仮)がどこからともなく取り出したドラムを使って、ドラムロールを叩きだす。もちろん、三毛猫ミケランジェロを肩に乗せたままだ。


「ジャン♪」


 ドラムロールが止まり、沈黙が流れる。

 いや、心配するな。どう考えても数は俺の方が正しいに決まってる……!

 そうさ、俺が間違っているわけないじゃないか! 乳首が三つ以上ある人間なんてそうそういないんだ!

 ん……? 人間ニンゲン……?



「あっ」



 馬鹿な俺はようやく気がついた。



「答えはすきとうくんの『24』でしたぁ〜!」


「よっしゃあああ!!」


 ――そうだ。あの時、天野寺さんはこう言ったんだ。『いまこの部屋に存在する乳首の数』って。

 あの言葉には女だけではなく、男だけでもなく、『猫』も含まれていたんだ……!!


「よォし!! よくやッた!! でかしたぞ隙頭ォ!!」


「アザース!!」


 あのスキンヘッドはそこまで看破してたっつーのか……

 モブのくせに……くそっ! 完全に俺の負けだ……!


「……スマン。ここで勝って、二人に楽をさせてやりたかったんだけど、失敗しちまった」


 壁際に立っている二人に向ける顔が無かった。

 面目がなさすぎるだろ、俺……!


「ま、正直言うとボクは負けると思ってたよ」


 へっ? 千羽さん、ナニイッテルノ?


「うん、私も負けると思ってた……」


 えっ? どうさんまで、ナニイッテルノ?


「じゃ、じゃあ二人とも分かってたのか?」


「うん……」


「ま、問題文を聞いてテンパりだした辺りで、九割方決定したかな」


「九割方!?」


 Oh……マジすか……信頼されてなかったのね……


「でも参ったなー。これであっちが一歩リードしちゃったし、ボクたちが勝ち進むには残り二試合を全勝しなくちゃいけないのかー」


「そうだね……ちょっとしんどい……かも」


 二人の顔が曇る。

 くそっ! 俺が乳首に気を取られてさえいなかったら……!


「ねぇねぇ、秋葉原くん」


 ちょんちょんと肩を叩かれたので振り返ると、天野寺さんが眼前に立っていた。

 ――近い。……いや、めっちゃ近い! 近い! 近いよ天野寺さん! そんなに近づかれると谷間がっ! 乳の谷のナウシカがあらわになりますがな!!


「秋葉原くんって彼女とかるん?」


「い、居ませんけど……」


「じゃあ、このあと暇よね? アタシとデートせん?」


「デぇぇぇトぉぉ!?」


 な、何を突然言い出すんだ!? デートだって!?


「そっ、デートよ♪ 秋葉原くんの連れてきたお友達さんはやる気ないみたいじゃし、あんなんなら次の勝負で決着がつくと思うんよ〜♪ じゃけん、終わったらお姉さんとデートしようやぁ♪」


 そ、そんなにくっつかれるとナウシカが! ナウシカが当たりまんがな! っていうかもう当たってまんがな!!

 っていうか、そのナウシカと猫撫で声は反則だわ!

 いまの状況で『NO』と言える男子高校生がいるだろうか?

 否! 答えは『NO』だ!


「――って、うわっ!?」


「荒木君……?」


「なにしてるんだい……?」


 ナウシカの感触を楽しんでいると、ぐいいっと、制服を思いっきり引っ張られた。

 連れ戻してくれた二人は口元こそ笑ってはいたものの、二人の瞳はくすりとも笑っていない。

 こ、怖い……!


「こうなったら一時休戦だ、栖桐さん」


「そうだね……共同戦線を張ろう、朽葉さん」


 何やら不穏な空気が流れてはいたが、二人とも笑顔だけは崩さなかった。

 あと、どうやら二人とも一時休戦をして、さらに共同戦線を張るらしい。

 いったい何に……あぁ、そういうことね。


「それじゃあ次は〜〜? ……おっ、また何も書かれてないボールじゃねぇ♪ それじゃあ次は……よし、『30ゲーム』にしようかぁ」


 萎縮する俺をよそに、次のゲームが決まった。



 続く 

  


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