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友だちはへん人ばかり  作者: せい
第二話 朽葉千羽の華麗なる勝負
31/92

へん人No.5 天野寺薬 その1

すみません、長いです。

「やー、よぉ集まってくれたねぇ。見知った顔に、新顔もるけぇ、嬉しいわぁ♪ あ、ちなみにアタシがこの大会の主催者であり、景品も兼ねとるあまでらくすりね。よろしく〜♪」


 豊満な胸を支えるように腕を組みながら、自称主催者兼景品である天野寺は陽気そうに答えた。

 そして、自分がやった事を俺達にも求める様な視線を投げかけてきたので、俺も名乗り上げる事にした。


「俺の名前は荒木です。それでこっちの大人しそうなどうで、こっちの元気そうな娘がくちです」


「ちょっとアックン? ボクの事はって呼ぶ様に。って約束したばっかりじゃないか」


 紹介のされ方が気に入らなかったのか、上腕二頭筋めがけて数回チョップされた。

 とはいえ、女の子(それも全力じゃない)のチョップくらいじゃ俺の上腕二頭筋はビクともしないので、ビシッ! ビシッ! とチョップを受けつつも俺は話を続ける。


「約束もなにも、初対面の人に紹介するときって普通は名字だろ?」


「そ、そうだよ朽葉さん……! それくらい常識あたりまえだよ……?」


 栖桐も千羽を注意した。


「ちぇーー」


 注意された千羽がそっぽを向いてしまった。なんつーか、こういう所を見るとやっぱり子供っぽいな。


「……チッ」


 正面に座っている奇抜な髪型をした三人組から殺意の波動をヒシヒシと感じたが、反応すると面倒なのでスルー。


「ふむふむ。栖桐さんに、朽葉さんに、秋葉原くんじゃね。今日はわざわざ来てくれてありがとう。それじゃあ早速ルールの説明を――」


「あのー」


「ん? まだルールの『ル』の字もーてないけど、何か質問でもあるん?」


 不思議そうに首を傾げられた。


「いやーその、何て言うかですね。天野寺さん、いま俺の名前だけ間違えませんでした?」


 つーか間違えたよね? 秋葉原って言ったよね?


「ヤダなー荒木くん。そんなわけないじゃーん。私の売りは記憶力の高さよ? 円周率だって余裕で三桁言えるんよ? そんなアタシがたかだか数文字程度の名前を忘れるわけないと思わん?」


「で、でも確かにさっき秋葉原って……」


「んで、ルールの説明じゃけど――」


 自然ナチュラル(スルー)したッ!?


「聞き間違えじゃないよね!? いま俺の名前だけ秋葉原って言ったよね!? 東京にある電気と萌えに溢れた地名で呼んだよね!?」


「あ。あれ持ってきてー」 


 天野寺さんがそう言うと、店長さん(仮)がいそいそと動き出した。

 それよりもまた無視かよ……なんだろう。この人は無視をするのが三度の飯より好きなのかもしれない。


「……おい、うッせェぞ」


「……スイマセン」


「黙ッて聞いてろォ」


 リーゼントに一喝されてしまった。

 えー。ツッコミくらいさせてくれよ。どんだけ必死やねーん! そんなに天野寺さんにご執心なのか? そんなにあの豊満なバディを独占したいのか?


「それじゃあ、一回しか言わんけんよー聞いてね」


「無視かよ!」


 反応してくれる事を祈っていたが、やっぱり無視された。しかも今度は皆に。せめてもうちょっと構ってほしいんだけどなー。

 好きの反対は無関心なんだよ? 皆知ってる? ……いや、別にここにいるメンバー全員から好かれたいってわけじゃないけどさ。


「今日はいつもより参加者が多いけん、いつもなら一人ずつ相手にするんじゃけど、流石に今日はたいぎぃ(めんどくさい)けん、そっちに居る負け犬チームと」


「誰が負け犬だコラァ!!」


「そっちに居るハーレムチームで勝負してもらって、勝った方がアタシと勝負出来るってことで」


「無視すんなやァ!!」


 抗議を無視されたことによりリーゼントが怒っていたが、やっぱりスルーされてた。

 つーか、さっきのやりとりを見てたら分かるだろうが。


「それよりも……ハーレムってなんぞや! もうちょっとマシな名前があるでしょうが!」


「どうかした? 秋葉原くん」


「俺の名前は荒木です! あーらーきーッ!!」


「あーごめんごめん。それで? どうかした?」


 しらばっくれやがった! そろそろ怒っていいかな? いいよね?


「チーム名ですよ! もっとマシな名前あったでしょ!? 例えば『両手に華チーム』とか、『俺の友達がこんなに可愛いわけがないチーム』とかさぁ!」


「もしかして気に入らんかった?」


 「当たり前です!」という気持ちを込めながら激しく頷くと、天野寺さんは胸を両腕で支えながら「うーーん」と考えだし、「そうだ!」何かを思いついたように手を軽く叩いた。ちなみにその衝撃でナイスなバストが揺れていたのは言うまでもない。


「『秋葉原修羅場チーム』ってのはど――」


「やっぱいいです! よーし、栖桐! 千羽! 頑張ろうぜ! 俺達が力を合わせれば勇気百倍だ!」


 もう『ハーレムチーム』でいいよ……『負け犬』って名付けられるよりかはマシだし。


「……チッ。イライラするなァ」


 俺がチーム名に妥協すると同時に、再び対面の方々からお熱い視線(殺気)をヒシヒシと送られたので天野寺さんをならって無視する事にした。気にしない気にしない、一休み一休み。


「んで、勝負方法はいつもの通り、この箱の中から無作為にアタシが選ぶけん、代表者はそれに従うようにね。公平じゃろ?」


 そう言うと天野寺さんがパチンと指を鳴らし、扉の横に立っていた店長さん(仮)が三十センチ四方の箱をテーブルの上に置いた。

 そして再び扉の横で止まった。どうやらあそこが定位置らしい。


「うーん……どこかで見たことあるような……」


 店長さん(仮)とは今日初めて会ったはずなのに、何故か俺は既視感デジャブを覚えた。

 まぁそうは言っても、既視感とは脳が起こす錯覚の一つらしいので、あまり深く考えることはしないようにしよう。


「ちなみに……どんなモノが入ってるんですか……? 出来れば参考にしたいんですけど……」


 見ると、栖桐が天野寺さんに質問をしていた。


「うーん、教えてあげたいのは山々なんじゃけどねぇ。それをーたら面白味がなくなると思わん?」


「ダメ……なんですか?」


 栖桐が宝石のような瞳を潤わせながら懇願していたが、天野寺さんには効果がないようだ。


「栖桐……それが通用するのは俺達みたいな健全な男子と一部の健全じゃない女子だけだぞ」


「……? 何のこと……?」


 首をこてっと傾げ、唇に指を当てる栖桐。

 ……めちゃめちゃ可愛い。

 栖桐が裏であんな事をしていなかったら、確実に恋に落ちる自信があった。


「ヘルメットが無かったら即死だったな……」


 もちろんヘルメットなんてつけてない。これはただの比喩。


「だ、大丈夫……!? 私……何かした……?」


「い、いや……大丈夫」


 自覚していない……だと……? 無自覚のまま、端から見ればブリっ子ともとれる行為を平然とやってのけたのか!?

 どう……恐ろしい子っ!!

 だとしたら、だとしたら尚更ここで教えてやらないと! 分かりやすく教えてやらないと! そうしなければその内、周りの女子達から孤立するかも……! でもどうすれば……どうすれば手短に教えられる……? ……ハッ! ……そうだ! (ポー)ケモン! (ポー)ケモンだ! あれなら俺でも栖桐に分かりやすく教えられることができる!


「うおぉぉぉぉぉぉ!」


 脳内のコンピューターをコンマ四秒で起動させ、コンマ六秒で最適な文章を作成する。そして、俺は栖桐に相性が如何に重要かということを教えてやることにした。


「分かりやすく言うとだな、(ピー)カチュウがデ(ィー)グダにでんきショックを使っても効果がないだろ? あれと一緒だ。だからな、栖桐。お前があの人にいくら可愛くアピールしても、無駄……そう、『無駄無駄ァ!』なんだよ」


「……? (ピー)カチュウは聞いたことあるけど……ゴメン……ゲームやったことないからわかんないよ……」


「…………」


 ――――俺、撃沈。


「まったく……見てられないよ」


 撃沈した俺をよそに、千羽は軽く溜息をつくと、天野寺さんに向かって「これはフェアじゃないよ」と言い放った。


「……と、ーと? 何がフェアじゃないん?」 


 片目を瞑り、聞き返してくる。その顔はどこか挑発的だ。


「ボクたちはそこに座ってる三人とは違って()()だ。多少なりとも勝負内容を知ってる彼らの方が有利だと思う。だからこれはフェアじゃない、アンフェアだ」


「あれ、もしかして朽葉さんってば気づいたん? 負け犬チームが初めてじゃないって」


 天野寺さんがニヤリと笑う。俺は千羽の言っていることがイマイチピンと来なかった。

 つまり、どういうことだってばよ? 話についていけない俺をよそに、千羽が話を続ける。


「まぁね。彼らの言動や、時代錯誤な格好を見てピンときたよ。おそらく……二回目か三回目といった所じゃないかな?」


「あ……! あああああッ!!」


 そのとき俺に電流走る……! 点と点が繋がり、一つの線となった!

 言ってた! 確かに言ってたよ!!


「そうか! だからこの人達はこんなコスプレをさせられてるのか!」


 千羽の洞察力に、思わず目を見開きながら口に手を当て『ざわ……ざわ……』してしまった。

 これが某ギャンブル漫画の一コマだとすれば、俺の背景には数多の雷が書かれているはずだ。


「……ッチ、そーだよ。俺らは今日が二回目だ」


「前回は」


「ボロ負け」


「言うんじャねェよ!」


 三人組の反応を見るに、千羽の推理は当たっているようだ。くち……恐ろしい子っ!


「なるほどね~。じゃあーよく気がついた朽葉さんへのご褒美として、今回だけは特別に教えたげる♪」


 そう言うと、天野寺さんが机に置かれた箱に手を突っ込み、中から一つのカラーボールを取り出した。

 ボールには『ブラック・ジャック』と書かれている。


「この箱の中には二十個のボールが入っとって、それぞれに名前が書いてあるんよ。まぁざっくりーとポーカーとか、花札とか、バカラとか、ブラックジャックとかじゃね」


「なるほどね〜」


 いかにも『知ってました』と言わんばかりにしゅこうしてみせたが、たび殺気を孕んだ熱烈な視線を感じたので、黙って聞くことにした。

 なんでそこまで目の敵にするのさ! わけがわからないよ!


「まぁそれとは別に、何も書いてないボールも入っとるんじゃけど、もしそれを引いた場合はアタシが独断と偏見とその時の気分で決めさせてもらうけぇね♪」


 そう言うと、天野寺さんは先ほどのボールを箱に戻し、五〜六回ほどシャッフルしてから、再度ボールを取り出した。


「あ、ごめんけど一発目から何も書いてないボールじゃわ〜」


「言ったそばから!?」


 割合どうなってんの? すっげぇ確率……なのかな? ともかく聞いてみないと。


「あのーボールの割合って――」


「う〜〜ん、それじゃあ、一回戦目は『数字当てゲーム』ってのにしてみよっかぁ♪」


 またスルーかよ! いいよ……もう慣れたし……


「それじゃあ、両チームから勝負する人を選んでね〜」


 ニコニコと笑いながら両手をあげる天野寺さん。

 ん? もしかしてもう始まってるのか?


「よし、それじャあこッちからはすきとうが出るぜ」


 負け犬……もとい、リーゼント達を見るとスキンヘッドを残して、後の二人が壁際まで下がっていた。

 なるほど、勝負するプレイヤー以外は後ろで見てるのか。


「どうする……?」


「ボクが出ようか?」


 二人が聞いてくる。だが、俺の心は決まっていた。


「ここは俺に任せてくれないか」


 まずは相手の手の内を知る必要がある。それに俺がここで勝っておけば、二回目に戦うであろう栖桐か千羽が大分楽になる。

 だから、ここはなにがあっても俺が先陣を切るつもりだった。


「分かった……頑張ってね。荒木君」


「健闘を祈ってるよ、アックン」


 俺の意図を分かってくれたのか、二人が素直に壁際に移動してくれた。ありがたい。


「二人とも準備はできたかね? それじゃあ一回戦! 『数当てゲーム』開始するよ〜! お題は『いま、この部屋に存在する乳首の数』! レディー・ゴー!」


「はぁぁぁぁぁぁ!?」


 俺の声は、店長さん(仮)が鳴らした金色のゴングによってかき消された。



 続く



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