へん人No.1 芦屋春日 その2
アキラです…………先生がちゃんと仕事をしてくれんとです。
アキラです…………先生に世話を押しつけられたとです。
アキラです……アキラです……アキラです…………。
ホストみたいなスーツを着てスポットライトを浴びながら、右斜め下六十度の角度でひたすら不条理を呟くヒロシみたいな気分だった。
だって、だってさ! いきなり初対面の人――しかも女子――の面倒を見ろって言われるんですよ!? そりゃあんたヒロシにだってなりますよ!
だいたいナマ先生もナマ先生だよ! 教師なんだから生徒を導いてくださいっての!
すると、不意に頭が重くなった。
誰だよ俺の方に手を置く奴は……同情するなら代わっ――
「荒木……辛いようなら俺が代わってやってもいいんだぜ?」
振り向くと芦屋が白い歯を輝かせながらこれ以上はないと言わんばかりのイケメンフェイスで俺に微笑みかけていた。
やだ……何このイケメン。
俺が女だったなら抱かれてもいいレベ――
「転校生ちゃんにどんなセクハラしよっかなぁー? 教科書を使ってあーんなことやこーんなことを……グフフ……グフフフフ」
「自重しろやっ!!」
「ぬわーーーーーーーー! 目がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
何をされたのかは想像にお任せします。
危ない危ない……。危うくイケメンフェイスに拐かされて邪な考えを持つ芦屋の毒牙に、罪もない転校生をかける所だった……!
はぁ、しょーがない。初対面の――しかも女子――人に話しかけるのは全力で気が引けるが俺がやるしかないみたいだな。
と、なればファーストインプレッション、つまり第一印象が重要になってくるわけだが……うーーん何がいいんだろう。ムーンウォークからのポゥ? コーラを一気のみしてゲップをせずに山手線の駅名を言うあれ?
「あ、あの。私の名前は栖桐華菜乃といいます。よ、よかったらあなたのお名前を教えてくれませんか?」
しまっっったーーーー! 考えが煮詰まる前に挨拶されてしまったーーーー! 考えろ! 考えるんだ俺っ!
『荒木……私の声が聞こえますか荒木……』
はっ! 頭の中に声が聞こえる……気がする。 あなたは誰ですか!? 俺に何を伝えようとしているのですかっ!?
『荒木……逆に考えるのです。伝わらなくてもいいや、と考えるのです。そうすればきっとあなたの誠意は相手に伝わることでしょう』
なるほど! あげちゃってもいいさ。の精神ですね! よし、それなら俺が取るべき選択は一つだ!!
「俺の名前はアラキー・D・ルフィ! 海賊王になる男だ!!」
ドン! と、背景に文字が浮かんでいる気がする。
決まった……これは完全に決まった! これはもう完膚無きまでに決まったな!
『プッ、ククク……』
ん? なんで笑ってんの? 今のは確実に転校生の心を掴んだだろ! ハートキャッチアラキュアだろ!
「あーーーーはっはっは!!!! いくらなんでもそりゃないだろ荒木ーーーー! ヒーーーー腹いてーーーー!」
「へっ?」
我に帰った俺が見たのは腹を抱えて大爆笑している芦屋とクラスメイト達だった。
「Oh……」
見れば転校生である栖桐も手で口を押さえてクスクスと笑っていた。
は、恥ずかしいぃぃぃぃぃぃぃぃ! 恥ずかしすぎるわぁぁ! 凄まじい勢いで俺のライフポイントが削れていた、やべぇ! ライフ尽きそう!
何か人として大事な物を失った気がするが……
うん、よしとしよう。よしとしようじゃないか。
俺の心と体を投げ打った一世一代の一発ギャグはドン滑りしてしまったけれど、転校生の緊張を解す事が出来たのなら何よりだし、それに俺たちの学園生活はあと二年も残されているんだ。
うん、その内きっといいことあるさ…………あるよな…………あるよね?
「あ、ちなみにさっきのアラキー・D・ルフィの下りムービーとっといてやったからな荒――」
「フンッ!!」
「目が、目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
続くっ!




