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友だちはへん人ばかり  作者: せい
第二話 朽葉千羽の華麗なる勝負
23/92

へん人No.1 芦屋春日 その5

おひさです!

「失礼しまーす」


 一時間目の授業が終わったので、俺は朝のHRで先生に言われたとおり、職員室へと足を運んでいた。


「おー、荒木。こっちだこっちー」


 職員室の戸を開けたところで、俺に気がついたナマ先生が軽く手招きをしたので、少しだけ早歩きをしながら先生の席へと向かう。


「まー座れー」


 と言いながら、隣の席から教員用の回転イスを俺の前に出すので、少しだけ用心しながら座る。


「……? どうしたー? そんなに萎縮してー」


「……萎縮してるつもりはありませんけど。で、いったいどうしたんですか先生? 俺……何かしましたか?」


 もしかして昨日、学校をサボって一日中遊んでいた事が、バレてしまったのだろうか?

 何事に対しても――もちろん生徒の事に対しても――無気力、無干渉を信条モットーにしているナマ先生のことだから、サボった件で怒られるとは到底思えないが。


「ん? あー違う違う。昨日お前が学校をサボったことをとやかく言おうとは思ってないぞー」


「え、そうなんですか?」


 それじゃあ、俺はどうして呼び出されたんだ? 昨日のサボり以外で、呼び出しをくらうような事はしていないつもりだ。

 お咎めが無かった事による安堵感と、何を言われるのだろうという、疑念がほぼ同時に沸き上がった。


「荒木は、三丁目の奥にすたれたゲームセンターがあるのを知ってるかー?」


「ゲーセン……ですか?」


 俺の言葉を聞いて、ナマ先生がこくん、と頷く。 


「聞いたことないですね。その……廃れたゲーセンがどうかしたんですか?」


「どうやらなー、噂によるとそこで、不定期にギャンブル大会なるものがな、開かれてるらしいぞー」


「は、はぁ……」


 ギャンブル大会……。それと、俺が呼び出された事とどう関係があるんだ?

 先生の言葉を理解できず、俺の脳内には『?』マークが増殖しだしていた。


「それが……どうかしたんですか?」


「いや、知っておいて損はないと思ってなー。まぁ今ここで私が伝えなくても、お前の事だからその内嫌でも耳に入ってくるとは思うがなー、とにかく三丁目の奥だー。赤い看板が目印だからそこを目印にするといいぞー」


「…………? わ、わかりました」


 ナマ先生が、イマイチ何を言いたいのか分からなかったが、とりあえず頷いておいた。


「おー、じゃあ教室戻っていいぞー」


「はぁ……失礼しました」


 ナマ先生は結局、俺に何を伝えたかったのだろう? 謎は深まるばかりだったが、これ以上話していると休憩時間が終わってしまいそうだったので、俺は足早に職員室を去った。





「あ、おかえり……荒木くん」


「ん、ただいま」


 職員室から戻り、自分の席についたところでどうが話しかけてきた。


「次の授業――なんだっけ?」


「二時間目は……現国だけど、今日は自習なんだって」


 栖桐が指を差す方向を見ると、教室の黒板に白チョークで『自習ッ!!』と書かれていた。


「教壇の上にプリントがあるから……それさえ終わらせちゃえば、後は自由なんだって」


「そっか。わざわざ教えてくれてサンキューな」


「えへへ……」


 すると、授業の開始を告げる昔ながらのチャイムがスピーカーから流れてきたので、俺は教壇の上に置かれたプリントを三枚だけ取り、栖桐とあしに渡した。


「すまないわね」


「…………」


「なん――なによ?」


「お前……いつまでそのコスプレしてるつもりなんだ?」


「別に。そんなのお――私の勝手でしょ」


「別に。ってお前なぁ……」


 芦屋がこの格好で登校してから一時間ほど経つが、クラスの連中からは、相変わらずの目でチラチラと見られ続けている。

 どうして芦屋がこんな格好と口調を続けているのか、不思議でたまらなかったが、俺は友人がそんな目で見られ続けていることが、段々と耐えられなくなってきた。


「……芦屋。お願いだからそろそろ事情を話してくれないか? 俺たち……友達だろ?」


「…………そうね。いや、そうだな」


 そう言うと芦屋は、シャーペンを机の上に置き、頭に付けていた黄色いリボンを外しながら語り出した。


「ま、単刀直入に言うとだな。俺は負けたんだ」


「負けた?」


「あぁ。昨日、とある情報を入手してな。荒木は、三丁目の奥に廃れたゲーセンがあるの知ってるか?」


 本当は、ついさっきナマ先生から聞いたばかりなのだが、俺が「知ってる」と言う前に再び語り出したので、黙って聞くことにした。


「あそこのゲーセンはな――――『出る』んだよ」


 意味深に言葉を強調する芦屋。


「出る……って、もしかして幽霊か?」


 出る、だって? 芦屋コイツは何を言ってるんだ。あそこのゲーセンではギャンブル大会が行われてるんだろ? 幽霊が出るなんて、ナマ先生は一言も言ってなかったぞ?


「バーカ。幽霊なんかでねぇよ。あそこに『出る』のはな…………綺麗なお姉さんだ」


「フンッ!」


「うわらばッ!!」


 あ、つい足が出ちゃった。


「って、いてぇじゃねーか! すねを蹴るのはやめろや!!」


「いやぁ、今日は一段と防御力が低そうだったから、つい」


「ったく、つい。で済ますなよ。……まぁそれで、だ。俺は昨日、情報屋からごくにある情報を入手したんだ」


「その情報ってヤツが、ゲーセンとお姉さんとお前のその格好と、どう繋がってくるんだ?」


「まぁ、人の話は最後まで聞きたまえよ、ワトソンくん。なにやらアソコのゲーセンにはな、勝てば何でも言うことを聞いてくれるお姉さんが、たまーに出没するらしいんだよ」


「うん、だいたいわかった。わかったから、お前はもう口を開くな」


「人の話は最後まで聞けよーッ!」


 つまり芦屋は、そのお姉さんと勝負して負けたから、こんなコスプレをさせられているってことか。把握した。


「ちなみに、そのお姉さんにお前が勝てた場合は、何をしてもらうつもりだったんだ?」


「何って、そりゃもちろん×××で、――自主規制――な事に決まってるだ――」


「オラァ!!」


「ゲフゥッ」


「言わせるかっての!」


 頭に拳骨を食らった芦屋が悶絶していたが、コイツのタフさは折り紙つきなので、苦しむ芦屋を尻目に俺は事件の概要を整理した。

 まぁ、つまりは下心を持った芦屋がお姉さんとの勝負して、返り討ちにあっただけの事みたいだ。大方、コスプレは勝負に負けたからその人に着させられたのだろう。


「やれやれ……で? 何で勝負したんだ?」


「……?」


 俺の言葉を理解出来ていないのか、芦屋は眉を寄せ、首を傾げるので、俺は更に言葉を付け足す。


「勝負の内容だよ、な・い・よ・う。それがわからんと対策の立てようが無いだろ? 俺がお前の仇討ちをしてやるからさ。なんのギャンブルで勝負したのか、教えろよ」


「あ、荒木ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


「うわっ!!」


 感極まったのか、芦屋が俺に抱きついてきた。


「き……きききききき、キマシタワー!!!!」


 奇声が上がっている方へ目をやると、俺たちのやりとりを見ていたのか、ふじよしが赤いフレームのメガネを激しく上下に動かしながら、とち狂ったように興奮していた。


「荒木くん……私とは遊び……だったの?」


「いや、遊びどころか、まだ何も始まってないよね!?」


「酷い……よ……」


 しくしくと泣き出した栖桐を見た、クラスの男子と女子達から殺意をはらんだ視線を向けられ、体中に穴が空きそうになる。


 こういう時は……いや、こういう時こそ……!


「あー!? あれはなんだー!?」


 窓の外を指さし、皆の視線が何もない空へと向けられた瞬間に、俺は引っ付いていた芦屋を引き剥がし、教室を飛び出した。



 続く


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