へん人No.1 芦屋春日 その4
久しぶりの登場ですね!
「よーし、他に休みのやつはいるかーいたら手を上げろー」
「いや無理だろ」
いつもの如く、ダルそうに言葉を吐き出しながらナマ先生が出席簿を教壇に置いた。どうやら芦屋以外の生徒は休んでいないらしい。
「先生。結局のところ芦屋は休みなんですか?」
「んー? あぁ、どうなんだろうなー? 学校には連絡来てないし…………まぁぶっちゃけどうでもいいけどなー」
「教師にあるまじき発言は慎んでください!」
いくらなんでも無関心すぎだろアンタ! もう少し生徒に関心を持ってください!
「とりあえず芦屋にはあとで私から連絡を入れておくので、このままHRに移るぞー」
はぁ、先生の無関心っぷりにも困ったもんだな。しかし芦屋のやつどうしたんだろう? 欠席すること自体珍しいってのにその上、無断欠席までするなんて。
「あとでもう一回メール送ってみるかなー」
「それならもう一度、私が文面を考えてあげましょうか?」
赤いフレームの眼鏡をキラリと光らせながら、委員長の藤吉が戯言をほざいていたが……反応したら負けだと思ったのでスルーした。「なんとか言いなさいよー」と声が聞こえてきたがこれもスルー。
「あの……先生がこっち見てるよ……?」
栖桐の声を聞き慌てて教壇に立っているナマ先生の顔を見ると、眉間に数本の皺をよせ「これ以上騒いだら生徒指導室に連れて行く」という意味を含んだ目で俺た――いや、俺だけを睨んでいた。えー、騒いでたの俺だけじゃないですやん。
「それじゃあ今日の連絡事項だー。ここ最近、校外で現金や物品を賭けた賭博行為が行われていると学校に連絡があったー。言うまでもないが日本は法治国家だーそういう賭博行為は見つかり次第、国家公務員であるお巡りさんに捕まるからなー」
おぉ、ナマ先生がまともなことを言っている!
「もし、どーしてもやりたいって言うヤツはお巡りさんの目の届かない所でやるか、現金や物品を賭けることはしないようになー。ちなみに……もし、お巡りさんの御用になることがあっても先生は一切合財責任をとらないからなー」
やっぱりいつも通りだったー! 本当キャラがブレませんね、ナマ先生! どうしてそんな姿勢で教師を続けていられるのか不思議でたまりませんよ。
「質問はあるかー? ないなーそれじゃー私は職員室に戻るから――」
「いやいやいや! もう少し質問と回答に割く時間を俺たちに下さいよ!」
「えーだって面倒くさいじゃーん」
「ナマ先生ェ……」
それにしてもギャンブル……か。子供の頃はいつも父さん達とドンジャラしたっけ。おかげで麻雀も打てるようになったけど、周りに麻雀を打てる人がいなかったから「どこ行く何する? 麻雀しよう!」って言って友達にドン引きされたなぁ。
「黒歴史だなぁ……」
「黒……歴史?」
栖桐が首を傾げて聞き返してきたが、黒歴史の意味を説明するのも元ネタを説明するのも面倒だったのでスルー。無視された栖桐が頬を膨らませ俺を睨んでいたがここもスルー。
すると、教室の後ろ側の戸がガラガラガラ……とゆっくり開きクラスの全員が開かれた戸に注目した。
「…………」
「あ、芦屋!? お前来るんなら連絡くら――」
HRの終わり際に入ってきた人物は俺の友人である、芦屋春日だった……のだが、俺達はその姿を見て目を皿のようにした。
「…………」
足早に歩き、俺の前の席に座る。
「……先生、出席をお願いしま……するわ」
す、するわ!? 芦屋の言葉遣いに教室中がどよめいた。え、なんなのそのキャラ!? 一日でキャラが変わりすぎだろ!
「おー、ギリギリセーフだな芦屋ー。それじゃあ改めて出席とるぞー。えー芦屋ーー」
「…………」
……? な、なんだ? 自分から出席をとるようお願いしておいてどうしてなにも言わないんだ? ほら、何も言わないからナマ先生が目に見えてイライラしだしているじゃないか! 頼むから早く何か言ってくれよ!
「スゥーー……ハァーー……」
すると、芦屋は何かを決心したように大きく深呼吸をした。な、なんだ? いったい何をするつもりなんだ?
「小中東中出身、芦屋春日、ただの人間には興味ありません。この中にサイヤ人、ネコ型ロボット、悪魔の実の能力者、幽波紋使いがいたら私のところに来なさい! 以上!」
「色々アウトーー!!」
そう、遅刻寸前のところで教室に入ってきた俺の友人である芦屋春日は、何を血迷ったのか某SOS団の団長様のコスプレに身を包んでいた。
「つーかさ芦屋! そこは『宇宙人』『未来人』『異世界人』『超能力者』だろ!? なんだよそのアレンジ!!」
「お……私なりの配慮よ。文句ある?」
「あるわーー! 文句と突っ込みがありすぎて困るわー!!」
「突っ込み? その話……詳しく聞かせてもらおうかしら」
「やめろ! ただでさえカオスな事になってるっつーのに乱入してくるんじゃねぇ!」
「あら、ちゃんと乱入代の百円は払ったわよ?」
「人をゲームの筐体みたいに言うんじゃない! それにその百円はどこに投入したんだ!? 俺はもらってないぞ! …………って、やめろ! 俺をそんな目で見つめるなぁ! 俺にそんな趣味はないからぁ!」
「荒木くんって……女装男子が好き……なの……?」
ほら、早速誤解しちゃってるじゃん! いやいや栖桐さん、俺はそっちの趣味なんてないからね? だからそんな憐れむような目で見るのはやめてね?
「まぁー今日はギリギリセーフだってことで特別に出席扱いにしてやるけどなー芦屋。次はないからなー?」
「わかったわ」
「ナマ先生ェ……」
「あと、荒木はあとで職員室に来るようにー」
「ナマ先生ェーーッ!!」
「よーし、それじゃあそろそろ次の授業が始まるからなー。準備とかちゃんとしとけよー」
このあと、ナマ先生が教室を出るまでの間に十三回「何かの間違いですよね!?」と繰り返し聞いたけど、ナマ先生は頑として首を縦に振ってはくれなかった。
続く




