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家
しばらく間を置いて、フィアが遠慮がちに話しかけてきた。
「ねえ…シュート、あなたはこれからどうするの?」
「えっ?」
思わず間抜けな声をあげてしまった。
「考えてないの?」
「まあね…」
(どうしよう…こっちの世界に来てからどうするのか全く考えていなかった…)
この世界では家も、お金も無い。かといって「フィアの家に住ませて下さい」なんて都合のいい事を言えるはずがない。
だが…
「じゃあ、私の家に住みなよ?」
「いいの?」
まさか、フィアの方からそう言ってくれるとは思わなかった。
(いいのかなぁ…)
「いいよ。だって一人暮らしなんだもん」
ニコリと微笑むフィア。
「でもなぁ…フィアに悪いよ…」
その笑顔に若干照れながら俺はそう答える。
「いいのいいの私が決めたんだから」
もうこの話は終わり!とばかりに、フィアは家から外へ…
「ちょっとどこ行くの?フィア」
「私は買い物にいってくる。それまで大人しくしていてね」
「わかった」
こうして、俺はフィアの家で暮らすことになった。