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海へ流れた放射能が引き起こす “生物濃縮”

 

 福島第一原発は震災から三週間経った今でも、放射能のだだ漏れが続いている。原子炉本体を納める圧力容器に穴があき、そこから高濃度の放射性物質を含んだ水が漏れた。しかも、その水が海へ流出してしまった。三月三十日には基準値の四三八五倍のヨウ素131が検出された。

 ヨウ素131(半減期八日)、セシウム134(半減期二年)、セシウム137(半減期三〇年)のほかにも、猛毒中の猛毒とされるプルトニウムも付近の海を汚染している可能性が高い。プルトニウムの半減期は二万四〇〇〇年だ。今、福島第一原発から漏れたプルトニウムは、約千世代以上に渡って環境を汚染し続ける。もっとも、もし人類がそれまで続いたとしての話だが。

 チェルノブイリ原発事故によって、チェルノブイリの美しい森は放射能汚染によって松が枯死してしまい、「赤い森」と呼ばれるようになったが、福島第一原発付近の海が「赤い海」とならないことを祈るばかりだ。

 さて、放射能は付近の海を汚染するばかりではない。当然、海流に乗って遠くへ流れ、世界中の海を汚染することになる。かつて、ロシアは海に放射性物質を投棄し、国際社会から強い批難を浴びた。同じように、世界の国々は日本へ向ける視線を厳しくしつつある。日本政府や御用学者がいくら口先だけで安全だと言っても、誰も信用しない。

 バランスを取るために付言しておくと、かつて海で原爆や水爆を爆発させて核実験を行なっていた時代があった。太平洋戦争敗戦の翌年の一九四六年七月には、太平洋マーシャル諸島のビキニ環礁で核実験が実施され、旧帝国海軍の戦艦長門と軽巡洋艦酒匂がその実験台になった。初めに行なわれた空中爆発実験の結果、酒匂は沈没。長門は空中爆発実験では損害軽微だったものの、二度目に行なわれた水中爆発実験の後、船体に亀裂が入って沈没した。海底に沈んだ戦艦長門は、格好のダイビングスポットになっているそうだ。

 一九五四年には、同じくビキニ環礁で行なわれた核実験の結果、付近で操業中だったマグロ漁船の第五福竜丸が被爆した。この実験による被爆者は二万人にのぼるとも言われている。

 世界の海を放射能で汚染しているのはなにも日本だけではないが、もちろん、だからといって汚染していいというものでは決してない。

 やっかいなのは、海で放射能の生物濃縮が起きてしまうことだ。

 高校で生物の授業を選択していた人は「食物連鎖」を習ったことがあるだろう。

 ごく簡単に言えばこういうことだ。

 小さな動物や植物を、中くらいの大きさの動物が食べ、大型動物がその中くらいの動物を食べる。そして、最終的には、人間がその大型動物を食べる。なんてことはない。小さな生物はより大きな生物に食べられてしまうというただそれだけのことだ。

 問題なのは、この食物連鎖の過程において、より大型の生物の体内に毒物が濃縮されることだ。この問題は、陸でも起きることだが、海が放射能で汚染された場合は次のようになる。

 被爆した小さなプランクトンを小魚が食べ、小魚の体内被曝量が上がる。その小魚を中型の魚が食べて、今度は中型の魚の体内に放射性物質が蓄積される。そして、今度は大型の魚が中型の魚を食べるので、大型の魚の体内に大量の放射性物質が取りこまれる。当然、大型の魚になればなるほど食べる量が多いので、体内に蓄積する放射性物資の量も多くなる。

 実は、放射性物質とはまた別の物質だが、毒物の生物濃縮はもうすでに起きている。海の食物連鎖の頂点に立つイルカやクジラの体内には、水銀やPCB(ポリ塩化ビフェニル)といった化学物質が蓄積されている。PCBは今ではあまりなじみがない物質かもしれないが、非常に毒性の強い物質だ。かつては変圧器やコンデンサといった電気機器の絶縁用油などとして幅広く用いられていた。これらの毒物が体内に大量に蓄積された結果、イルカやクジラの畸形の増加や生殖能力の低下が指摘されている。

 海に放射性物質がばらまかれれば、必ずこの生物濃縮の問題が起きる。最終的に体内に放射性物質を蓄積した魚類を食べるのは、いうまでもなく人間だ。海に流れ出た放射性物質はブーメランのように人間へ跳ね返り、長年にわたって人体を汚染してしまう。苦しむことになるのは、ごく真面目に暮らす人々だ。

 

 



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