福島第一・第二原発の事故について
日本でスリーマイル島事故以上の原発事故が起きた。同時多発メルトダウンだ。
福島第一・第二原発で発生した事故に関して、日本政府とその広報部であるNHKは情報統制を敷いた。民間の大手マスコミも事実を報道しない。
今回の原発事故報道はあきらかにおかしい。
「まずはひと安心」というニュース解説が流れた後、悪い情報が飛び込んでくる。その繰り返しだ。まったく信用できない。「大本営発表」が繰り返される間に、事態は刻一刻と悪化した。
さいわいというべきか、元原発格納容器設計者だった後藤氏が実名を名乗り、カメラに顔をさらしてネット・ジャーナリストや外国人特派員の記者会見に臨んでくださったので、有用な情報を得ることができた。彼の勇気に敬意を表したい。彼が出演している原子力資料情報室の会見を見れば、大手マスコミが報道しない事実を知ることができる。
現在、原子炉を爆発させないために現場関係者が努力を重ねているところだが、問題は次の二点につきるようだ。
1.炉心を冷却できるか?
2.格納容器が持つか?
炉心は今でも燃料棒が露出した状態で非常に危険だ。
格納容器にはすでに設計基準の限度以上の圧力がかかっているため、いつ壊れてもおかしくないという。
格納容器に海水を入れているが、これは前例のない非常措置のため、うまくいくかどうかは未知数。予断を許さない。
官房の発表にはごまかしが多い。
官房は環境中へ放出する放射能は微量なのでたいした影響はないと発表しているがほんとうだろうか? 素直に信じることはできない。官房が発表した放射能線量のデータでさえ信用できるかどうかわからない。ジャーナリストの広河隆一氏が福島第一原発から約四キロメートル離れた双葉厚生病院や役場前で測定を行なったところ、一〇〇〇マイクロシーベルトまで測定可能なガイガーカウンターの針が振り切れたという。
設計者の後藤氏はベント(安全弁)を開くことを「究極の選択」と表現した。
つまり、原発から放射能が漏れることはあってはならない、ということだ。これが原則だ。もちろん、原発の町へ行けば、信じられないような話をいろんな聞くことができるけど、原則は原発から環境中へ放射能を出さないことなのだから、官房の説明は非常に無責任と言わざるを得ない。
そして、この安全弁を開いて蒸気を逃がす作業では間に合わなくなったため、格納容器へ海水を注入することにした。海水によって原子炉を冷やそうというものだ。
ただ、この手段は最後の措置だそうだ。
前例のない非常手段のため、うまくいくかどうかは誰にもわからない。
格納容器の高さは四〇メートルもあるので、なかをすべて海水で満たせば、格納容器の下のほうは約四気圧の圧力がかかることになる。格納容器の設計そのものは四・三気圧まで耐えられるようになっているが、最大で八気圧まで上昇したものに海水を加える――つまり、最大で八気圧+四気圧になるため、どこまで持つかはわからない。持ってくれることを祈るばかりだが、格納容器に亀裂が生じる可能性は十分に考えられる。
また、気象庁はこの三日以内に七〇%の可能性でM7クラスの地震が起きると予想している。もしそうなれば、電源が落ちたりと現場が混乱してどうなるかわからない。このほかにも、水素爆発や水蒸気爆発などのさまざまな危険が考えられる。
これだけの事態が進行していながらも、日本政府はまだ虚偽の発表を続けている。虚偽というのが言い過ぎなら、都合のいい事実だけを語り、真実を語ろうとはしない。多くの人々の命がかかっているというのに、非常に不誠実だ。
官房や電力会社は「すべて公表すればパニックが起きる」というかもしれないが、それは責任逃れの口実にすぎない。
このような非常事態の場合、情報を公開し、最悪の事態を想定したうえで対策を打つべきだ。人々も、正確な情報や警告がないのではどう行動すればよいのかわからない。デマも広がりやすい。いちばんやっかいなデマは今回の原発事故はたいしたことはないので騒ぎすぎるのはいけないだとか、放出される放射能などたいしたことはないというものだ。それを真に受けた人々が被爆してから後悔しても、とりかえしがつかない。
原発で作業を行なっている作業員や自衛隊の隊員は、文字通り必死だ。気の毒なことに彼らは放射能まみれになった。犠牲者が多数出るのは間違いない。彼らは身を挺して原発の爆発を防ごうとしている。命をかけた努力をむだにしないためにも、政府は情報をきちんと公開すべきだと思う。
福島第一原発の一号炉から四号炉までは隣接して並んでいる。そのうちの一つが爆発すれば、ほかの原子炉も吹き飛びかねない。もうそうなれば、広範囲に渡って放射能汚染が発生する。どこまで広がるのかは誰にもわからない。
こんな事故は嘘だと誰かが証明してくれるといいのだけど。
最悪の事態にならないことを祈るばかりだ。
原子力資料情報室のホームページで記者会見を見ることができます。
http://cnic.jp/modules/news/
三月十二日の記者会見の模様はこちらでもごらんになれます。
http://iwakamiyasumi.com/archives/7597
今回の震災で亡くなられた方々に哀悼の意を表します。
まだ救助されていない方々が一刻も早く救助され、一日でも早く復興されることを願っています。
なにかと大変だとは思いますが、どうかお体にお気をつけてください。