飛行機のタイヤを交換しております
中国の北方の街から飛行機に乗った。
こちらの飛行機はよく遅れる。朝はだいたいまともに飛んでくれるのだけど、だんだん遅れが重なって、夕方の便に乗ろうとすると、一、二時間待ちは当たり前だったりする。ひどい時には四、五時間待ちになる。
昨日乗ったのは夜八時半の広州行きだった。
案内板には遅れの表示はない。
だけど、油断は禁物だ。クレームを避けるためだろうけど、こちらの飛行場では直前になるまで遅れは表示されない。遅れていても、表示しないこともしばしばだ。
案の定、予定時刻の八時を過ぎても搭乗開始になる気配がない。
「ねえ、まだ乗れないの?」
僕は搭乗口のカウンターに立っている航空会社の制服を着たお姉さんに訊いてみた。
「今、タイヤを交換しているから、ちょっと待ってね」
人の好さそうなお姉さんはにこやかに笑う。
「えっ? タイヤ?」
「そうなの。タイヤの調子がおかしいのよ」
「わかったよ……」
僕はそううなずくほかなかった。タイヤが壊れたままでは滑走できない。むりに飛ぼうとすればえらいことになる。離陸できたとしても飛行中に故障したのでは、着陸できない。強行着陸したら、エンジンが爆発してしまうかもしれない。
包み隠さず状況を教えてくれたのはいいんだけど、ちょっと怖かった。
おかげさまでぶじに帰ってきました。