アジア大会閉幕式をテレビで見ながら
夕方、仕事場から家へ帰る途中、突然、高速道路が渋滞した。
車はうんともすんとも動かない。道路が封鎖されたとしか思えない渋滞の仕方だった。
さいわい五分ほどですぐに車は流れ出したのだけど、前へ進むと案の定、アジア大会専用車のステッカーを貼った大型観光バスが十数台、数珠繋ぎになって走っていた。選手や関係者を乗せたバスをスムーズに高速道路へのせるために、一時閉鎖していたようだ。並走するバスのなかをのぞいてみたら、不思議なことに、ほんの少人数しか乗っていないのが多かった。選手の人数分バスを用意したのだけど、競技の終わった選手が閉幕式を待たずに帰国したためにあまってしまったのだろうか。バスの隊列は時速百キロですっかり暗くなった高速道路を飛ばす。その前後を公安のパトカーが護衛していた。
市の中心部へ戻った後、そのままレストランへ入った。壁に大画面のテレビがかけてあって、アジア大会閉幕式の番組を流している。まだ始まっていないので、放送スタジオにいるアナウンサーとアシスタントが興奮気味になにやら話している。地元のテレビ局の中継だったので、広東語での放送だった。なにを話しているのかはまったく聞き取れない。
八時ちょうど、オリンピックなみの凝りに凝ったショーが始まった。次々と花火があがる。街中で打ち上げ花火をあげるため、開幕式の時と同じように会場一帯が封鎖された。ただ開幕式の時とは違い、通行許可証があれば、地域住民は封鎖エリアへ入って自宅へ戻ることができる。
次は、歌舞ショーだ。踊り子がわんさかいるので、まるでマスゲームを観ているみたいだ。ショーはプログラムを替えながら延々と続く。そろそろ終わりかなと思っても、また違うショーがはじまる。中国風のショーばかりでなく、インド風、日本風といった各参加国のものもあった。中国人は派手で大きなことを好むから、こんな大掛かりなものをやりたがるのだろう。レストランの手の開いたウェイターたちはずっとテレビを観ているので、呼んでもなかなか気づいてくれなかったりする。ショーは約五十分ほど続いて終わり、ようやく閉幕式の宣言が始まった。中国人は喜んでいるのかもしれないけど、僕には自己陶酔としか思えないショーだった。
一緒に食事をしていた日本人に、
「もし日本でアジア大会を開いたとして、こんなショーをやったらどうでしょうね?」
と訊いてみたら、
「税金の無駄遣いって批難されるでしょうね」
「そもそもこんな派手なショーをする予算が取れないでしょう」
と、冷静な答えがそれぞれ返ってきた。
おそらく、二人とも当たっている。
高度成長が続いているから、政府の資金は潤沢だ。いくらでも無駄遣いできる。だけど、繁栄はいつまでも続くものではない。
――今が中国のいちばんいい時期なんだろうな。
テレビ画面を観ながらふと思った。