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蚊と遊ぶ
中学生の頃、ときどき、蚊と遊んだ。
蚊が腕にとまり、僕の血を吸う。
僕はぐっと腕に力を入れる。
血を吸い終わった蚊は飛び立とうとするのだが、僕が筋肉を引き締めているものだから、蚊は僕の腕から口を引き抜くことができない。
蚊は脚をずりずりしてなんとかして口を引き抜こうとする。僕はいよいよ力を入れてそうさせないようにする。部活をやっていたから、中学生の頃は少しばかり筋肉がついていた。
「お前はもう死んでいる」
僕はそう言ってから、反対側の手でぴしゃりと蚊を打つ。
蚊はつぶれ、蚊が吸った僕の血が腕に広がる。
ティッシュで蚊と血を拭き取り、腕にキンカンを塗る。
ただそれだけの遊び。