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下半分だけのお月さま
今住んでいる広州市の北緯は約二十三度。だいたい北回帰線上にあたるので、夏至の頃は太陽が真上から照らすことになる。十二時くらいのちょうど南中した頃に外へ出てみると、自分の影は足元に申し訳程度にあるだけでほとんどなかった。歩いているうちにだんだん影が伸びてきたけど、それでもかなり短い。上から押さえつけて圧縮したようだ。なんだか自分が小人になったような気分だった。
ここから眺める月は、日本とは違った形をしている。
下からだんだん欠けて半月の頃には、上半分だけのお月さまになる。新月を越えると、今度は中身を全部食べてしまった西瓜の切れ端のような下弦の月が現れて、次の半月の頃には下半分だけのお月さまになる。当然といえば当然のことなのだけど、そんな月を初めて見た時は不思議な気分だった。
ところで、仏教では月の光は真理を表すそうだ。やわらかい月光こそがこの宇宙の真理なのだとか。
日本で見える真理の形と広東で見える真理の形が違っているだなんて、まさかそんなことはないだろうけど。