徹底した警戒態勢というか ~広州アジア大会開幕の裏側~
今日(二〇一〇年十一月十二日)、広州アジア大会が開幕する。
たぶん、日本のテレビには競技会場の模様しか流れないだろうけど、市内は物々しい警戒態勢だ。会場付近では隊列を組んだ武装警察がしょっちゅう巡回している。
今晩、開幕式会場のあたり一帯は封鎖され、車、バス、タクシーが進入禁止になる。おまけに、会場付近の地下を走る地下鉄までも運休になる。わけのわからない措置だけど、地下で事故かテロがあっては困るということだろうか。そうとしか理解のしようがない。
さらに、会場付近の住人は、今晩自分の家を追い出され、自宅にいることができない。政府から一戸当たり三〇〇元が支給されるので、自分でホテルの部屋を取るのだとか。この話を聞いたときはさすがにびっくりしてしまった。日本でなら絶対に通らない措置だけど、独裁国家の中国ではまかり通ってしまう。でも、自分でホテルの部屋を探せといわれても、たぶん会場付近のホテルはみんな埋まっているだろう。追い出された人たちは親戚の家にでも泊まりにいくのだろうか。自宅のマンションの部屋から開幕式の様子を眺めようと楽しみにしていた人たちにはなんとも気の毒な措置だ。
今年三月のことだったけど、アジア大会のからみで、僕は広州郊外に間借りしていた安い部屋を追い出されてしまった。
公安がやってきて、「アジア大会があるので、外国人はこんな治安の悪い部屋に住んではいけない。なにかあると面倒だし、こっちが困るから出て行ってほしい」と言う。もちろん、表立ってそんなことは言わないけど、にこやかなつくり笑顔で話す言葉を意訳するとそういうことになる。
出稼ぎ労働者が集まっている場所だったので、物価は安いけど、たしかに治安は悪かった。泥棒にやられたこともある。とはいえ、会場付近でもなんでもないのに住んでいる部屋を出て行けとはあんまりだ。僕がブラックリストに載っているとも思えないのだけど、とにかく、不安要素はすべて取り除こうということらしい。結局、部屋が見つかるまでの二日間、ホテル暮らしを余儀なくされてしまった。なんでもない外国人までも排除しようとするほど、広州の治安当局は神経を尖らせている。
日本の選手団にはがんばってもらたいけど、こういった裏側を見てしまうと、アジア大会開催を素直に喜ぶ気にもなれない。
僕にとってアジア大会は、独裁政府がその気になれば市民の日常生活を犠牲にしてなんでもできるという権力の暴力性を学習するいい機会だった。