地下鉄に乗って
今日、仕事の帰り道に広州の地下鉄に乗った。
座席に腰かけて本を読んでいたら、隣に坐っていた地元の女学生に話しかけれた。十七、八歳といったところだろうか。広州人は幼く見えるので、もしかしたら二十歳くらいかもしれないけど。
「日本人なの?(你是日本人吗?)」
彼女は僕の顔を覗きこむようにして言う。
「そうだよ(是啊)」
「わたしの言ってることがわかる(你听的懂我说的话吗)?」
「もちろん(当然)」
「あなたの本を見て、日本の人だと思ったのよ(我看你的书,我觉得你应该是日本的)」
彼女は目を輝かせた。動物園でパンダ見た時のような目だ。好奇心を隠さないのは中国人のいいところだと思う。
中国では、いきなり他人に話しかけるのはごく当たり前のことなので、もう慣れている。それが楽しみだったりもする。あれこれとひとしきり世間話をした。なんでも彼女は、来月開催されるアジア競技大会のボランティアをするそうだ。今から待ち遠しいらしい。
彼女と別れてから再び本を読み始めたのだけど、はたと困った。
僕は今、無謀にも『資本論』に挑戦している。とても難解だ。同じところを何度繰り返し読んでも意味を掴めない。なるほどすごいことが書いてあるような感じはするのだけど、それにしてもむずかしすぎる。マルクスは頭がいいのか、気が狂っているのか、よくわからない。さっき、ようやく今読んでいる箇所の糸口の糸口らしきものがつかめそうになったかなと思ったところだったのに、なにを考えながら読んでいたのか、すっかり忘れてしまった。マルクスの文章は、意味不明な活字の羅列へ逆戻りした。
いや、人のせいにしてはいけない。
もともとまったく理解していないのだ。
むりやり背伸びして難しい本を読んでいる僕がいけない。
時間のかかることははじめからわかっているのだから、『資本論』はぼちぼち読めばいい。
ともあれ、地元の人と話せて楽しい帰り道だった。
せっかく中国に住んでいるのだから、地元の人と話すほうがよっぽど大事なことだ。
というわけで、いきなり他人から話しかけられても平気な野鶴はみなさまの感想を大歓迎しておりますw