銀座より高い家賃in広州
広州へ出張で行った時、ある日本料理店で女将さんと話しをした。以前、広州に住んでいた頃は行きつけの店だった。日本料理店といっても、日本人客より中国人客のほうがずっと多い。
2016年あたりから客の入りがぐっと悪くなったそうだ。以前は中国人客が高価な刺身盛り合わせなどをばんばん注文していた姿をよく見かけたものだったけど、そういった羽振りのよい中国人客はもうほとんどいない。ランチタイムも客入りが減った。隣には韓国料理店があって、以前はけっこう人が入っていたのだけど、そこも客はがた減りだ。他の日本料理店も客がかなり減ったという。
こういった話を聞くとやはり中国の一番景気のいい時期は終わったんだなと思う。中国人は日本で爆買いしなくなったけど、中国国内でも財布の紐を締めているのだ。
ただし、景気が悪くなったとはいえ、広州の不動産価格はまだ上がり続けている。それだものだから家賃は上がる。しかもその上がり方はかなり激しい。
「ここの家賃なんて東京の銀座より高いのよ。信じられないわ」と女将さんは嘆く。
「ええ~、そうなんですか」
僕はびっくりしてしまった。広州市内とはいっても中心部の一等地にあるわけではない。その店はどちらかといえばすこし外れのほうにある。客足は減るわ、家賃は異常に上がるわで、商売あがったりになってしまった。女将さんは、自分の子供はもう社会人になったから、あとは夫婦二人で暮らしていけるだけ稼げたらそれでいいのだけどそれももう難しそうだという。
全体的な景気が悪いのに不動産価格だけ上昇するというのはバブル最末期の現象なのだけど、それがこのところずっと続いている。不動産価格がいつ暴落してもおかしくないという人もいれば、暴落したら大変なことになるから国がそんなことをさせないという人もいる。北京、上海、広州、深圳といった一級都市の不動産価格だけはぜったいに暴落しないという人もいる。
ただ一つ言えるのは、景気が悪いのに家賃だけ上がり続ければ、この店のように商売を続けること自体が難しくなってしまうということだ。それはレストランでも、事務所を借りてやる商売でもなんでも同じだ。家賃負担が経済活動の重い足枷になる。
中国経済の規模は十年以内にアメリカ経済を抜いて世界第一位の規模になるだろうなどという予測があるけど、こんな不動産バブルに頼るようないびつな発展をしていて、ほんとうにそうなるのだろうかと首をかしげてしまう。




