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メーカー勤務はもうごめんなのです


「最近、新人の面接をしたんだけどさ」

 と広州在住の日本人の知人からこんな話を聞いた。彼は広州の日系企業に勤務している。

 スタッフの新規採用を行なったところ、広州でアメリカ系の工場に勤めていた中国人が面接にやってきた。学校を卒業してから十年ほど三つのメーカーで仕事をしてきた人だった。製造業関連の資格をいくつか持っており、面接での受け答えもしっかりしていた。応募者の持っているスキルや経験は、ちょうど知人の会社で必要としているものだった。ただ、知人の会社はサービス業であってメーカーではない。メーカー相手の商売をしているので、メーカーのことをよく知っている人が欲しかったのだ。知人はこの点が気にかかり、

「うちはサービス業だけど、どうしてうちに応募したのかな。メーカーのほうがそのままあなたの経験を活かして仕事ができるでしょう。うちにくれば、業が変わるから、いろいろ勉強しなくちゃいけないし、一からの挑戦になるよ」

 と問いかけた。

「メーカーはもうごめんです」

 応募者はあわてて手を振る。

「この間まで勤めていたところは、広州の工場をたたんで、インドへ移ってしまいました。もしまたメーカーに勤めれば、いずれその会社も工場をたたんでどこかへ行ってしまうでしょう。家族を養わないといけないのに、会社が解散してしまってはたまりません。まさかインドへついていくわけにもいきませんしね。会社がなくなって、仕事探しにあたふたさせられるなんて二度とごめんです。メーカーには勤めたくないのです」

 工場閉鎖にまつわる内紛やその処理もあって、彼はもう辟易してしまったそうだ。

 たしかに、人件費が安いとはいえない広東省からいろんな工場が逃げ出している。ある工場は中国のなかでも人件費の安い内陸部へ移り、またある工場は東南アジアやほかの国へ移った。応募者の元の勤め先は軽工業に属するメーカーだった。広東省で経営を続けるのはもう困難だろう。

 深圳シンセン、東莞、広州、佛山と一大工業地帯をかかえる広東省が世界の工場であることには変わりない。だが、その衰退は着実に進んでいる。


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