表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
346/519

駝鳥


 駝鳥を観ていると不思議な心持ちになる。

 空を飛ぶはずだったのが、いつの間にか、走ることのほうが得意になってしまった。

「やりたい仕事」と「できる仕事」は違う。もちろん、「やりたい仕事」が「できる仕事」である人は幸福だろうけど、「やりたい仕事」に就いた人よりも、「やりたい仕事」をあきらめて今の仕事に就いた人やなんとなくその仕事に就いた人のほうが多いだろう。

「できる仕事」と「やらなければならない仕事」もまた違う。

 仕事をしていれば、「できる仕事」以外の注文が次から次へと舞い込んでくる。とはいえ、仕事というものは、基本的にオーダーがあって初めてこなすことができるものだから、えり好みしてやらないわけにもいかない。拒否すれば、仕事そのものがなくなってしまう。困ったなと思いながらも、つまらない我欲は捨てて片づけるしかない。

 もちろん、「やりたい仕事」をしていないからといって、それが不幸だというわけでもない。どんな仕事でもできるようになってくれば、その仕事の面白味がわかってくる。どんな仕事にも興味深いところはあるものだ。「できる仕事」が「やりたい仕事」というふうに変わっていく人も、なかにはいるかもしれない。

「やらなければならない仕事」から学ぶことも多い。いろんなことをこなしておけば、自分のなかに「引き出し」が多くなり、それだけ幅が広がる。苦手だと思いながらいやいやこなした仕事の経験がひょんなところで活きてきたりもする。

 とはいえ、なんだかなあ、こんなはずだったのかなあという気分はぬぐえない。

 中国大陸でただサバイバルをするためだけに目の前のことをせっせとこなしているうちに、駝鳥みたく飛ぶことよりも走ることのほうが上手になってしまった。そんな自分がリアルな姿であることには変わりないけど、そのリアルな自分が夢のなかの人物のような、自分の人生そのものが夢のなかでぷかぷか漂っているような、不思議な気がしないでもない。駝鳥が不仕合せだというわけではないし、いろんな人に助けてもらって、運よくここまで生き延びてきたわけなのだけれど。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=280517787&size=135
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ