亜熱帯に降る雪
会社の新年会で広州へきた。
一月二十四日は日本でも記録的な寒さになったようだけど、亜熱帯の広東省広州でも七十年振りという寒さになった。
朝、新年会の会場へ行こうとしてホテルを出るとこまかい霰が降っている。気温は一度。小さな氷のかけらが迎えの車のフロントガラスに当たっては弾ける。広東人の運転手は「ほらほら、氷が踊ってるよ」とはしゃぐ。彼はみぞれは見たことがあるけど、霰は初めてだという。
新年会は昼前から始まり、いつものことだけど、乾杯攻撃が始まった。酔っ払ってやばくなり、外の空気を吸おうと思って表へ出ると人だかりができていた。
「雪だ」
人々と口々に言い、スマホで写真を撮る。
ぼた雪がうっすらと舞う。地面に落ちてはすぐに溶けてしまう。人々は亜熱帯に降る雪を珍しそうに眺めていた。僕も、まさか一年のうち半分が夏の広州で雪が降るとは思わなかった。ウィチャット(中国のLINE)を見ると、広州でも場所によってはうっすらと積もったところもあったようだ。もちろん、すぐに溶けてしまったけれど。
新年会が終わって会場を出ると、もう雪は降り止んでいた。アスファルトはただ濡れているだけ。帰り道、使い捨てカイロを買おうと思ってドラッグストアへ入ったら、売り切れてもうなかった。