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さらば広東

 

 六年間暮らした広州を去ることになった。

 この街へ来た時はこの先どうなるのだろうと心細かったけど、お陰さまでなんとか暮らすことができた。

 いろんなことがありすぎて、ジェットコースターに乗ったような六年間だった。仕事もプライベートも目まぐるしく状況が変わった。中国は、ひと頃のような高度経済成長ではなくなったけど、それでもまだまだ発展している。そのぶん、いろんなことがくるくると変わってゆく。

 広州では、中国で初めて仕事をした。仕事をすれば、当然、利害関係のなかへどっぷり入っていくことになる。旅をして触れた中国とも、留学して触れた中国とは違った中国のなかへ入っていった。旅をするのは見て回るだけだし、留学は学生と交わるだけだから、それはそれで面白かったし、いろんなことが勉強になって、いろんな思い出もできたりしたのだけど、人間関係でのしんどさに関していえばなんてことはない。中国ではすべてが政治――つまり利権争い――になるとよくいわれるけど、なるほどこういうことなんだなと思わされたことがたびたびあった。なかなかしたたかな人たちだ。一筋縄ではいかぬ。

 日本人も中国人も、いろんな人に出会って、いろんな人と知り合いになった。このエッセイで何度も出会った人について書いてきたけど、ほんとうにおもしろかった。何度か酷い目にも遭ったりしたのだけど、曲がりなりにもやってこられたのは、いろんな人に助けてもらったからだ。感謝したい。

 ここで過ごしたことがいい経験になって、幼い僕もすこしは成長できたかなと思う。今は肩の重荷がとれたような、すこしほっとした気分。広東料理はおいしかった。

 次の街で新しい暮らしが待っている。

 さらば広東。



新しい街で落ち着いたら、続きを書きます。

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