完熟唐辛子ののったチョコレートケーキ
十月一日、今日は中国の国慶節。
現在の共産党王朝の建国記念日だ。
今日から一週間、中国は七連休になる。ちょうど行楽シーズンなので、旅行へ出かけたり、故郷へ帰ったりする人も多いようだ。
僕も休みに入ったので昼前までゆっくり寝て、洗濯機を回した。もう十月だけど、亜熱帯の広東省・広州はまだまだ暑い。ホットシャワーを浴びるとのぼせあがってしまうので、毎日水シャワーを浴びている。Tシャツを一日に二回取り替えたりすることが多いから、洗濯物もたまる。
街をぶらぶらした後、スタバへ入った。休日なので店の席はすべてうまっている。
レジでスタバカードを見せると、
「今日はコーヒー一杯買えば、もう一杯サービスしますよ」
と、店員の女の子は広東訛りの強い北京語でそう言った後、これまた広東訛りの強い英語でもう一度繰り返した。どうやら国慶節のサービスのようだ。ブレンドの一番小さいサイズを一つ頼んだ。
「三分待ってください」
彼女は、さっそく後ろのコーヒーマシンを操作する。
コーヒーができあがるのを待つ間、ショーケースを見た。マンゴーケーキやチョコレートケーキといった定番商品の横に新製品が並んでいた。唐辛子チョコレートケーキだ。
ごくありきたりなチョコレートケーキのうえに、完熟したつややかな唐辛子が一つ、ちょこんとのっている。
見た目はとてもきれいだ。チョコレート色と赤のコントラストがあざやか。唐辛子の大きさはまちまちで、短いのもあれば長いのもある。粒をそろえないのはご愛嬌といったところだろう。
チョコレートと唐辛子のコラボレーション。
どんな味なのか興味はあるけど、ちょっとこわい。
チョコレートと唐辛子の味が口のなかでぶつかりあうところを想像した。
辛くてひりひりする。焼けるような舌にチョコがおおいかぶさる。唐辛子の辛さのぶんだけ、チョコの甘さがよけいにひきたつ。胃の腑がぽっと温かくなり、額と頬に汗がにじむ。ざっとこんなところなのだろうか。
「コーヒーできましたよ」
店員が僕へ声をかけてくれた。