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テロという名の神経戦 ~昆明駅無差別大量殺傷事件のあと~


 中国雲南省の昆明駅で発生した無差別大量殺傷事件以来、中国には不安と混乱が広がっている。

 中国政府はウイグル過激派の犯行としているが、中国当局がたいした情報を出さないため、この事件はまだ謎が多い。

 八名のウイグル人が三十人以上を殺し、一四〇人以上を負傷させたということだが、刃物だけで、しかも二十五分ほどの短時間で、これだけの人数を殺傷できるものだろうか。これだとそれぞれの犯人が約二十人を殺傷し、一人当たり約五十秒に一人の割合で斬りつけている計算になる。不思議だ。米国の九・一一のように政府による自作自演という可能性もないわけではない。

 真相はともあれ、中国のどこそこでウイグル人が何人殺したというニュースや噂を頻繁に聞くようになった。僕が住んでいる広州でも、ウイグル人がある店で四五人殺したという話が伝わってきた。


 ただ、仮にあの事件がほんとうにウイグル過激派の犯行だとしても、彼らを一方的に責めるわけにもいかない。中国政府はウイグル族の土地であった新疆を征服し、漢民族を大量に移住させて漢化を図り、しかもウイグルへの弾圧を強めている。テロはウイグルの征服・漢化政策に対する反作用として出てきた。中国政府にとってみればテロであっても、ウイグル族からすればレジスタンスだ。中国が力で抑え込もうとすればするほど、それに反発する力は強くなる。そもそもレジスタンスを生み出したのは中国政府ということになるだろう。

 漢族とイスラム教徒の対立は歴史的なもので根深いものがある。中国では歴史上、しばしばイスラム教徒の大弾圧が起きた。中華文明とイスラム文明は相容れない。漢族とイスラム教を信仰するウイグル族や回族はお互いに嫌いあっている。広州で漢族の友人や知人とウイグル族の話をすると、漢族は決まってウイグル族の悪口を言う。広州で暮す漢族にはウイグル族イコール殺人や強盗を働く悪い奴というイメージが定着している。出稼ぎ労働者が出稼ぎ先で悪事を働くのはよくあることなので、ウイグル族のなかにもそんなけしからぬ人がいるのだろうが、殺人や強盗を働くのであれば、他省からきた漢族の出稼ぎ労働者も同じだ。


 あの事件以来、どこの長距離列車ターミナルも空港の警備は厳重になった。広州の街角にも警戒中の警官の姿が増えた。

 成都では不安心理からパニックまでが起きた。成都で一番の繁華街である春熙路で誰かが「何者かが人々を斬りつけている」とのデマを流し、何百人もの人々が避難する事態となった。不安に火をつけられてしまい、群集心理がそれに拍車をかけてパニックになったのだ。昆明駅の事件は政府ではなく人民を相手にした無差別テロだから、べつに昆明駅でなくとも、いつどこで起きても不思議ではない。人民が不安に陥るのも当然だ。

 犯人が誰であれ、人々を不安に陥れるという点ではあの事件は成功したといえる。無差別テロが起きるとこうなるのだなと肌身で感じる今日この頃だ。テロやレジスタンスをやるのなら、人民に向けてではなく政府相手にやってほしいと思うのだが。


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