新札の季節
春節(中国の旧正月)まであと二週間ちょっと。
僕が暮らしている広州も徐々に春節ムードが高まってきた。スーパーへ行けば春節の飾り物コーナーができている。職場やレストランでは中国人たちが帰省列車のチケットが取れたかどうかをお互いに声高に喋っていたりする。友人の中国人は顔を合わせるたびに「あと何日で春節だね」と挨拶の代わりに口にする。
汽車のチケットはインターネットで発売するのだけど、発売開始からほんの数秒で売り切れてしまうのだそうだ。それで、キャンセルされたチケットを狙って何度も繰り返しトライして、ようやく切符を入手した人もいれば、あきらめて飛行機で帰ることにした人もいる。
街角には物乞いが増えた。
彼らも春節を過ごすお金が必要だ。
普段なら物乞いが出没しないところにも現れ、叩頭して慈悲を乞うたり、二胡を弾いて歌を歌ったり、はたまた、「金よこせ」とでも言いた気な怖い顔で通りすがりの人たちを睨んだりしている。
春節前のこの時期は新札もどっと増えるようだ。
先日、銀行のATMでお金を下ろしたら、手の切れそうな新札が出てきた。ATMから出てくる新札を手にするたびに、僕はいつも「ああ、もうすぐ春節なんだな」と思ってしまう。もう一年巡ってしまったんだなと。
異邦人の僕は、そんなことくらいでしか春節の到来を身近に感じることができないのだけど。