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人間、色を忘れてはいけない


 広州在住十三年の日本人のおじいちゃんがいる。

 いつも肌がつやつやしているし快活で元気そうなので、五十代後半くらいかと思ったら、なんと七十歳だという。広州の日系企業で総経理(社長)をされているようだ。

 日曜日になると朝五時半に起きてゴルフへ出かけ、ゴルフが終わってからマッサージで疲れをほぐし、ゴルフ仲間と御飯を食べて、それから日式カラオケ(女の子がついてお酌してくれるカラオケ)へ行く。おじいちゃんよりはるかに年下のほかの仲間は夜十一時を回るとくたくたになって帰ろうとするのだけど(朝っぱらからゴルフをしているから当然だ)、おじいちゃんは、

「えっ? もう帰るの? まだ早いよ」

 と言って疲れも見せずに歌を歌い、女の子とはしゃぎながら戯れる。それで、夜中の一時になってようやく帰るのだとか。

 時々、行きつけの居酒屋でいっしょになるのだけど、僕が仕事でくたくたになっていると、

「野鶴ちゃん、会社人間になっちゃだめだよ。若いんだから遊ばなくっちゃ。今度いっしょにカラオケへ行こうよ。カッカッカ」

 と朗らかに笑う。僕は彼の息子くらいの歳だけど、おじいちゃんのほうが僕よりよっぽど元気だ。

「どうしてそんなに元気なのですか?」

 僕がそう訊くとおじいちゃんは真顔になって、

「人間、色を忘れてはいけない」

 と言う。

「いつもエロいことを頭のなかにインプットしておくんだ。そうすると心が活性化されて元気になるんだよ」

「うーん、僕はエロいことなんてずいぶんご無沙汰ですよ」

「それだから元気がないんだよ。仕事は忘れて遊びに行きなさい。女の子と遊んだら元気になるから。カッカッカ」

 おじいちゃんは人間はいつか動かなくなるのだから、動けるうちに思いっきり動いて遊んでおいたほうがいいと言う。人生は楽しんだほうがいいよな、とおじいちゃんと話をするたびにそう思う。

 


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