コスト削減要求に苦しむ広州の日系企業
中国へ進出すれば大儲けできるという時代はとっくに終わった。
もちろん、日本に比べればビジネスチャンスはまだまだ多いのだけど、広州の日系企業はどこもコスト削減要求に苦しんでいる。
中国では土地代、人件費、燃料代、材料代と諸物価が上がり続けている。しかし、自動車関連産業ではトヨタ、ホンダといったアセットメーカーからの厳しいコスト削減要求があるために値上げすることができない。どこにも真似のできないその会社だけの独自技術を持っている場合はまた違うかもしれないが、一般的に言って、下手に値上げ交渉を開始しようものなら、むしろ値下げを求められてしまう。やぶ蛇だから怖くて切り出せない。自動車部品メーカーはどこも利益を削ってコスト削減要求に応えている。このままではあと数年で利益が完全になくなって赤字経営に転落してしまうという声もちらほら聞こえる。
アセットメーカーは「もっと体質を改善して筋肉質になってほしい」などと都合のよいことをいう。たしかに、中国の日系企業は生産効率がそれほど高くない。中国人はよくいえばおおらか、悪く言えば大雑把で、日系企業流のきめの細かい品質管理には向いていないから、どうしてもロスが多くなってしまう。それに、広州の日系メーカーは設立してからそれほど年月が経っていないから、ベテランの熟練技術者が大勢いる日本とは違い、まだまだひよっこといったところだ。改善すべき点は山ほどある。
ただ、だからといって性急なコスト削減へ走ると企業の屋台骨を削ることになる。その一例が人件費だ。人件費を過度に抑制すれば人がいつかなくなり、いつまで経っても全体のレベルがあがらなくなる。仕事を覚えたところでその人がやめて、新人を雇ってまた一から教えなおし、ということの繰り返しになる。マニュアルを整備して新人でもすぐに仕事ができるような体制を整えたところで、マニュアルで指導できるのは初歩的なことだけだから限度がある。人件費が上昇しているぶんだけ、複雑なことができるようにならなければいけないのだが、基礎の習得で精一杯になって、そのマニュアルを応用できるまでにはいたらない。人件費の上昇に見合ったぶんだけの効率を上げることがなかなかむずかしい。もちろん、効率を上げられないのは、人件費の問題だけではないのだが。
常識的に考えればこんなことはいつまでも続けられないだろうなと思うのだが、やはり日本と同じようにコスト削減要求がやむことはないのだろう。この先、同じ日系企業でも厳しい要求を満たしつつ成長する会社とプレッシャーに押し潰されて脱落する会社がはっきりわかれてくるのだろうなという気がする。その会社できちんとした人が育っているかどうかが、分かれ目になるのだろう。