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冷汗三斗

 えらいこっちゃ。

 中国が例の島の上空を「防空識別圏」に設定したことで、日中の挑発合戦がまたエスカレートしてしまった。

 日本では中国嫌いな人がずいぶん増えたようだし、そんな人にとってみれば、日本の自衛隊とアメリカ空軍が中国の「防空識別圏」を無視して、事前通告なしにそこへ軍用機を飛ばしたりして中国のひとりよがりな「防空識別圏」を無効にしようとしているのは「いい気味だ」といったところなのだろうけど、中国に住んでいる僕にとってみれば、「勘弁してくれよ」とため息をつくばかりだ。「防空識別圏」のニュースを見るたびにはらはらしてしまう。

 もし日中の軍事衝突が起きれば、2012年に起きた反日暴動以上のことが中国で発生するのは目に見えている。そうなれば、中国を緊急脱出するよりしょうがなくなるかもしれない。怒り狂った中国人に捕まって殴り倒されるような目には遭いたくない。もし暴動がそこそこでおさまってくれたとしても、その後遺症に悩まされるだろう。2012年のあの悪夢がスケールアップして再現されるかもしれないと思うと、心臓が裏返しにひっくりかえってしまいそうだ。

 日本と中国のどっちが悪いのだといえば、どっちもどっちだとしか言いようがない。この問題は答えが出ないからそっと触れないでおこうと中国がさんざんシグナルを送ったのに、それを無視して挑発しつづけた日本も日本だし、人民の不満をそらそうとして愛国教育という名の反日教育を行ない続けて日本を仮想敵国に仕立てあげた中国も中国だ。この間売店に入ったら、テレビを観ていた中国人のおっちゃんが例の島をめぐるニュースを観ながら「どういうことだ!」とすこし怒った顔をしていた。こんなふうにすこしずつ反日感情が高まるのがいちばん怖い。たまったマグマはいつか爆発する。


 片方が力押ししようとすれば、もう片方は負けまいとして拳を振り上げる。

 東アジアで帝国主義的な緊張が急速に高まっていて、誰かがそれをさかんに煽っている。日本にも中国にも戦争をしたくてうずうずしている輩がいる。

 日本と中国は密接な経済関係を結んでいるから戦争は起きないという人がいるかもしれないが、僕は「経済関係が戦争を抑止する」という説をあまり信用していない。国家は経済だけで動いているわけではない。それに、むしろ、戦争によって大儲したり出世できる人たちが戦争を始めるものだと思うから。

 アメリカ、日本、ロシア、それにアセアンの一部の国々を中心にして「中国包囲網」ができあがってしまったようだ。アメリカにとってみれば、中国が帝国主義的な野心をむき出しにして覇権を拡大しようとするのは許しがたいことだろうし、中国周辺の国々にとっては死活問題だ。中国包囲網でお互いに手を結んで、中国に対峙しようとする流れはとめられないだろう。しばらくはこの流れにそって丁々発止とやりあうことになるのだろう。

 かつて中国は、資本主義の課題をおさらいするのだといって市場経済を導入した。レーニンによれば、帝国主義は資本主義の最終段階だそうである。だとすれば、中国は資本主義の課題克服の最終段階に入ったといったところだろうか。もっとも、アメリカはとっくの昔に戦争欲にとりつかれた帝国主義国になり果てているし、日本は日本で、昔ナチスがワイマール憲法を骨抜きにしたような感じで平和憲法を骨抜きにして帝国主義国の仲間入りをしつつあるところだけど。やれやれ。

 頼むから例の島の上空で実弾をぶっ放すなんて真似はやめてくれよ、と冷汗三斗を流す日々である。



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