転職して給料が一・五倍に ~アニメちゃん、その後
勤め先でアシスタントをしてくれていたアニメちゃんから中秋節の挨拶のショートメッセージが届いた。「野鶴様、お久しぶりです。中秋節、おめでとうございます(野鹤样,好久不见了,中秋节快乐!)」と殊勝に書いてある。
アニメちゃんは会社を辞めた後、一か月ほどで次ぎの仕事を見つけた。某大手日系自動車メーカーの事務所の内勤の仕事だ。なんと、アニメちゃんの毎月の給料は僕のアシスタントをしていた頃の一・五倍になり、年二回のボーナスは毎回五倍になるのだそうだ。
――こりゃ、慰留するのはほんとうにむりだったな。
と、この話を聞いた時、あらためてしみじみと実感した。
アニメちゃんのように日本語が上手で頭の回転のいい子なら、よそへいけばいくらでもいい待遇の仕事を見つけられる。一応というか、僕が今勤めている会社の日本の親会社も日本人なら誰でも知っている東証一部上場企業なのだけど、待遇が天と地ほど違うんだよな。業種が違うからしかたないといえばそうなのだけど、待遇があまりに違いすぎるといいスタッフは残ってくれない。
人材確保の問題はさておき、アニメちゃんはかわいがっていた子だからいいところに就職してよかったと思った。彼女ならしっかり仕事をこなすだろう。
「アニメちゃんは、いい仕事が見つかったのは野鶴さんに鍛えてもらったお陰だって感謝してましたよ」
と人づてに聞いたので、
「おう、それじゃ今度、俺にご馳走しろってアニメちゃんに言っとけ」
と冗談で言った。
中秋節の挨拶のショートメッセージを返したところ、
「野鶴さん、今度ご馳走します。いつ都合がいいですか」
とアニメちゃんから返事が返ってきた。
なんか嬉しいよな。
泣けてくるよ。




