中国のミスコンテスト
雲南省で留学していた頃、テレビでミスユニバースの地区予選を観たことがあった。雲南省各地の予選で選ばれた候補者が雲南省の省都・昆明に集まり、雲南代表を選出するというものだ。雲南省は二十六の民族が暮す少数民族地域なので、チベット族、タイ族、ワ族、苗族、イ族、ハニ族、ナシ族、白族、漢族などのいろんな民族のいろんな顔立ちをした美女が出場している。なかなか見ごたえがあった。
ただ、各地区代表のなかにひとりだけ、「?」と首を傾げたくなる候補者がいた。体型がずんぐりとしていて、水着を着たら贅肉がはみだしてしまいそうだ。顔立ちもミスコンの基準にはとうてい達しない。番組ではミスコンの候補者たちが練習に励む姿といった舞台裏も放送していたのだけど、溌剌としたほかの候補者に比べ、その彼女はなんだか肩身が狭そうだ。インタビューを受けてもまともにカメラを見ずに顔を隠してしまう。
いっしょにテレビを観ていた中国人の友人に、
「どうして彼女が選ばれたんだろう?」
と訊くと、
「コネに決まってるじゃない!」
と即座に返事が返ってきた。ミスコンの美女をコネで決めるだなんてありえない話だけど、中国の辞書に「不可能」の文字はない。中国ならありそうなことだ。
結局、その彼女は雲南大会の本番に出場しなかった。恥ずかしくなって辞退したのだろう。ステージにずらりとならんだ雲南美人のなかにその彼女の姿は見当たらなかった。雲南省代表にはいかにも少数民族美人といった風貌の女性が選ばれた。
ちなみに、中国ではいろんなミスコンが開催されているけど、毎年、なんとかミスコンのどこそこ地区代表はレベルが低すぎてどういう基準で選ばれたのかわからないといったことが話題になる。こんな国は世界広しといえども中国だけなんだろうな。
しばらくしてからミスユニバースの中国大会が始まった。中国各省で選ばれた候補者から世界大会に出場する中国代表を決定するというものだ。雲南省代表を応援しながらテレビを観ていたのだけど、残念ながら早い段階で落選してしまった。
最終候補三人が選ばれ、いよいよ中国代表を決める段になった。でも、三人とも美人なのだけど、なにかがちがう。
「ねえ、三人ともきれいだけど、中国美人って感じじゃないんだけどなあ。なんだかハリウッド映画に出てきそうな美女だよね」
僕が中国人の友人に言うと、
「伝統的な美人じゃないわよね。すごくきれいだなという感じはしないもの。たぶん、世界大会に出たときに欧米人に気に入ってもらえそうな女の子を選ぶようにしているのよ」
と友人からこんな答えが返ってきた。
なるほどね。
世界で戦える美女か。
こんなふうに審美眼もだんだんグローバル化されてしまうのかな。